「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第5回 教育(コーチング)について(1)

堀口 紀博

一例;スキーを部隊で教えて貰った時、部下の指導者は、「足の裏で体重を感じて下さい」「体重移動は足の裏でするのです」と指導します。コーチと言え部下ですから、遠慮なく「お前の教え方は、オリンピックの選手に教える方法であろう、ビギナーはそんな教え方では意味がわからないし、出来ないぞ」
二例;長嶋巨人軍永久監督は打撃指導で「バァーと来た球を、ジットと見て、ドンと撃つのだぞ」これではわかるのはイチローくらいです。通訳が要ります。
三例;青木功は、フックでもフェードでも、打ちたい方向を思いながらスウィングすれば、その通りになると言います。「石川遼君」には分るかもしれません。また、ゴルフの教科書は、「ボールを見て」と書いてありますが、ボールの何処を見るのか、左側か右側か真中かは書いてありません。初心者に教えるのと、プロに教えるのは、当然違うはずですが、日本人はあまり頓着しません。ひどいのは「取りあえずやってみな」「そう、そう、そんな感じ」と言うような表現をします。教えると言うよりは、やらせてみて、やれるやつだけに何度もトライさせる。教育が大切と言いながら、日本にはコーチ学が無いので、こんなことになります。
 コーチ学とは技術を教える学問です。技術ですから、厳密に、定量的に、誰でも誤解することの無い数値等で示さないといけません。
 自衛隊では基本教練と言う科目があります。「気をつけ」「敬礼」「回れ右」等を教えます。「気をつけ」では、足先を開く角度は60度です。教えるためには、この程度とか、もう少しとかではなく、60度の角度をつけた道具を用意し、隊員の足元で60度を当てはめて、確認させます。間違い様がありません。
 職場の教育はいかがでしょう?忙しい現場では、教えるよりは、取りあえずやらせてみる。やれない者が悪いので、排除すればよいと言うのもあります。
 しかし、現在では仕事は個人プレーではなく、団体プレーの時代ではないでしょうか?部隊としての平均値を上げることが、会社の成績を上げる方策としてはより良いので無いかと思います。時代が変化してきている今、資源は無駄使いしないで、より良いコーチ学を確立するのが早道のような気がします。
 「気合が大切だ」「やれるまで、自分で考えてやって見ろ」「俺は出来たぞ」「出来ないのは心構えが悪いのだ」と叱咤激励するのではなく、やさしく教える、出来るまで教える。考えても分らない事は、知っている人に教えさせる。時間の有効活用が図れ、しかも誰でも出来るようになれるし、出来ます。
 教育の目的を明確にする事が、コーチ学を明瞭にします。会社では何を教えるのか?社内用語、社内手続き、取り扱う機器の技術的説明、販売先の状況等そして社会人としての最低の常識、近頃は何が常識かを定義しないといけないかもしれません。そうそう、挨拶が出来ないらしい、最近の日本人
(了)