翔べ!海上自衛隊航空学生 - パイロット人生38年の航跡 -

岡崎 拓生

訓練・戦術・応急出動 (5)

 対潜戦術
 海上自衛隊航空部隊の表芸は、なんと言ってもASW (対潜水艦戦=対潜戦)である。
 ここで、P2V-7華やかなりし当時のASWの状況を中心に、以後の戦術の変遷などにも触れながら述べてみる。
 潜水艦による敵の水上部隊や商船の攻撃という作戦は、第一次大戦におけるドイツのUボート群によって、その脅威が一躍クローズアップされた。
 一方、航空機による対潜哨戒の有効性については、マリアナ海域での米哨戒機による日本海軍潜水艦部隊に対する作戦の成功で、注目されることになったといっていい。
 第二次大戦終結後、科学技術の発達によって潜水艦、対潜航空機の両者とも著しい進化を遂げている。
 昭和四十年代初めの当時、世界の第一線機であったP2V‐7も、現在のP‐3Cに比較すると、その能力にまるで子供と大入ほどの差がある。特に水中音響の探知、識別及び情報処理能力の面では比較にもならない。
 対潜戦は通常、①広い海域を捜索し探知を得、②追尾して位置を特定し、③攻撃する、という段階をたどる。
 ごく近距離で露頂している(水面上に艦の一部分を出している)潜水艦を探知、潜水する暇を与えず上空に到達して攻撃を加える、いわゆる「とっさ攻撃」という、探知から攻撃に直結する場合もまれにはあるが、それは例外である。
 まず捜索の段階。
 航空機はその最大の特性である機動性を発揮して、広い海域の哨戒に当たる。
 その場合の探知手段として最も古いものは、いうまでもなく眼である。思い違い、カン違いを別にすれば最も信用できる確認手段でもある。
 次いでレーダー。P2Vのレーダーアンテナは、胴体下に取り付けられた大きくて不格好なドームの中に収まっている。胴体から横に張り出しているばかりか、地面に届きそうなほど下にも膨らんでいる。
「P2Vは飛行時間が長いですから、飛行中にあそこで風呂を沸かして入るんです」
「なるほど……」
 と本気にして感心した人もいた。
 商船のようなものならともかく、潜望鏡のような小さな目標を探知するには、熟練が必要である。
 ベテランのレーダーマンになると、スコープ上で映像の大きさや輝度から潜望鏡を見分ける。またごく小さな物、たとえば漁網につける球形のブイや、潮目(潮流や水温の違う海水の境界で、漂流物などはここに沿って集まることが多い)に浮かんだ板切れまでも探知することができる。
 レーダーマンの誘導で上空に来て、眼を皿にして探すが何もない。
「何もないぞ」
「いや、何かあるはずです。まだスコープに映つています」
「見当たらないな。ま、潜水艦なら潜るはずだし、まだ映っているんなら別の物だな」
 前部の見張りから声、
「ありました。小さな板切れです」
 と、こんなことがよくあつた。
 潜水艦を捜索するうえでの、レーダーの泣きどころは海面の反射である。