「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第31回 叱り方、叱られ方

堀口 紀博

 「舐められない顔をしてるな!」と先輩に言われたことがありますが、逆に「生意気な顔」かも知れず、よく叱られたものです。
 現職時代は叱ることも、決済印を押すことも、すべて「指導する」、部下は「指導を受ける」と表現しました。
 上司の気まぐれで何故叱られているのか分からない状況でも、最後には「ご指導ありがとうございました。」と返答しなければいけません。
 指導する立場になると、何故叱られるのか分からない指導はするまいと、これまで経験した「指導受け」を反面教師として考えたものです。
 これは嫌だと思った指導は「時間の長い指導」です。時間が長いと細部に渡りどうでもよいことに気づきだし、本質を忘れた「て、に、を、は指導」になります。更に返答が遅いとだんだん感情的に「イライラ」しだします。
 「叱る」ことが、「怒る」ことに進化してきます。感情的にならない怒りはありません。最終的には、自分が怒っていることに対して更に感情が増悪して「怒り」を怒りだします。
このような時は、指導する内容以外の個人的な指導に入る危険性があります。
 「これまでも同じ間違いだぞ」「何回言えば分かるのか」「能力が無いぞ」「やる気があるのか」「同僚の○○君ならすぐにできるのに」など今指導している事項以外(性格、人格、他人との比較、相手との歴史)の事を言い出します。これはすでに「パワハラ」でしょう。
 昔は、指導受けの資料を投げつけるような指導もありました。これをやられた先輩は「落ちている文書を拾うときの屈辱は一生忘れない」と怨んでいました。これはパワハラより、「犯罪」にちかいかも?
 私も1時間に渡り指導を受けた時は「何を」この上司は怒っているのか分からなく、ただ下を向いて早く終わらないかな?と思っていました。このように指導が怒りに変っている時は「気合を入れる」と表現します。
 ある時、部下があまりに「トボケタ資料」を持ってきたので、日ごろ冷静な私も「かっと」なり、「叱る」を飛び越え、「激怒」に変化して「気合を入れそう」になりました。これはまずいと思い「すぐに俺の前から出て行け、顔を見ていると、何時間にもなるぞと」、追い返したことがあります。叱るは「短切;手短に」が一番です。
 次いで注意することは部下の自尊心の尊重です。人間年をとっても無くならないものは「自尊心」といわれますが、若い部下でも叱られたくないし、叱られている姿を他人には見られたくないものです。そのために指導者になると個室が与えられていました。部屋で個別に叱れば、相手の自尊心はそんなに傷つかないものだと思います。
 私の指揮官時代、指導受けをする部下は部屋に入る前に深呼吸をして、意を決して、ノックをしたそうです。指導する前に、すでに心は叱られている状況との評判もありました。これは私にとり、大いなる風評被害でした?
 話は変わりますが、愛犬の躾では、粗相をした場合、その場で、その事を叱ります。その時、昨日もしたろう「ペンペン」何度も何度もしたろう「ペンペン」お前の血統が悪いからだ「ペンペン」性格が悪いぞ「ペンペン」と長時間叱っていても愛犬には通じません。逆に「ワンワン」吠えられ、飼い犬に噛みつかれるかも知れません。
 部下を叱る場合は、愛犬を相手にする以上に、短く、優しく、怒らず、根に持たず、パワハラにならないように注意しましょう。
(続く)