「陸上自衛隊唯一の冬季訓練専門部隊=冬季戦技教育隊「冬戦教」」の紹介
山下 輝男                      
 
 
1 冬戦教「冬季専門の特殊部隊」
 冬季戦技教育隊(冬戦教、JGSDF Cold Weather Combat Training Unit)は、北海道札幌市の真駒内駐屯地に所在する北部方面混成団に編制された部隊であり、唯一の冬季専門部隊です。
  他の部隊の特技保有者に教育訓練等の指導を行いながら、「特殊部隊」としての練度維持のため過酷な訓練を行っているのですが、高度なスキー技術を組み合わせた国内でも屈指の戦闘技術を誇る部隊でもあります。

部隊内の特別体育課程教育室からは、冬季オリンピック等にバイアスロン(以下バイアと略称)及びクロスカントリー(以下クロカンと略称)などの競技で、日本代表選手を送り込んでいます。
陸上自衛隊の特殊部隊としては最古の歴史を誇り、通称SOU、CWCTまたは冬戦教と呼ばれています。
  2011年4月22日、北部方面混成団新編に伴う処置で北部方面直轄部隊から北部方面混成団隷下へと編成替えが行われました。

冬戦教のシンボルマーク:冬戦教の基幹である「三つの室」をニセコアンヌプリを形どった正三角形で表わし、相互に連携しながらそれぞれ「辺」を長くし面積を大きくすることで更なる発展を意味しています。

 「スキーと銃のクロス」は近代二種とスキーを表わし冬戦教創隊のシンボルを意味しているのです。

 「黄金の雪の結晶」は、冬の指導者を表し、スキー指導官の育成を意味しており、山椒の葉と実」は遊撃行動(一人になっても戦う。)とその精神要素を表したものとなっています。)

 

 
2 世界屈指の戦闘能力を誇る冬戦教
 北海道は豪雪地域であり、かつて、ソビエト連邦と対峙する第一線でした。
そのため、北方重視の戦略をとっていた陸上自衛隊は兵力・装備を集中させており、冬季の戦闘術の研究は必須のもでありました。
冬季戦技教育隊では、低視認性装備や隊員の体力低下・損害を防ぐ戦技の研究・開発に力を注いできたのですが、それにより、雪中戦においては装備でも運用でもアメリカ陸軍をも凌ぐと言われています。

アメリカ軍においても積雪寒冷地部隊の全員がスキー技術を習得していることはなく、自衛隊の雪中戦での戦闘能力の高さは世界でも屈指であると言われているのです。
かつては、対ソ連の特殊部隊的な側面が強く、レンジャー課程を優秀な成績で修了した屈強な隊員が各部隊から選抜されて所属し、さらに過酷な訓練を積むという超精鋭部隊でありました。
現在は、オリンピックの選手の養成機関という側面がクローズアップされがちですが、特殊部隊としての練度も維持しており、中央即応集団(特殊作戦群)と活発に合同訓練を行っているところです。
 
3 小粒だが精鋭揃いの冬戦教
 「冬戦教」は、バイアやクロカンのオリンピックでのメダル獲得を目指し日々鍛錬に励むオリンピック特別強化選手からなる「特別体育課程教育室」、積雪寒冷地部隊の冬季行動のスペシャリストを養成する「戦闘戦技教育室」、積雪寒冷地部隊の運用、装備品等の調査研究を行う「調査研究室」及び「隊本部」からなっています。
  
4 オリンピックメダル獲得を目指す特別体育課程教育
 冬季近代二種競技及びクロカン競技の教育訓練を行っています。
冬戦教のHPによれば、コーチングスタッフは室長以下本部班6名、バイア班Gp(男子班)及びバイアGp(女子班)8名、クロカン4名、養成1名、ワックス及びトレーナー各2名の23名です。バイア選手は19名、クロカン9名、他に候補者が男女計5名います。
専用のトレーニングセンター、西岡バイアスロン競技場(ローラースキーコース)があり、専用のストーンマシンを有し、スキーのメンテナンスは専門のスタッフが居り万全のサポート体制をとっています。トレセン内には、マッサージルームがあり、専門のトレーナーが体のケアを行っているのです。
  
5 冬季戦技教育のスペシャリスト:戦闘戦技教育室
 陸上自衛隊唯一の冬季行動における専門教育を担当しています。
冬季行動のエキスパート「冬の達人」を養成するために、「冬季遊撃課程教育」「上級スキー指導官養成及び練成教育」を実施し、夏季には「警察庁の救急従事者に対するレンジャー教育(2年に一度)」を実施しています。尚、戦闘戦技教育室の要員に、日本スキー連盟公認のナショナルデモンストレーターが在籍しています。
  
(1)冬季遊撃課程教育(冬季レンジャー養成)

冬季遊撃徽章

冬季遊撃とは風雪、酷寒の雪山を克服し、強靱な体力・気力で任務を遂行する冬季のレンジャーです。 冬季戦技教育隊でレンジャー教育を受けると、冬季遊撃レンジャーの資格が与えられるのですが、これは通常のレンジャー教育と異なりますので、修了者には冬季遊撃徽章が与えられることとなります。


極寒のニセコ山系縦走訓練

訓練塔からの降下訓練

スキー装着してのりぺリング降下

氷壁登攀訓練

ゾンデ棒による遭難者捜索訓練
  
(2)官品スキーのエキスパート:上級スキー指導官養成・練成訓練

冬戦教では、積雪寒冷地の行動において基本となるスキー技術のエキスパート(指導者)を養成するための教育を実施しています。室長以下約10名のスタッフがいます。


練成訓練状況

猛吹雪の中山地機動訓練

 自衛隊のスキーは、一般スキーヤーがゲレンデで滑走するスキーではなく、クロスカントリー用のスキーに似た独特のスキーであり、云わば軍用スキーで、一般スキー並みに滑走するのは難しいものです。 滑走面が広く、爪先は固定されているが、踵が上下します。
 ストックも太くて頑丈で、筆者も経験しましたが、一般のスキーと違って扱いにくいものです。 (指導官クラスの者は殆ど一般スキーと同等に使いこなします。
基本通りに滑れば問題ないとは云うのですが…)

  
(3)警察庁の救急従事者に対するレンジャー教育:東北方面隊と隔年で担当しています。
  

6 地道な研究が命を救う調査研究室
  室長以下約4名で、積雪寒冷地におけるに戦闘行動に関わる事項の研究を行っているます。 具体的には① 冬季の気象・地形を利用した戦い方 ② 冬季に関わる装備に関する研究なのですが、云うまでもなく、冬季作戦では、個人の戦技能力とそれを支える装備の優劣の差が夏季作戦に比して決定的な影響を及ぼします。
このため、平素からの地道な研究が重要なのです。

トピックス:新型スキーの紹介
長さを変えることが、出来るようになりました。
ロープを通すことが出来るようになりました。