翔べ!海上自衛隊航空学生 - パイロット人生38年の航跡 -

岡崎 拓生

VP課程「P2V-7」――鹿屋 (2)

 VP課程に話を戻す。
 そういったわけで、操縦の方は基本操縦に各種離着陸の体験くらいでお茶を濁し、すぐに航法の訓練に入る。
 航法とは、早い話が航空機の動きの確認と予測である。別の言い方をすれば、航空機の過去、現在、未来の動きを把握することである。
 まず第一に必要なことは、自分の位置の確認である。出発点が不明では到着点が予測できない道理である。
 位置を求める方法には、次のようなものがある。
 ①目で見て知る。
 ②搭載レーダーで島や岬などからの方位距離を測定する。
 ③航法援助用の無線機器で測定する。(LORAN、TACAN、近年ではOMEGA、SATNAV [衛星航法装置]などがある。それぞれのカラクリは説明すると長くなるので省略する)
 ④複数の地上局の電波(ADF、VOR、各種放送局など)を受信して、その方位線の交点を求める。
 ⑤搭載航法装置による。(ドップラーレーダー、INS [慣性航法装置]などがある。いずれも昭和三十七年当時、P2Vにもすでにドップラーレーダーは搭載されていたが、信頼性はいまひとつであった)
 ⑥天測による。
 ⑦ひとに教えてもらう。(航空自衛隊のレーダーサイトなどで教えてもらえると思われるがこれはきわめて恥ずかしいことなので、生命に危険が及ばない限りやらないのが普通である)

 航空機は空中に浮かんでいる。したがって風の全量を受ける。これはセスナだろうがコンコルドだろうがはたまたカトンボだろうが同じことである。つまり一〇ノットの風を一時間受けると一〇マイル流されるということなのである。そこで風を知ることが正確な航法の大前提になる。
 風は、次のような方法で求める。
 ①実況あるいは予想風を使う。(地点が限られているうえ、実際と異なる場合がほとんどなので、当初の計画にのみ使用する)
 ② 二つ以上の針路で偏流(針路と地上の航跡とがなす角度)を測定して作図により算出する。
 ③無風で飛行した場合の予想到達点と実際の到達点とのずれから逆算する。
 ④搭載航法装置が算出したものを使う。(前出の⑤に同じ)

 朝、たった二人でクラス全員である竹添学生と私は、航法用の七つ道具を詰め込んだカバンと六分儀を抱えて、飛行機に乗り込む。
 エンジン起動、地上滑走開始、離陸。すべてを記録してゆく。ナビゲーターは航空機の行動記録の係でもある。
「まもなく、発動する。スタンバイ…… マーク!(ま、日本語の「ヨーイ、テーこと思えばいい。カッコつけて英語でこう言うのである)」
 悪戦苦闘の始まりである。
 偏流測定。ドリフトメーターなる機体の腹側にのぞいた潜望鏡まがいの装置で、海面の白波の流れ、地上なら地表の景色の流れと機軸線とのなす角度を測るのである。
「白波自体が流れているのに、誤差は出ないんですか」
 座学のときに質問したら、
「海に行って見て来い」
 と、ニベもなくやられた。数日後、実際に見て納得した。動いて行くのは水面の上下動だけで、白波はほとんど移動しないのだった。なるほど、道によって賢し、である。