みね姉の見た「防人たちの素顔」 その14:「艦長」という存在(3)

峯 まゆみ

 保法案に国会はおろか日本中が揺れているこの頃ですが、「反対」と叫ぶ人も「賛成」と手をあげる人も、「平時における自衛隊(軍隊)の役割」を明確に理解している人はそう多くないのではと思います。
 「平時における自衛隊(軍隊)の役割」とは、「戦争がないことを祈りつつ、戦争(戦闘)になった場合に勝利を収めることができる力を養う」という事に尽きると、元艦長さんは仰いました。
 安保法案を戦争法案と叫ぶ人たちは、かつて自衛隊を違憲の存在だと声高に言っていた人たちと同じ考えの方々と思うのですが、彼らは「自衛隊こそ日本が戦争をしないことを一番強く願っている人たちである」とは夢にも思っていないように感じます。
 やれ戦争法案だ、自衛隊は違憲だと叫ぶ人たちは武力の全ては悪で、それを保有する組織は同様に好戦的で戦いたくて仕方のない連中なのだと信じたいのかもしれませんが、有事の際には、真っ先に自衛隊が戦場に向かわねばならないのですから、戦争を待ち望んでいる自衛官など存在しないと言い切ってもよいと思います。事実、私もそういう人しか知りません。
 しかし、だからと言って国難から逃げるというのではなく、そうなった時には命をかけて国を護る覚悟を持っている人たちです。当然、覚悟だけで敵に勝てるわけではないので、戦闘において勝利を納め得る力を養うため、平素から「装備の全能発揮」「戦術の演練」に努め、隊員のモラルをハイレベルに維持していなければならないのです。
 吉田茂の有名な訓示の通り、平時において自衛隊は注目されませんが、戦争はもとより災害が発生した時は、突如として国民の関心の的になります。これは、東日本大震災を見れば明らかです。よって、常日頃からあらゆる任務に対応できる「精強」な部隊を作り上げておくことが必要とされ、当然、艦長の最大の使命は「精強」な艦を作り上げることとなります。
 ところで、艦長が部下を育てるに当たってのいろいろなことをお聞きしました。その中でも印象的なことを紹介しておきたいと思います。この方は「ツキを呼び込むのも実力」という事をしばしば仰います。チャンスをチャンスとしてとらえ、ターニングポイントをターニングポイントだと認識できる力を養成することが大事なのだ、と。人との出会いや任務・仕事との巡り合いを「誰でもできるかもしれない。しかし、チャンスをもらったのは俺だけだ!そして、メンバーはこの連中だ!」という意気込みでチャンスをモノにすることができるかどうか…同時に、「認められたい」「名を上げたい」「昇任したい」「昇給したい」などの、いい意味での欲、功名心を持つということは大事で、なぜなら「個人の利益は国家の利益に繋がる」と仰ったのを聞いた時、日本の社会において、それを堂々と望むのは憚られる風潮の中で珍しくも思い、大きく共感もしました。
 正しい向上心や功名心は、やる気と活気を与えます。それに上手く火をつけ育むことも、リーダーの資質の一つであり、それができる艦長がいる艦は間違いなく活気に満ちた艦であろうと感じた次第です。