「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第24回 危機管理(リスクマネージメント)とは

堀口 紀博

 「事故は起こる、必ず起こる」交通事故を例にすると、統計的に100 万キロに1件、100 人の部下が各自1万キロ走行すれば1件の事故が起きます。運転手の操作に起因する事故、巻き込まれ事故、天候気象等による事故、交通三悪「無免許、酔っ払い、スピード違反」による確信犯事故等に分類できます。また、軽易な事故から死亡事故まで幅広く分布します。原因を分析し、事故を起こさない施策が必要です。運転技能の向上を図り、体調管理を心がけ、うっかり事故を無くす。事故は家族、組織にも重大な影響を与える等機会を見つけて教育する「耳タコ作戦」が有用です。事故を起こすなと厳しく言っていると、怒られるのが怖くて、事故を起こした場合でも報告しなくなります。事故の状況をいち早く報告させないと、事故の影響を極小化できません。三段階目は事故を分析、検証することにより再発防止策を策定することです。
 これらを教育訓練し、事故に備えるのが危機管理です。危機管理とは「悲観的に準備して、楽観的に待つ」のが極意です。指揮官の時、交通事故はあるだろうが、なるべく小さいものに、大きな事故は他の部隊で引き取ってもらいたいと祈ってました。部下が交通三悪を起こすのは指揮官として許されないことです。しかし、残念ながら起こる可能性はあります。そんな事故は「信賞必罰」、罰は個人ばかりではなく、所属部隊にも連帯責任を与えると明言し、実行します。
 「ハインリッヒの法則」300 のヒアリハットを全員が意識し、相互に気を付け合うような教育が必要です。指揮官一人の目では全体を監視することはできません。社内でパワハラ、セクハラ事案が起こるのは、正当な指導をハラスメントと感じさせる「空気」が存在するからです。「ピンクも重ねれば赤くなる」ひとつひとつの事柄は問題と感じ無いにもかかわらず、そのような「空気」になっている組織では、些細なことが「レッドカード」になってしまいます。
 IT化社会ですぐにネット上に出ると心配するよりは、不健全な組織にならないようにしたほうが早いのです。ネット上に投稿するのも、ハインリッヒの法則に従っており、ヒアリな状況が組織に蔓延しているからです。頭に手を置いたことが傷害事案になるのはそのような芽が大きく育ち、臨界点になり、爆発したわけです。組織を健全状態に保てば、厳しい指導にもパワハラを恐れる必要はありません。健全な組織を作るため指揮官がなすべき事は「嘘を言わない」「言ったことは必ず実行する」部下はこの指揮官は困難な状況になったとき、自分たちを守ってくれると思えば、必ず健全な組織を作り、更に指揮官を力強く持ち上げてくれるものです。「俺が、俺が」という指揮官はどこかで躓くものです。そのような事例を多く見ました。

(続く)