「ある会社顧問(防衛省元将官)の独り言」
 第50回 マネジメントの質的変化

堀口 紀博

 少ない量(数)で出来ていたことも、大量(多数)になると、同じ方法では出来なくなります。管理者は、少人数の部下のマネージメントと多数の部下をマネージメントするやり方を変えなければいけません。ただ量(数)が増えただけで、同じようなもんだと考えては本質的な問題が生じます。

 量的変化はマネージメントの質的変化を引き起こします。

 一例として、食事の準備を考えてみます。家族の食事の用意と1000名の食事の用意を考えれば容易に理解できます。家族の場合は、食材の購入も近所のスーパーで、調理も奥様一人で簡単にできます。1000名の食事の用意は、システマチックにしないと不可能になります。

 栄養士、調理師、配膳要員、食器洗い要員、食材手配要員、予算会計要員、食材倉庫要員等の多くの人が必要です。食堂、調理場、食材倉庫、冷蔵庫、冷凍庫、下調理場、食材受付等の場所も用意しなければいけません。更に、一か月分の献立表、食材の調達計画、予算執行計画、食材問屋選定等も必要になります。課長以下の10名程度の組織を編成しなければいけないでしょう。

 全国展開のレストランならば、肉、野菜、魚等を生産現場から直接購入する等多様なシステムが必要となるでしょう。家族の食事の用意と千人、万人を超える食事の用意では組織編成を根本的に変更しなければいけません。

 会社においても、少人数の組織マネージメントと大組織のマネージメントでは、質的に大変化が必要になります。10名以下の組織であれば部下の事は、個人情報を含め、能力、適性等ほとんど全てを掌握することができます。またやらなければいけません。100名以上では、中間管理者を使って部下の掌握をすることになります。

 私の経験上、50名程度が一人の管理者が直接マネージメントするのに適切な最大人数の様に感じられます。

 大きな組織での危機管理上、実戦では「長」と「副」とは食事、宿泊施設、車、飛行機等の利用に際し同席、同乗をしないのを基本とします。大相撲の海外場所では2ないし3グループに分けて渡航します。

 組織が大きくなると、一人の指導者が全てを管理し、組織の目的を達成することは困難になります。組織を効率的に運営するために、目的別に縦割りの組織を編成する必要があります。しかし、縦割りで仕事をしていくと、部分正解、全体不正解なセクショナリズムになる危険性が出てきます。

 縦割り組織の弊害は優秀な人材による組織でもあります。友人は有名企業にいますが、組織横断的な仕事になると、会社の仕事であることを忘れ、どこの事業部の仕事かを考え、自分は関係ないと判断し仕事をしないと嘆いていました。

 縦割り組織の弊害を除くため、組織を横断する横串し機能を持った指揮官直属の幕僚組織が必要となります。社長直属の幕僚組織は大組織をマネージメントするのに、大きな力を発揮します。機能的な縦割り組織を全体的に俯瞰し、全体最適な業務を執行させるのが幕僚組織の任務です。

 社長の考えを、迅速に組織全般に浸透させる為に、優秀な幕僚組織が必要になってきます。幕僚の業務は「適時性」「先行性」「並行性」「完全性」の四項目が必要です。社長の判断に資する情報は、タイムリーに、そして社長に言われる前に、社内の全ての組織を有機的に結合することで、得ることが出来ます。完全な仕事をしようと適時でなくなることが一番いけないことです。

(続く)