「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第46回 ある会社

堀口 紀博

 販社代表者の話ではありませんが、ある会社の代表者が嘆いていました。嘆きの内容は教育か指導か躾事項かは分かりませんが、世間の常識から外れていると感じる部下の行動に関するものでした。
その一;若い部下も中堅の部下ですら、挨拶が出来ない。ある朝、若い部下が上司の顔を見たにも関わらず、朝の挨拶をしていない、それを先輩も注意しない。朝顔を合わせたら元気よく「おはようございます」と言うのは常識と思うし、いつも自分は注意しているが、周囲の人は誰も注意しない。今更自分で直接挨拶をしろと指導するのは大人気ないし、代表者の仕事ではないし、朝の挨拶すら十分に出来ない者が「ホウレンソウ」を徹底出来ないのは当然だなと、まず嘆いています。
その二;朝の挨拶ばかりか、仕事が終わり帰る時「御先に失礼します」の一言が言えない。黙ってモジモジしている。しかも、上司の俺より先に帰る神経はなんなのだろう。
その三;仕事に関して、自分が売るものの商品知識がとても乏しい、教えられたこと以上に自分から勉強する意欲が感じられない。少しでも良くなろうと何故しないと嘆きます。
その四;営業職なのに、年間計画どころか日々の計画も立てることができなく、客からの電話待ち受けという、受身仕事が大半、営業のイロハが分かっていない。自分達の時代は先輩の背中を見て、仕事のやり方を盗んだものなのに、近頃は考える頭を持っていないと嘆いている。
その五;.部長クラスは仕事が分かっているかと思えば、さにあらず、自分の責任範囲が分かっていない。例えば、部下が辞めたいと言ってきた時、前後左右も考えずにすぐに了解してしまい、結果報告しかしない。5 年以上我が社に勤務をし、ようやく戦力になりかけているとか、新入社員を戦力化するための会社の負担が分かっていない。
 部下が辞めるというような重大事案は代表者に相談しなければいけないのに、直に辞めていいと返事するノー天気さはなんなんだ。延々と代表者の嘆きは続きます。
 これら嘆きの処方箋はいかがすればよいのでしょうか?
その一;今の若い部下は常識がおかしい。人間の最低の基本がなってない。家庭教育がなってない。そもそも、常識がないとか、会社に入ってから挨拶の仕方、箸の上げ下ろしを教育しなければいけないのか、と嘆く前に、コンビニの店員教育を参考にしましょう。
 日本人だけでなく、日本語も分からないアルバイトにまで徹底して「ありがとうございます。こんにちは」と若者に言わせています。いまや、躾教育は会社の責任と考えるべき時代です。社会常識、会社常識はマニュアル化して徹底的に頭と体にしみこませなければいけません。挨拶が立派に出来る社員がいれば、それだけで立派な会社と社会的な評価を受ける時代です。 自衛隊の新隊員教育では3 ヶ月で親が感激するほど立派な挨拶が出来るようにさせます。箸の上げ下ろしまで、マニュアル化して徹底的に教えれば、教えたことはできるようになります。
その二;商品知識は、全て暗記出来るまで教えこみましょう。この程度で良いかと中途半端な状態ではなく、自社商品の知識は徹底的に覚えてもらいましょう。命の次に大切なお金を他人からいただくことの大変さを身に沁みて感じてもらうことが肝要です。
その三;日々の行動計画を立てるのが、大人の仕事の最初であることを教えましょう。毎日何をするのかその時にならねば分からないのは、小学生のレベルです。年間目標や月間目標は上司が優しく示してやればいい事です。
その四;全ての部下に直接手取り足取り教える事は、時間的、物理的に不可能です。組織の中の小グループ長をしっかり教育することが重要です。「教官教育が教育の要諦である」自衛隊で学校長を務めて初めて体感しました。
その五;自分の責任範囲の仕事は完璧にするということを上級者には徹底し、責任範囲を逸脱することは駄目だと分かってもらいましょう。しかし、これを喧しく言うと、全て箸の上げ下ろしまで報告して了承をうけないと何もやらない者も出てきます。「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」状態に自己規制する人は、管理者として不適と思われます。
 最後に、アメリカのゴルフレッスン番組コーチの名言「これまでやってきた事を続けていても上達しません、努力をして自分を変えましょう。」仕事においても同じことが言えます。昨日、今日、明日、何時も同じに過ごせるわけはありません。

(続く)