翔べ!海上自衛隊航空学生 - パイロット人生38年の航跡 -

岡崎 拓生

P2V‐7 (1)

 着任してから幹部になるまでの期間は、2P勤務である。とはいってもたったの三カ月、南国の早い梅が咲いて散り、桜が咲いて散ったら四月である。
 昭和四十年(一九六五年)四月。三等海尉に任官。つまり幹部自衛官の仲間入りである。
 いよいよ機長に昇格するための訓練が始まる。1P練成訓練である。これは主操縦士席(左席)での各種任務を模した訓練及び離着陸訓練で、操縦技量はもとより、クルー指揮、要務処理、判断処置など機長としてのイロハをたたき込まれる。
 機長の任務がどんなものかは2P勤務で見ているので大体わかっているが、やはり一番の難関は離着陸である。
 P2V‐7は決して操縦の難しい飛行機ではないが、いざ着陸となるといやな特性が出てくる。とにかく機首が重いのである。
 着陸するときは、飛行機が接地点に近づくにつれパワーを減じて速力を殺す。すると機体に沈みが生じるので機首を起こしてこれを殺しつつ、失速寸前の速力でトンと接地する、というのが一般的な着陸のノウハウである。
 P2Vの場合、機首が重いのでこの機体の沈みに応じて機首を上げる操作が難しいのである。むろんその辺は設計者も百も承知と見えて、バリアブル・キヤンバー(略してバリカム)という独特の装置が取り付けてある。
 エレベーター(昇降舵)で足りないぶん、水平尾翼の後ろ半分も動かしてやろうという装置である。これを操縦桿についた小さなスイツチで操作する。
 通常の飛行中も、これによって後部が重い、機首が下がるなどのとき釣り合いをとる。この場合の使用量はせいぜいスイッチに、ツンツンと触れる程度であるが、着陸の場合は進入中に徐々にアツプ側にとってきて最後の接地直前の引き起こし時に、ツーとアツプ側一杯になりきるように操作しなければならない。
 つまり結果と同様に過程も重要なのであるが、特に最後のツーが引き起こし操作とうまくマッチングしないと、きれいな着陸にならない。
 遅れると機首が上がりきらず落下着陸になったり、最悪の場合は前車輪から接地して跳ね上がったところに主車輪が接地して機首上げの姿勢で機体は中空に舞い上がる。しかし機速が小さいので次の瞬間には機首が下がり始める。再び前車輪から接地して…… 「ポーポイズ」と呼ばれるはなはだ危険な状況に陥ることになる。
 逆に早すぎると、まだ機速があるうちに機首が上がってしまい、機体はフワーンと上昇して接地帯をはるかに飛び越えてしまうことになる。「バルーニング」と呼ばれる状況である。
 それでも慣れてくれば、飛行姿勢や速力に合わせてほとんど無意識のうちにスイッチを操作できるようになる。