翔べ!海上自衛隊航空学生 - パイロット人生38年の航跡 -

岡崎 拓生

P2V‐7 (2)

 着陸にもいろんなバリエーションがある。
 油圧系統故障でフラップが操作できないときのノーフラップ・ランデイング。フラップを出していない場合は失速速度が大きくなるので、アプローチの速度も大きくする。そのぶん舵はよく効くが、機首角度の微妙な操作が必要になる。
 滑走路手前に障害物があるときに、大きな降下角度で着陸するハイアルティテュード・ランディング。
 滑走路が短いとき進入速度をできるだけ小さくして行なうショートフィールド・ランデイング。この着陸は最小速度で滑走路の手前端ぎりぎりに接地しようとするので、失敗すると手前の草地に接地する恐れがある。
 私自身も、この練成訓練中に草地にドシャンとやつてしまい、運悪く雨上がりで地面が柔らかかったため、胴体下のレーダードームを損傷して、整備幹部にこっぴどく叱られたことがある。
 少し脇道に入るが、手前に接地してしまうのを、我々は「イモ掘り」(かっこつけて「ショート・ランデイング」という言い方もある)と称していたが、当時はこれが珍しくなかった。
 低いパスで進入した場合、機首が重いという操縦特性もあいまつて、思わぬ降下率の変化に対応しきれないで、手前に接地してしまうのである。
 大抵は口を拭ってそ知らぬ顔をしているのだが、
「今日誰かイモ掘りをやったろう。滑走路手前に三〇メートルも溝が掘ってあったぞ。滑走路の上にもダンプカーが要るほど泥が上がってる」
 フライトから戻った古参パイロットが、みんなの顔を見回す。
「さあ、隣の飛行隊じゃないんですか」
 などと空とぼけて済むこともあるが、大抵は、タイヤについた泥だの、着陸順序にしたがって痕跡があったかどうか、子細に聞き取り調査をやるお節介が出てきたりして、犯人が割れてしまう。
「すみません。自分です」
「スコップを持って、滑走路の泥を処分してこい」
 それで済んだおおらかな時代であった。私の場合のように、機体に損傷を生じるのは例外中の例外で、丈夫な脚機構と高圧タイヤのおかげで機体を傷めることがほとんどなかったことと、航空部隊そのものがまだFOD (FOREIGN OBJECT DAMAGE: エンジンに飛び込むなどして航空機に被害を及ぼす異物)に対してそれほど神経質でなかったこともある。
 米軍で生まれた、「航空安全」という言葉に総括される組織的、計画的な安全管理、細心でシビアな考え方に基づく事故防止活動などが、海上航空部隊に定着しはじめるのはいま少し後のことになる。