翔べ!海上自衛隊航空学生 - パイロット人生38年の航跡 -

岡崎 拓生

計器飛行課程「SNB」― 上石国 (1)

 岩国基地は、現在でもそうであるが米海兵隊の基地である。そこに店子のようなかたちで米海軍の部隊とわが海上自衛隊が同居していた。
 海上自衛隊の部隊は、飛行教育を統括する教育航空集団司令部と岩国教育航空群である。
 我々が計器飛行課程の教育を受けることになる第二〇二教育航空隊は岩国教育航空群の所属である。
 岩国所在の自衛隊部隊は、その後航空自衛隊が加わり、やおら海上自衛隊が宇都宮基地に移動し、次いで今度は航空自衛隊が出て行って、入れ代わりにまたまた海上自衛隊が戻ってくるという、どの辺の事情によるものか、ややこしい動きを見せる。
 二〇二教空の方も、いったん教空団司令部と共に宇都宮に移動し、さらに教空団司令部が千葉県下総基地に移動するのに伴って徳島基地に移動して、ようやく腰が落ち着くことになるのであるが、それは後年の話である。
 ともかく、当時の岩国基地。
 エプロンには米海兵隊、海軍のA3Dスカイウォリアー、F8Uクルーセイダー、F4Dスカイホークその他の小型ジェット、対潜哨戒機P2V‐5 (海上自衛隊のP2V‐7より旧式なのである。これはちょっと嬉しかった)が並び、滑走路を挟んで海側の飛行艇基地にはP5Mマリンの姿が見えている。
 さてわが海上自衛隊の航空機はと見れば、あるある、赤と白のツートンカラー、見るからに旧式とわかる尾輪式双発のSNBツインピーチが十数機、けっこう威張ってエプロンの一隅を占拠している。これが我々がこれから乗ることになる飛行機である。

 ここでは一クラスが四人で、私はVA・一一六期(「VA」がどこから来たのかは、いまひとつよくわからない)ということになり、ともかく教務が始まった。
 例の如く、基本的な操縦操作から始まって、離着陸ができるようになるまでが第一段階である。
 尾輪式はさきのSNJに続いて二機種めなので、それほど面食らうこともなかったが、操縦席が横にならんだいわゆるサイドバイサイド方式は、自分の席が航空機の中心線から外れた位置にあるので、少し勝手が違う。ついつい機首が自分の座っている座席の側に振れてしまうのである。
 またこの飛行機、面白いことに主脚が前後に少し動くのである。尾輪式なので、当然ブレ―キは左右交互に使う。だから地上滑走のときは、ブレーキを使う度にヨチヨチと脚が動いて、まるで歩いているように見えるのがユーモラスである。
 それでもやはり尾輪式は尾輪式、方向保持には神経が必要で、この年一月末にも、着陸時に回されて滑走路を飛び出し、飛行場わきのテントに突っ込む事故が発生している。
 この事故には、誘導路の側で待機についていた消防中の米兵が、自分に向かってくる飛行機に仰天して、
「ノーモア カミカゼ!」
 と叫んで逃げ走ったというエビソードもついているのだが、真偽の程はわからない。

 無事離着陸のステージを終えると、次の段階、基本計器飛行に人る。計器だけを頼りの上昇降下、旋回などの訓練である旋回は標準旋回、毎秒三度、三六〇度をきっかり三分間で回る。上昇降下は通常毎分五〇〇フィートの割合。上昇旋回、降下旋回になると両方の組み合わせになるわけで、最初はまるでいけない。