みね姉の見た「防人たちの素顔」 その15:「艦長」という存在(4)

峯 まゆみ

 れまで、3回にわたり「艦長」というテーマで書いてきました。最後に、艦長に見るリーダーシップ論についてまとめます。
 官民問わず、組織におけるリーダーシップは重要視されています。何をもってリーダーシップというのか?リーダーとは何をすべきで、どうあるべきなのか?ということは、様々な書物に書かれていますが、簡潔に言いますと、リーダーの具備すべきことは以下の4点でしょう。
 1. 部下の意見を真剣に聞くことができ、信頼されている。
 2. 決断することができ、結果は全て自己の責任であることを認識している。
 3. 明確で具体的な指示ができる。(目標の指示、場合によっては手段も指示)
 4. トップダウン、ボトムアップを自在に使いこなせる。
これに加えて米海軍バーク元海軍大将のリーダーシップの特性についての言葉を、元艦長さんが教えてくださいました。
 1. 自信
 2. 知識
 3. 熱意
 4. 力強く明確に表現する能力
 5. 無能な不適任者をふるいにかける能力
 6. 大義のために何かをしようとする能力
この中で、最も難しいといわれたのが、5の「無能な不適任者をふるいにかける能力」だと仰いました。それはよく理解できます。おそらく、ごく平均的な日本人が、最も苦手とすることだからです。それは、無能な不適任者をふるいにかけられないのは、リーダーとして極めて無責任なことだという認識が、日本人には薄く、そういう人に同情してしまう傾向があるからです。しかし、これができないということは、有能な人間のモチベーションを下げるだけでなく、組織の壊滅にもつながりかねず、艦艇であれば乗員の命、ひいては国家の命運にも関わってきますので、この見極めと決断は、リーダーの責任の中でも重要な部分だと、私は考えます。
 それ以外でも、「一頭の狼に率いられた羊の群れは、一頭の羊に率いられた狼の群れを駆逐する」という言葉があるように、優秀な艦長とは自信と活気を失った羊たちのモチベーションを引き上げ、同じ乗員を見違えるほどの活気に満ちた船乗りに変えてしまう力を持っているのではないかと思います。
 実際に、海上自衛隊でも、そうした例をある艦で目の当たりにしたことがありますが、文字通り「艦を生き返らせた」艦長がいらっしゃいました。乗員から「この艦長の下でなら死ねます」という言葉を聞いた時は、感動で身震いがしたほどです。
 また、その方に関わらず、私がこれまでお会いした艦長さんたちは、いずれも現役・元を問わず、自信に満ち、愛情があり、厳しさもあり、大義と熱意を感じる、魅力あふれる人間性の方たちでいらっしゃいました。たくさんの、そんな方たちと出会え、実際にお話しする機会が多いということに、感謝でいっぱいです。
 ある元艦長さんがかつての部下たちのことを「彼らは国の宝ですよ」と仰いました。その方たちを育て、まとめられてきた誇り高い艦長さんたち自身も、まぎれもない国の宝です。そういう方たちが、第二の人生でも相応しい活躍の場があることを願ってやみません。