ある公認会計士の世界情勢分析
【最近の中国の動きについて-2】

笹本 憲一

『一帯一路計画の頓挫』…… 一帯どうなってんの

 2013年に習近平が自らの最重要国家戦略として打ち出した一帯一路戦略は、AIIBという中国主導の国際金融機関の設立とセットで、意欲的に進められてきましたが、これまでの5年の経緯を振り返れば、参加国、周辺国に不安を与える以外の何物でもなかったようです。先進国からは中国版植民地政策と非難され、インフラ建設支援を受けているはずの途上国からは、悪徳金融のようだと恨まれ、中国国内の銀行や企業は経済的利益の見込みが立たない中での投資ノルマと債務不履行に不満が高まっています。

1.マレーシアプロジェクトの挫折

 マレーシアが「南シナ海とマラッカ海峡を結ぶ200億ドルの鉄道計画など一帯一路戦略に含まれる三つのプロジェクトの棚上げを表明」しました。
 愛国政治家マハティール氏が汚職政権のナジブ政権を破って首相に返り咲き、中国との約束を全て反故にしたということです。
 広東省の碧桂園社が手掛ける70万人の人工島都市建設計画「フォレストシティー」についても、ナジブ政権では中国投資家による物件購入をあてにしていて、事実上のチャイナタウン建設との位置づけがあがりました、マハティール氏は外国人(中国人)への土地建物の販売や転入禁止の措置を打ち出しました。



 当然人工島周辺には軍港や民間・空軍兼用の基地の建設等を考えていた訳ですから、マラッカ海峡に軍事的な睨みを利かすという中国の野望も同時に潰えたと言えます。


2.中国・パキスタン経済回廊プロジェクトの頓挫

 パキスタンではイムラン・カーン氏が8月に政権をとると、やはり一帯一路の中核プロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)について、その資金状況の透明性を高める、と約束しました。CPEC計画の推進に伴う中国の貿易赤字やローンがかさみ、債務危機に直面していることも大きく、中国への債務返済不能に陥れば、その借金のカタに中国による植民地化が進むのではないか、という危機感も関係しているようです。CPECの起点の一つとなるグワダル港は、マラッカ海峡の陸路バイパスとして中国のエネルギー輸送の要であり、中国のインド洋進出の軍事拠点としても地政学的要衝の地ですが、中国はすでに、この港の43年租借権を確保しています。グワダル港は元は辺鄙な寒村で住民達もパキスタン内での小数部族であり、常々パキスタン政府に対して開発の遅れ(というより放置)に不満が溜まっていたようです。ここでも中国は地元に雇用や経済的利益を与えようとはしていません。カーン政権は、IMFに支援を求めていますが、仮にIMFがパキスタンに支援を行えば、当然、CPECの中身も見直されることになります。中国が高金利で貸し出す資金で、中国企業によって中国産資材を使って中国人労働者を雇って行われたプロジェクトで、債務返済不能を理由に、出来上がったインフラの権利を奪う悪徳金融のような真似は許されないということです。


3.海外への投資プロジェクトがことごとく失敗

 一帯一路戦略によって債務危機に陥っている国は、マレーシアやパキスタン以外にも、ラオス、カンボジア、インドネシア、タイ、ベトナムなどの東南アジア、エチオピア、ジンバブエ、カメルーン、ガーナ、ジブチといったアフリカ諸国に広がっています。借金のカタに、建設されたばかりのインフラ利権をもぎ取られる側も悲惨ですが、建設途中で資金ショートし、現物回収もできない中国側の銀行や企業の状況もかなり深刻のようです。アジアではこの他、ミャンマーでのダム建設中止、インドネシアの高速鉄道事業の中断等、多数のプロジェクトが中止に追い込まれているのが現状です。その他、南米、特にベネズエラの経済崩壊で650億ドルの資源投資の回収が不能、ニカラグアの第二パナマ運河構想も頓挫、アフリカ各国への投資プロジェクトもことごとく頓挫しています。習近平の「一帯一路」構想は今後一帯どうなるのでしょう (笑) 。

(平成30年9月28日:笹本)