レンジャー 陸上自衛隊の遊撃部隊・隊員 (第2回)

山下輝男   

 

 行動訓練は、レンジャー教育の主体をなすものであり、各種状況における潜入・襲撃・伏撃・離脱等の任務遂行要領を体得させるとともに、レンジャーとして必要な強靱な体力及び不屈の気力を練成することを目的として行われる。

(コメント)
 行動訓練に際しては、教官・助教諸官の入念な事前準備が肝要である。厳しい行動訓練中に不測の事態が起きないとも限らない。そのような場合にあっても対応しうる準備が極めて重要である。

 

 基礎行動、応用行動、総合行動と想定が進むにつれ、与えられる任務が困難な状況となり、行動時間・行動距離・地形障害等も段階的に増加され、休養及び給養も漸次制限される。そうした状況の中でレンジャー学生達は、基礎訓練で修得した知識や技術を応用して任務達成に邁進する。

(コメント)
 レンジャー教育期間中には、レンジャー同期とバディを組むこととなる。Buddyは男同士の友人、仲間兄弟のこととされる。レンジャー教育受講期間の全てを通じて、文字通り苦楽を共にする。己が極限状況にあっても常にバディを気遣い、バディの為に己の全てを捧げる。乾パンのかけらを分け合い、生死を共にする覚悟なくしてバディは成り立たない。このような強い絆で結ばれたバディは生涯の友であり、妻以上の存在であるとも云われる。

 

 彼らの装備重量は40~50Kgにもなる。時には弱音を吐いたり、皆についていけない者が出る。しかしながら戦場に仲間を置き去りには出来ない。戦闘隊として皆で助け合い、困難な状況を克服し、何が何でも任務達成に立ち向かう。また、不眠不休で体力・気力の限界の中、レンジャー学生達は部隊を指揮運用することの難しさを痛感する。

(コメント)
 レンジャー隊員は、極限状況下であっても正常な判断が出来なければならない。以下に紹介する一文は、小生が連隊長時代に幹部教育用に配布した「羊蹄」(蝦夷富士羊蹄山に因んだ。)掲載のものである。部隊長の期待の大きさを解って欲しい。

『羊蹄68   H4.07.08
極限状況下における正常な判断力の涵養!
(レンジャー養成訓練-行動訓練2想を視察して)
1 序
 昨日レンジャー訓練隊の第2想を同行視察した。本養成訓練も半ばを過ぎ、訓練の佳境に入りつつあり、被教育者の体力気力そしてレンジャー隊員としての識能も着実に向上しつつあるのを確認した。
 教官助強の厳しく親味溢れる指導、そして被教育者の一人前のレンジャー隊員にならんとする使命感が本訓練成功の基礎である全員が晴れてレンジャー記章を胸に装着することを諸官と共に期待したい。
 
2 極限状況下における指揮官の責任
 我々自衛官は防衛事態という人間にとってのいわば極限の状況下において任務を達成するという極めて重い負託を国民から課せられている。この為に隊務全般を教育訓練を教育訓練を主軸として運営しているのである。
  而しながら、通常の訓練において極限に近い状況下を体験することは皆無に近い。かかる意味において長駆困難なる地形や記章を克服しつつ長期に亘り、独立的に行動するレンジャーの訓練は、一般の隊員が体験しうる或る意味では極限下の訓練であろう。
  若い3曹や陸士長中には1士を含む隊員が戦闘隊長や班長等々として、任務必成の為にひた向きに努力している姿に接し、感動を覚えずには居られない。
  隊長、班長としての状況判断・指揮法は未だ未熟ではあるが、最終想定の頃には長足の向上があろう。連隊の中堅陸曹諸官を上廻る能力啓発がなされつつあるのではないだろうか。体力気力そして生命維持の限界に近い状況で敵を至当に認識し、地形を的確に判断して任務遂行の方法を決定するということは誠にもって至難なことである。諸官等は限界に近い状況で部隊を統率し指揮し任務を遂行しうる確たる自信があるだろうか。
  冷静に己の胸に問いかけて貰いたい。それの足らざるを嘆くよりも、如何にしてかかる能力を養うか、それを如何に鍛えるかが重要である。
 レンジャー訓練隊員に栄光あれ
 男の涙をみせよ』

 

  高い団結、規律、士気を維持しながら作戦を行うことは容易ではない。1人のミスが全体の死につながることもある。細心かつ大胆に行動し、生き残り、目的を達成しなければならない。その過程の中で、任務に対する使命感と実行力が自ずと養われ、一人前のレンジャー隊員が養成される。疲労困憊のさなかにあっても、不撓不屈の精神力で与えられた任務を黙々と遂行していく。レンジャー学生達はその訓練の過酷さに、体重が10Kg以上減少することもある。

(コメント)
 レンジャー養成訓練の最終想定が終了すると、訓練隊は駐屯地に帰隊、任務達成報告を行う。正に感動的なシーンである。げっそり痩せて、目をギラギラさせて、最後の気力を振り絞っての彼らの任務完遂、帰隊報告を駐屯地全員は勿論、家族や恋人までもが涙ながらに出迎える。写真は某部隊における帰隊状況である。

 

 

 約3ヶ月にわたる厳しい教育を乗り越え、夢にまで見たレンジャー徽章を勝ち取り、晴れてレンジャー隊員となった者達は卒業を迎える。そしてそれぞれの部隊において、陸上自衛隊の精強化を担う牽引力となり、国防の任に当たるのだ。 

 

 平成23年11月、富士学校幹部レンジャー教育を紹介した映画が上映された。内容は、全国の部隊から入校した27名の幹部レンジャー学生の卒業までの91日間をドキュメンタリーで収録したものである。

(コメント)

 http://www.magicaltv.net/_webpage/ranger91/

他に、荒廃した近未来都市エイトシティーを舞台に、「関ジャニ∞」メンバー7人が演じるヒーロー「エイトレンジャー」が、テロリスト「ダーククルセイド」に立ち向かう姿を描く映画も公開された。