翔べ!海上自衛隊航空学生 - パイロット人生38年の航跡 -

岡崎 拓生

訓練・戦術・応急出動 (6)

 レーダー波が直角に近い角度で海面に当たると、反射波がスコープに自く映る。小さな物だとその中に隠されて見えなくなる。航空機に近い部分ほどレーダー波と海面のなす角が直角に近くなるので、反射が多くなる。また波が荒いと水面が部分的に傾斜するわけで反射も多くなる。
 したがって、他の捜索機器との兼ね合いはあるが、波の穏やかなときは捜索高度を高くとり、波の荒いときは若干低くするのが普通である。
 こちらが探知できるのは、潜水艦が一部を海面上に出しているときだけであり、そのときは潜水艦も航空機のレーダー波を探知する装置を働かせているわけで、レーダーを回しっぱなしだと、こちらが探知する前に潜られてしまう。
 なぜならレーダーは、相手に反射して戻って来た電波をキャッチするわけで、探知距離は電波到達距離(相手が電波をキャッチできる距離でもある)の半分になる。
 そういうことで、レーダー捜索では間欠使用といって不規則な間隔をおいて短時間ずつ使用するのが一般的である。相手の気づかぬうちに間合いを詰めようというこんたんである。
 P‐2Jは、エンジンをピストンエンジンからターボプロップに変えただけで、機体は基本的にP‐2Vのものを継承しているが、レーダードームはずいぶん小さくなって、スマートに見える。
 P‐3になると、胴体の前と後にそれぞれレーダーアンテナがあって、前方と後方の見張りを分担している。スコープ上で画像を合成して、全周を一つの画像として見る。
 探知の手段として次に挙げられるのがECM (逆探)である。相手の発射した電波を捕らえて、その周波数や特性から、発射したのが何者かを特定する。
 一回だけの探知だと方位しかわからないが、別の位置で同じ電波を受信できれば、その二本の方位線から位置が求められる。ただし地上局や商船ならともかく、隠密性を身上とする潜水艦がそんなに頻繁に電波を出すはずはないので、あまり期待はできない。
 その上に、電波を出す機器の種類は千差万別で、ECMの探知は「あっちの方に何かがいる」という程度の、情報の切れっ端にしかならない場合も多い。
 P2Vの時代の、広い海域で初探知を得る手段はこんなものであったが、実は昭和四十年代初頭のこのころからソノブイがその手段として登場してくる。
 音波も光と同様に、周波数が低い、つまり波長が長いほど遠くまで届く。潜水艦の立てる音のうち、低い周波数に的を絞ることで、探知可能な距離が飛躍的に伸びたのである。
 これによって広域捜索の主役の座は、レーダーから次第にソノブイに移ってゆく。なんといっても哨戒機の存在を相手に気どられにくいということが主要な理由である。
 もっとも音源の方向はわからないので、探知距離が伸びれば伸びるほど、探知した場合に潜水艦の存在圏が広くなってしまうというジレンマがある。そこで、二本、三本のブイの探知を比較検討して範囲を限定するという方法をとるが、やはり繁雑で正確さに欠けることは否定できない。
 やがて音源の方向が測定できるブイが出現する。二本のブイに探知が得られれば、その方位線の交点が潜水艦の位置というわけである。位置の誤差は方位誤差の範囲である。
 潜水艦らしい探知があった、というところから話を次に進める。
 何はともあれ、その場に急行することは言うまでもない。
 ただし、ビッタリ潜水艦の上空に到達できるわけではない。探知以後の相手の移動量に位置の測定誤差と航法誤差が加わって、調査を必要とする範囲はけっこう広いものになる。
 いずれにせよ、こちらが上空に行くまで潜水艦は待っていてはくれないので、現場付近にはなんの影も形もないのが普通である。ときには、なんだ漁船だったか、ということもある。
 一般的にはここでソノブイ戦術が始まる。P2V時代、それも比較的早い時代のソノブイ戦術は、今の搭乗員諸君に聞かせると笑われそうである。
 まずここぞと思う所に、ソノブイと発煙筒を投下する。ソノブイには小さなランプがついているが、昼間はまったく見えないので、発煙筒は投下位置を表示するためのものである。
 さらに、その周囲を旋回しつつ、東西南北にソノブイと発煙筒を投下する。P‐3では、すべてスコープ上に表示されるので、発煙筒などは無用であるが、当時は時間が経過するにつれて海面のそこら中が発煙筒だらけ、どのブイがどこだか判別に苦労することも多かった。
 この時期、通常に使用するソノブイは、単に聴音するだけの機能しかない。したがって、このブイ、あのブイの感度を比較して、位置と針路を推定する。速力は、ストップウオッチ片手にシュッシュッというスクリュー音を数えて割り出すのである。