みね姉の見た「防人たちの素顔」 その24:誇り高い海の忍者たち

峯 まゆみ

 衛隊の中で、最も謎のベールに包まれている部隊として有名なのが、潜水艦隊ではないでしょうか。基地は国内に呉と横須賀の2箇所しかない上に、一般公開を行うことはまずありませんので、海上自衛隊ファンでも、潜水艦乗りの方々とお話をする機会は滅多にないのではないではないかと思います。
 私は、非常に幸運ながら様々な潜水艦乗りの方たちのお話を伺う機会に恵まれてきました。潜水艦は、その行動が隠密であることから、「海の忍者」と呼ばれていますが、潜水艦そのものもさることながら、艦内で音を出さないように徹底されている潜水艦乗りの様子は、まさに忍者です。
 多くの海上自衛隊ファンや興味がある方からは、潜水艦というと「そうりゅう型潜水艦がすごい!」と言った発言が目立ちますが、私はそのことにやや苛立ちを感じてしまうのです。確かに、そうりゅう型は世界に誇る素晴らしい潜水艦ですが、どんな物でも、ハードウェアの能力は、優秀な乗員さんたちによって発揮されるのであって、ハードウェアそのものだけに意味はないと私は考えるからです。
 以前、SH-60Jのパイロットさんに、潜水艦との訓練についてお話を伺ったことがあるのですが、その時に「おやしお型でもそうりゅう型でも、なかなか発見できない」と仰っていました。念のため付け加えますと、海上自衛隊の哨戒能力の高さは世界随一なのですが、その哨戒能力を持ってしても、発見が極めて困難であるという事実は、ハードウェア以上に、潜水艦乗りの皆さんが極めて優秀であるという証左でしょう。
 そんな潜水艦乗りの皆さんは、意外なほど面白い方たちが多いのも特徴です。海上自衛隊の水上艦艇乗りの方たちから見ても、潜水艦は謎に包まれていて、乗員さんは変わった人が多いという話をよく聞きますが、私の印象ではとにかく、陽気で面白くて、お話好きな人が多いと感じました。潜水艦乗りになるには、まず適性があることは知られていますが、ある部分は同じ「3次元行動」という点でパイロットの適性と近いように感じます。というのも、「パイロットを希望していたのに、潜水艦になった」という話をよく耳にするからです。また、「潜水艦乗りは口が固い」という話もよく聞きます。ある水上艦艇乗りの方から伺ったのですが、同期の潜水艦乗りの方と飲んでいた時、これだけ酔っているならもしかして、と、潜水艦の最高機密である最高深度について訪ねたけども、どれだけ酔っていても絶対に、これだけは教えてくれなかったという話もあります。
 この逸話でも言えますが、潜水艦乗りの方と話していて、同じ海上自衛官といっても、水上艦艇乗りの方と、自分たちとを、はっきりと一線を画しているということを、よく感じることがあります。水上艦艇乗りからすると「同じ海上自衛官」という気持ちがあるようですが、潜水艦乗りからすると、どうも違っているようです。そこが、忍者ならではの用心深さなのかもしれないと思います。
 自衛隊は、陸海空、それぞれのどの部隊でも「自分たちが一番!」という矜持を持っているということを、いろんな方とお話する度に感じるのですが、その矜持がもっとも強いように、私が感じたのが潜水艦乗りでした。潜水艦はその性質から、広報を行うこともほとんどできませんから、その活躍や仕事ぶりを、広く知らしめることもできません。どこで何をしているかも、言うことができません。誰にも知られずにひっそりと、過酷な環境において、少数精鋭で日本の海を護っているという自負が、恐らくあるのではないでしょうか。
 ある潜水艦の教官が「この世には2種類の艦しかない。潜水艦か、潜水艦に沈められる艦か」と言われたそうです。その事を、ある潜水艦の艦長だった方にお話すると、その方は静かに「それは違うな。『目標か潜水艦か』だよ」と言われたのです。この一言に、誇り高い海の忍者たちの、矜持の全てが凝縮されているように感じました。
 そんな潜水艦に身近にふれることができ、潜水艦OBさんたちや乗員さんと気軽にお話できる、貴重な日本唯一の場所が、退役した実物の潜水艦が展示されている呉の「てつのくじら館」です。私自身、呉に行く度に必ず足を運ぶ大好きな場所です。ぜひ、本物の潜水艦を体感してみて下さい。