「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第25回 「ホウレンソウ」その後

堀口 紀博

 販売会社講演依頼で多いのは「近頃ホウレンソウが無い」「実のあるホウレンソウをしない」ので、部下が立派なホウレンソウを出来るようになる話をして欲しいと頼まれます。管理職の皆さんは部下からの報告が無いと感じているようです。理由の一つは、日本人は単一民族であるので、お互いが良く分かり合っている、阿吽の呼吸で分かり合えると思いながら生活していることにあります。
 外国の映画を見ると、男女は朝から晩まで何度も互いに「I LOVE YOU.」「me too.」とささやきあっています。日本の家庭、映画でそんな場面は見たことがありません。夫婦間、恋人間で、互いに「言わなくてもわかる」と誤解し合っているからなのでしょうか?逆に、夫婦間で夫が「愛している、君は?」などと言えば、「あなた、頭がおかしくなったの?なんか悪いものでも食ったのでは?」と痛くも無い腹を探られるのが落ちでしょう。
 しかし、本当は言わないと人の気持ち、仕事の内容は分かりません。会話により、互いに確認作業する必要があります。日本人は日常生活において確認作業をあまりしません。お互いの信頼関係を確認することは、失礼なことであり、信じていないのかと思われます。
 演歌では「俺の目を見ろ、何にも言うな」「話さなくてもお前の気持ちは分かる」という、ありがたい世界があります。日本人の均質性の現れです。しかし、移民、人種、宗教、文化が違う人々で成り立つ国家では、自分の考えを分かりやすく、大きな声で話し、説得しなければいけません。相手の目を見て分かるのは、目の色くらいでしょう。
 日本人のおもてなしは、忖度する、察する。言わなくてもやってくれる、かゆいところに手が届くサービスです。そんなサービスが出来る国はありません。日本国は国際社会・外交でも相手の気持ちを忖度し、なるべく相手が嫌がることは言わない。隣国のどんな理不尽な言動、行動にも、相手国の指導者も苦しい立場だから、国内で人気がなくなっているからと領土問題などの理不尽な出来事も黙っているようです。黙っていても、本当は日本のことを分かってくれている。そのうち話し合えば日本の立場も分かって譲歩してくれるに違いないなどと思うお人よしになっています。お人よしの対応など、国際社会では何の効果もありません。日本の周辺国がみな核武装している状況から、日本も核武装に着手したい、位のことを言ったほうが領土問題の解決に有効な手段であると思われます。
 さて、報告ですが自衛隊では毎日朝から晩まで、報告を行います。朝は日朝点呼、夕は日夕点呼。報告要領は「総員○名、事故○名、現在員○名。事故の内訳○○」、訓練時の報告要領は「人員装備異常なし、健康状態異常なし」。報告内容は定型化してます。定型化すると時に慣れてしまい、本質を忘れることがあります。その一例「小銃一丁紛失以外異常なし」おいおい、なんか変だぞ、銃の紛失は大いに異常ありだ。報告は何故するのか?指揮官が現在時点での戦力状況を把握し、いつでも戦える状態にするために行います。
 会社では上司が求めていることを常に考え、察して、適時適切に定性的でなく定量的(数値で示す)に、事実と分析結果そして自分の行動案を言葉で伝えることが報告です。貴方の上司は報告を待っています。

(続く)