「イージス艦きりしま同乗記」
平成23年度呉地方隊展示訓練in大阪湾(23.9.25)

チャンネルNippon理事 山田道雄

10:25 神戸市新港第4突堤

 平成23年9月25日日曜日、神戸港は秋晴れの好天。早朝神奈川県の自宅を出て新幹線で移動、9時半過ぎ新神戸駅に着いた。三宮駅からはポートライナーに乗り「ポートターミナル」という駅で降りる。神戸港への陸上からの移動は初めてだ。この駅は高い所にあり、駅ビルの窓から思わず第4突堤に停泊している乗艦予定のイージス艦「きりしま」の姿が見えた。
 艦橋の周りの特徴のあるレーダーですぐ分かる。外側の護衛艦は「あめ」クラス、おそらく「いかづち」 であろう。飛行甲板には、最新の艦載哨戒ヘリSH-60 Kらしきものが見える。

 「きりしま」の後方には南極観測船の砕氷艦しらせ が停泊している。
 「しらせ」は先代「しらせ」の後継艦として2年前の平成9年5月に就役したばかりの2代目。因みに船名由来の探検家白瀬矗(しらせのぶ)中尉は海軍ではなく陸軍中尉である。11月の南極出航に備え巡航訓練の途中神戸に寄港したもので、今日の訓練には参加しない。

 受付を済ませ「きりしま」に乗艦すると、案内・接遇要員として乗艦中の顔見知りの総監部の監察官と総務課長に出会う。

11:45  神戸出港

 「きりしま」は655名の見学者を乗せ、ほぼ90度右回りにその場回頭をして「いかづち」に続いて神戸港を出港、展示海面に向かう。艦長の豊住1等海佐に挨拶をする。練習艦かしま以来約15年ぶりの再会。港外に出ても風は殆どなく海面は穏やかであり、艦は右に明石海峡大橋を見て淡路島東方海面へ。

 神戸港からは護衛艦「きりしま」「いかづち」の2隻、大阪港からは護衛艦「いせ」「とね」「せとゆき」の3隻、阪神基地隊 からは試験艦「あすか」多用途支援艦「げんかい」の2隻、淡路島からは輸送艦「ゆら」掃海管制艇「いえしま」掃海艇「まきしま」の3隻、和歌山からは護衛艦「はたかぜ」訓練支援艦「てんりゅう」の2隻が出港し、展示会面で合流して訓練を行う計画だ。

14:00 展示訓練開始

 短時間で昼食を済ませ展示訓練見学のため艦橋に上がる。士官室から6階建てビルの階段を上る感じで、エレベーターやエスカレーター慣れしている老体にはややこたえる。
 各方面から終結した艦艇部隊は、いつの間にか「いせ」、「きりしま」、「いかづち」、「せとゆき」「とね」「あすか」「げんかい」の部隊と「てんりゅう」、「いえしま」「まきしま」「ゆら」、潜水艦「くろしお」、「はたかぜ」、SAM(自走掃海具)、掃海管制艇「さくしま」の部隊でそれぞれ縦列を制形している。
 「いせ」は「ひゅうが」クラスの2番艦で、今年就役したばかりの海上自衛隊最大最新鋭の護衛艦。流石に大きく迫力があり、護衛艦というよりは「ヘリ空母」という方が適切であろう。輸送艦「おおすみ」を建造した時、ジェーン海軍年鑑に「海上自衛隊は遂に航空母艦建造の第1歩を踏み出した」趣旨のことを書かれたが、「ひゅうが」の時はどうだったのか気になる。

 この2つの部隊が反航してくる際の先頭艦の「いせ」と「てんりゅう」の発光信号の交換から展示訓練は開始された。そして両部隊がすれ違う際、てんりゅう部隊の各艦は「いせ」に対して自衛艦の敬礼を実施する。「いせ」には本日の指揮官、呉地方総監の泉三省海将が坐乗している。自衛艦の敬礼は乗艦している最高指揮官の序列に従い、下位の艦が上位の艦に対してラッパの合図で行う。「てんりゅう」以下各艦は「いせ」を左30度に見てすれ違う時自衛艦の敬礼を実施した。「てんりゅう」は訓練支援艦という珍しい艦種で、艦艇の対空射撃用の航空標的を運用する。プロペラ機又はジェット機の標的を艦上から発射し、無線管制により所定の飛行パターンを飛翔させ訓練射撃終了後これを揚収する。

 潜水艦は単艦「くろしお」 が参加していたが、信号員がセイルの横舵の上に立ってラッパの敬礼をしているのが見えた。

 続いて、てんりゅう部隊の「はたかぜ」 が5インチ砲の空砲を発射した。参加部隊唯一の5インチ砲艦である。いせ部隊の各艦正横に来た時発砲するが中々の迫力である。

 その次は掃海管制艇「さくしま」 によるSAMの航行展示。次の写真は航行中の遠隔操縦式掃海具SAM(自走式掃海具) で、後方を続航中の「さくしま」により遠隔操縦されているが、本日は万一の場合に備え人が乗艇している。「さくしま」は掃海隊群隷下の第101掃海隊(呉基地)に所属し呉地方隊の展示訓練ならこそ見られる大変貴重な航行場面。SAMはスウェーデンから導入された、主な任務として、掃海艇が入ることができない浅海面の掃海を担当する。掃海管制艇 からの無線操縦により速力8ノットで自走し、磁器掃海と音響掃海を同時に実施する。 (動画はこちら)

 続いて2つの部隊は1つの縦列を制形し、再び複縦列となる戦術運動が行われ2つの縦列の間を航空機が展示飛行を行った。天候が良かったため予定していた全航空機が飛来し、展示訓練に華を添えた。
 航空機は、小松島基地から哨戒ヘリ(SH-60J)3機、徳島基地から練習機(T-5及びTC-90)各3機、岩国基地から救難飛行艇(US-2)1機のほか、陸上自衛隊から対戦車ヘリ(AH-1S)2機、観測ヘリ(OH-1)1機が特別参加している。

 圧巻は3年前から運用体制に入った新型の救難飛行艇US-2の離着水場面である。2列縦隊の水上部隊の中央前方から飛来、右旋回して「てんりゅう」「まきしま」の間で着水、水上構想の後「いせ」「きりしま」の正横付近で離水した。(写真右上:残念ながら良く撮れなかった)
 展示飛行終了後水上部隊は列間距離を詰める等方位運動を行い、ヘリコプターのローパスで展示訓練を終了した。

15:09  解列

 訓練を終了した各艦は逐次列を解かれ、それぞれ出港した港に向かう。「きりしま」も往路よりはいくらか増速し、いわゆるHome Speedで神戸港へ。

17:00 神戸入港

 「きりしま」は予定より約30分早く神戸港に進入を開始した。観艦式もそうであるが、一般の見学者を乗艦させている場合、出港は予定通り入港は予定より早くなるのが普通である。便乗のお客さんは慣れない乗艦で疲れていることもあり、帰路を急ぐのは人の常・・・しかし、艦長以下乗員が一番神経を使うのは入港の時である。乗員の2倍以上の見学者で当然船は重くなり操艦時の惰力は違ってくるし、ロープ作業等で見学者に怪我をさせたり危険な思いをさせたりすることは絶対禁物である。入港進路がほぼ岸壁に直角で後方に「しらせ」が停泊中といういやらしい状況下、「きりしま」は慎重かつスマートに朝出港した岸壁に見事な横付けをした。艦長の操艦技量、統率力はもちろんであるが補佐する各幹部、特に曵船指揮の船務長と甲板作業指揮の砲雷長の指揮能力、コンビネーションが不可欠である。

 艦長は数隻の艦長経験者で落ち着いた操艦、指揮ぶりで安心感を与える。船務長、砲雷長は共に同期で2佐昇任、着任後間もないないようであるが中々のもの。15年前艦長は練習艦かしま航海長、2人の科長は当時の実習幹部だった。古人曰く、「男子三日会わざれば刮目して見るべし」と。

 30分後他の便乗者と共に日没前の「きりしま」を後にした。この日、爽やかな秋の1日と感じたのはおそらく筆者だけではないと思う。「ポートターミナル」駅から見た艦艇群はすでに停泊灯を燈し、静けさを取り戻していた。(了)

 写真については呉地方隊HP 及び呉地方総監部提供の「平成23年度呉地方隊展示訓練写真集」を参照