みね姉の見た「防人たちの素顔」 その10:自衛隊はサービス業!?

峯 まゆみ

 前、このエッセイで「自衛隊の接遇は素晴らしい」という内容について書きましたが、 最近、私は、その素晴らしさに感激してうれしい!と思うよりも、悲しさと切なさの方が込み上げてきてしまう今日この頃です。
 ある会食で一等陸佐の方とお話していた時に「いつも思うのですが、こういう時の接遇係の方って、一流ホテルのホテルマン以上の接客をされますよね…。ここまでする必要があるのかと思うくらいです」と言いますと、その方が「…まぁ、なんと言いますか、自衛隊って『サービス業』みたいなものですから…」と自嘲気味に言われたので、私は言葉をなくしました。
 自衛隊発足後、すさまじい逆風の中、自衛隊は民間人の理解を得るために広報活動始めとして、田植えのお手伝いまでしてきました。そういった諸々の活動のコンセプトは「自衛隊は怖い軍隊ではない」というものであるように感じます。このことを周知するために、凡そ他国の軍隊では行うことのない、民間人に配慮した「サービス」が行われることになったのでしょう。
 しかし今や、自衛隊に対する国民のイメージは完全に変わりました。自衛隊への好感度が98%という時代が到来し、TVで取り上げられる機会も増え、ますます自衛隊の人気は上がり、自衛隊のイベントに向かう人も増えています。それ自体は結構なことだと思いますが、人が増えるということは同時に色んな種類の人が増えるということですので、無作法な見学者が増えているのも事実です。特に目につくのが、艦艇を遊園地のアトラクションか何かと思っている人たちや、江田島を観光地だと思っている人たち、また、自衛官に対して「集団的自衛権についてどう思いますか?」などと平気で聞いてくる非常識な人たちもいます。こういう場面に出くわすと、言いようのない怒りがこみ上げてきます。
 自衛官は、おそらく広報活動の際に「民間人に怪我をさせないように注意すること」はもちろん「トラブルも起こさないよう」と厳命されているのだと思います。なので、もちろん「危ないですよ」「気をつけてください」という細やかな「声かけ」はされていますし、ダメなことはちゃんと注意はされています。しかし、マナーが悪い民間人に対してはそこに「危険」がない以上、気になっていてもあまり注意はできない、という空気を感じます。
 見るに見かねた時、私が見学者に注意をする時があるのですが、その後で自衛官は、必ず「ありがとうございます」と小声で言ってくれるので、注意したくてもできないジレンマを抱えていたのだな…と思い、切ない気持になります。国を護ってくれている人たちが、護ってもらっている人間に対して、ここまで遠慮し、譲歩する必要性があるのかと思わずにはいられません。
 「自衛隊はサービス業」だと仰いましたが、民間のサービス業はお客を選ぶことができるし、相応しくないお客を追い出すことができますが、自衛隊にはそれができませんでした。そもそも、自衛隊が「サービス業」であらねばならない事自体が歪んでおり、民間人が、それを望んでいることがおかしいのです。
 自衛隊はサービス業者などではなく、国防という日本で最も責任の重い職務に従事している方たちであることを、民間人がきちんと理解し敬意を払えるようになることが、国民の98%が好意的になった自衛隊の、次のステップではないかと考えます。「親しみやすさ」はもう充分にPRできていますから、厳しい所をもう少し出してもいいと思います。
 民間人が自衛隊に対してきちんと敬意を払える日本になれば、自衛隊と民間人の関係はもっと建設的で良好な関係になるのではないでしょうか。