「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第16回 「想定外」と危機管理

堀口 紀博

 今般の東日本大地震報道でよく見かける「想定外」とはなんなのでしょう?日本では地震がよく起こることは周知の事実です。場所、時間、大きさは現在予知ができません。三陸沖等地域は何時地震が起こっても不思議ではないと言われ続けてきました。数年前、仙台に勤務していた友達は「何時か起こるだろうが、自分の勤務間は地震が起こらないよう神に祈りたい」と言っていました。
 M9.0 は想定外か?歴史上経験のあることです。津波が来たことは想定外か?海岸に近い地域に津波が来ることは常識の範囲内です。インドネシアの津波はテレビ画面でよく見ました。津波の高さ30m以上も三陸沖地震の歴史では報告されています。原子力発電所の事故は想定外か?海岸縁にあり、津波の影響も受けるのは当然です。日本の原発でも過去に冷却できない事故が起こり間一髪の場面があったとの報道もあり、昨年同様の想定で訓練をしていました。チェルノブイリやスリーマイルの原発の事故、原子力潜水艦の事故もよく知られていることです。風評被害は想定外か?風評被害は幾度も経験していることです。狂牛病騒ぎのとき、肉売り場にはお客はほとんどいませんでした。
 事故は何故おこるか?安全装置が働かなくなると起こります。安全装置をどのように考えるかが「想定」でしょう。拳銃の安全装置は3段階、原爆は7段階とか映画では表しています。安全装置が全て外れたときに事故は起こります。如何に事故が起こらないように安全装置を準備するかを想像する力が大切です。想像した状態を現実化するために創造する力が要ります。万々一、安全装置が無効になり事故が起こったときは如何に対応するか、被害を局限化する計画を作らなければいけません。また、計画が絵に描いた餅にならないように、計画どうり実行できるための訓練をしなければいけません。訓練は大切です。訓練すれば、計画の不備が明らかになります。プラン、ドウ、チェックが要るのです。
 実行されてはいけない計画、実行されてはいけない訓練を、あたかも今そこにあるが如くに臨場感を持って真剣に繰り返し訓練し、実行することが「想定」です。事故は必ず起こるというのが、指揮官時代の私の想いでした。事故は起こらないだろう、多分よかろう、安全だと思い込むことが「想定」ではないはずです。恥ずかしくて「想定外」で事故が起こったなどとは、立派な社会人は言ってはいけないのです。

(続く)