「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第45回 読み書きそろばん

堀口 紀博

上司はよく「あいつは分かっていない」と嘆くことがあります。一体何が「分かっていないのか?以下のような内容かも知れません。
1.その場の空気が読めないのか?
2.上司の意図・指示が読めないのか?
3.組織の常識が分かっていないのか?
4.教えたことが分かっていないのか?
5.分かっていないことすら、分かっていないのか?
6.そもそも理解できる素養が無いのか?
 上司は部下に対して「一を聞いて十を知る」ことを望むものです。上司の気持ちを忖度してもらいたいものです。「一を聞いて十を知るような人」を「智慧」のある人と言います。そんな部下は普通いないと思った方が正解です。
 「読み書き算盤智慧の外」と言います、「一を聞いて一を知り、その一が行える」事は、読み書き算盤と同様に智慧の外と言っても良いでしょう。
 「一を聞いて一を知り、一が出来る人を作る」のが教育であり、訓練です。
 教育・訓練の本質は、何度でも繰り返すことです。「門前の小僧、習わぬ経を読み」と言います。庭を掃いている小僧さんでも、朝に晩に繰り返し住職の読経を聞いていれば、「お経」を習わなくても、意味は分からなくても、「お経」を読む事が出来るということです。興味があれば、内容の理解にまで進むものです。
 上司は分かっていないと言う前に飽きることなく、分からせようとする、持続する意志力を持たねばいけません。更に、組織の構成員其々が互いに教えあう環境を作ることも大切です。
 環境の大切さは、孟母三遷の教え(孟子の母は、始め墓場の傍に住んでいたが、孟子が葬式の真似ばかりするので、市場近くに転居したが商人の駆け引きばかり真似るので、学校の傍に転居した。すると礼儀作法を真似るようになり、これこそ教育に最適の場所として定住した。)に示されています。
 分かっていない人・組織を変化させるためには、職場環境を整える責任があるといえます。
 「教えざる罪」は上司の責任と言え、上司が全てのことを直接部下に教育することは、時間的、物理的に無理が有ります。総理大臣が全国民に直接教育は出来ません。そのために組織があります。組織全体をレベルアップするためには、各階層、内容に適した教官教育が重要です。
 部長は課長を、課長は係長を、係長は課員を直接教育・指導していけば良いわけです。専門的な部門の教育は、「オー(大)ソリティ」がいなくても、「コ(小)ソリティ」を養成して、各部門毎の教官が教えればうまくいくものです。
 基本的に人は何かを他人に教えたがる本能があるものです。教官に指名されれば、責任を持って教育をします。
 「袖擦りあうも他生の縁」と言いますが、同じ会社で、同じ職場にいる人々は多少どころでは無い縁で結ばれています。運命共同体的結びつきです。
 一人が沈んでいけば、全体もまた沈んでいくかも知れない共同体です。上司は飽きることなく(不倦の誓い)部下を指導・教育し続けることにより更なる繁栄が期待できると思います。

(続く)