みね姉の見た「防人たちの素顔」 その21:美しい伝統の継承者としての自衛隊

峯 まゆみ

 走になり、おのずと自身の1年を振り返ることが多くなる今日この頃、改めて思い起こすと、今年も、本当にたくさんの自衛隊行事に参加させて頂きました。
 私に限らず、年々高まる自衛隊人気と共に、同じような方が老若男女増えているようです。そして、参加目的や楽しみにしている対象も、各自様々であることでしょう。実際に自分の気づき次第で、本当にいろんな楽しみ方ができるのも、自衛隊行事の特徴ではないでしょうか。私自身も、楽しみにしているポイントは色々あるのですが、特に興味深いのは式典です。
 初めて陸上自衛隊の記念行事にお邪魔した時に、最も強く印象に残ったのが「国旗の入場」でした。招待客は「起立の上、国旗に正対」、受閲部隊は全員着剣の上捧げ銃をして、「君が代」が演奏される中、旗手が手にした国旗を迎えます。初めて「国旗の入場」という儀式を目の当たりにした私は、少なからず衝撃を受けました。こういう儀式自体の存在を知らずにいたこと、そして、国旗をここまで丁寧に扱う方たちの存在を知らずにいたこと、何より、国旗というものは、ここまで大切に扱うべき物だということに、初めて気づかされたからです。
 この現代日本で、このように国旗を大切に扱う組織が、他にあるでしょうか?この儀式を目の当たりにした時、多くの来場者の中の「子供たち」の事を考えました。今や、国歌すら知らない子供達が増え、自衛隊入隊者に対しても、最初に国歌を教えなければならないとも聞き及んでいます。子供達が、「国旗」や「国歌」の重要性について学ぶ機会は、今や、学校では望むべくもありません。その重要性を理屈ではなく肌で感じる唯一と言ってもいい機会が、自衛隊行事ではないかと感じました。
 また、海上自衛隊の場合は、独特な存在感がある「自衛艦旗」も存在します。全ての艦艇は停泊時には、艦首に「日章旗」、艦尾に「自衛艦旗(旭日旗)」を掲げています。毎朝0800時に、海軍時代と同じ「君が代」の喇叭が鳴り響く中行われる、自衛艦旗掲揚と、毎日没時の自衛艦旗降下は、私が最も美しい儀式だと感じる光景の1つです。この自衛艦旗も、綺麗に折りたたんで丁寧に持ち運びされます。
 この2つの儀式は、私が感動し感銘を受けるほどには、当の自衛官は「素晴らしい」と思って行っている訳ではなさそうで、「やると決まっているので行っていることの1つ」という認識であるようです。しかし、それでも、こういう習慣が当たり前になることで、「国旗」や「自衛艦旗」は、大切に扱うべき物だということが、ごく自然に身につき、ひいては他の仕事道具に関しても「単なる物」ではなく、大切に扱うべき物だという認識が育つのではないかと考えます。
 自衛隊は、世界に類を見ないほど、乗り物や武器、道具類を美しく保ち、丁寧に扱い、大切にします。陸上自衛隊の戦車は、初めに必ず「魂入れ」を行い、役目を終えた戦車は「魂抜き」を行います。海上自衛隊の艦艇には必ず「艦内神社」があり、どの艦艇も「神様」を頂いています。つまり、単なる「物」ではないのです。そしてまた、国旗を床に置くことは絶対にしない・・・それが自衛隊です。国旗ともなれば、どの国でも丁寧に扱うのが当然だと思う人もいるかもしれませんが、それがそうでもありません。ましてや、「物」に命や神様が宿っていると考える軍隊など、他国には存在しないでしょう。こういうことが、精強である事と関連するのか?と考える人もいるでしょう。しかし、物を大事にする人たちが規律正しい組織となり得、そして規律正しさと精強さは、当然比例することを考えると、あながち無関係でもないのではないでしょうか。
 自衛隊行事に足を運ぶ若者や子供達は、普段目にすることのない、形式美の粋のような式典を見ることができます。また、入隊した若者たちはその当事者として伝統を受け継いでいきます。この事から、自衛隊の存在意義の1つに、「失われつつある日本の伝統美の継承者」という側面もあるように感じる次第です。