特定非営利活動法人 平和と安全ネットワーク

 
 
 
 
 
 


ジェネラル・オカモトの小部屋

『普天間基地』移設問題の背景
―在沖縄米海兵隊はなぜ部隊を縮小再編したのかー
 

 皆さん今日は。「ジェネラル・オカモトの小部屋」第8回目の配信です。
昨年9月に鳩山政権に移行してから、いわゆる『普天間基地』の移設問題が、国民の関心事項となっております。
また日米関係も、去る1月19日が新日米安保条約調印50周年にあたっていたのですが、日米両国政府はその記念日をクールに捉え、日米安全保障協議委員会の共同発表のみで終始しました。
そして現在でも日米関係は、この問題を巡ってギクシャクした関係がクローズ・アップされ顕著になりつつあり、鳩山首相が約束した5月末までのこの問題の解決が本当に可能なのか、議論が沸騰しているところであります。

今回はこのような状況を踏まえて、『普天間基地』移設問題の背景を詳細に解説することといたしました。
本来ならばRMA―Revolution in Military Affairs―の解説を開始するところでしたが、『普天間基地』移設問題の背景説明も結局のところ次のテーマとしようとしていたRMAに関連するので、編集局からの指示に従って『普天間基地』の問題をRMAに先立って解説することといたします。

さて、『普天間基地』移設問題は、次のような3つの要因が重なっていると考えます。 すなわち、 まず、第一に、沖縄に米軍に供与する施設・区域が集中しているということ。事情通に言わせれば、日本国内の米軍使用施設・区域の約75%が沖縄に集中していると言われております。
日本国政府としては、これをなんとか日本のその他の地域に分散して負担の軽減を図りたいという希望がある。

その第二は、『普天間基地』が既に住宅密集地域の真ん中に存在しており、航空機事故も発生して、住民に悪い影響が出始めているということ。『普天間基地』のほうが、開設は歴史的にも古く当時は基地周辺に一般住宅が少なかったことは事実なのですが、現実はそのような議論を無にするほど、住宅の密集程度は深刻な状況となっていることです。

第三は、実は、米国の軍事分野における大きな変革が、米国の国家軍事戦略のなかで前方展開基地の必要性を軽減する方向を示しているということです。この事実は、移設問題を解決する上で、プラスの要素となる極めて重要なことなのです。

このような3つの要因のうち、第三の内容が明確でないことがこの問題の不透明性を増しているとの認識から、このことについてはじめに少し詳しく説明することといたします。


ボーイング社提供
 さて、皆さんは、上のチャートは何だと思いますか?そう、無人機ではなく、爆弾なのです。
今日の爆弾は、このような形態となっているのです。この爆弾はJDAM―Joint Direct Attack Munitions--の発展型なのですが、詳細については次のテーマの中で詳しく説明することといたしますが、現代の爆弾はこのようになっている。
その理由を探るためには、約30年前に戻らなければなりません。

1980年代の中ごろ、米空軍の現役将校・ジョン・ウォーデン中佐(当時)は、爆弾を衛星で誘導することが出来ないかと考えました。
その結果、JDAMという爆弾が開発され、1989年の湾岸戦争では全爆弾使用量の3%が衛星誘導爆弾となりました。JDAMはそのときは開発中であったのですが、実用試験をかねて使用したところ、すばらしい命中率を示したわけです。
米国はその結果を踏まえてトランスフォーメーションを開始いたします。いわゆる軍事分野の改革・変容です。

JDAM爆弾を誘導したのは、GPS―Global Positioning Satellite―でした。
こうして米国は、トランスフォーメーションの具体的な第二段階に入ります。それが米陸軍の変容でありました。

空中からの衛星誘導爆弾が正確に敵目標を撃破するのであれば、陸軍は機動展開する際に、重量級の榴弾砲とか加農砲を持って展開する必要はないのではないか。
また、戦車も重量級のものより軽量のストライカー戦車としたほうがよいのではないかということで、米陸軍のトランスフォーメーションが始まりました。
軽量な師団であれば、前方展開を命令されても、空中機動力を利用して至短時に目的に移動できますので、あらかじめ前方に配置(Forward Presence)されている部隊は米国本土に戻してもよいのではないか、そのほうが隊員たちは家族と一緒に住める機会が多くなり、また、家族の消費も米国内で行われることから米国経済の一助ともなる、それにたとえ作戦上の要求から、緊急に前方展開(Forward Deployment)する必要が生じた場合でも、軽量な師団、あるいは旅団化された部隊の移送は、至短時に可能であるように部隊を変容すればよいのではないかということになったわけです。

以上のような背景をうけて米海軍大将であったアーサー・セブロウフスキーOFT(Office of Forces Transformation)室長は、2004年2月26日の議会証言で、次のように説明しました。
Another emerging reality is the political and military vulnerability of forward garrisoned forces. Consistent with the comprehensive global force posture review, we expect to see our forces increasingly favor operational maneuver from strategic distances and operational maneuver from the sea. Combined with the migration of conflict to complex and non-contiguous battlefields, this compels development in these essential areas- high volume, high speed lift and mobility assets to support both immediate and rapid power projection from strategic distances; a new model for sea power generation; new joint vertical lift; and, new concepts for logistical sustainment that tear down the stovepipes separating operations, intelligence and logistics.

すなわち、「前方に展開して駐留する部隊は、もはや政治的にも軍事的にも脆弱性を示す状況となっている」ということです。そして「部隊はいまや、戦略機動が可能となり、本土から迅速かつ即時に戦力を投射できる時代となっている」ことを指摘したのです。

これに先立つ2003年、ラムズフェルド国防長官(当時)は、以上述べたような変容が軍事分野で起きていることをいち早く認識し、韓国の盧武鉉政権(当時)からの要請もあり、「2003年にソウル以北の米軍を移転させるとともに、2016年には全在韓地上軍を撤退させる」と言明しました。
具体的には、37500人の在韓米陸軍部隊のうち、当初、12500名を帰還させ、その後、25000名を2度に分けて撤退させて、最終的には全面撤退するという方針を示したわけです。

しかしながら現在の李明博大統領は、米陸軍の全面撤退方針の見直しを米国に要請し、結果的には25000名の米陸軍が韓国に駐留を継続することで決着しました。
これは、RMAの結果としては、前方駐留は時代遅れであるということですが、政治的には、平時の抑止力として前方駐留することに意義があるとする米国防省の意向が働いたと考えられます。李明博政権もまったく同様の認識で、米陸軍の駐留の継続を受け入れました。

他方、それならば沖縄からの米海兵隊の撤退については、日米間にはどのような話し合いがあったのでしょうか?残念ながら、具体的な説明は我々には届いておりません。
米海兵隊を7000名撤退させるとか、これを8000名にするといった具体的な数字が示されても、日本政府からの特別な反応はなく、昨年のグアム協定では、約8000名の米海兵隊員及び約9000名のその家族のグアムへの移転という内容が示されているだけで、その穴埋めとして、沖縄における陸上自衛隊を増強すべきといった議論などはありませんでした。

しかしながら数的な分析からすれば、過去に1万2800名の米海兵隊要員が沖縄に駐留していたのですから、約8000名の海兵隊員が移転したとしても、まだ約4800名の隊員は沖縄に駐留を続け、RMAの成果を反映した小規模な海兵隊であっても平時の抑止力を形成するとともに、緊急時の迅速展開態勢を取ることが出来るであろうことは明確であります。
繰り返しますが、RMAの成果を踏まえた海兵部隊であれば、約4800名の部隊規模であっても、有効な対応が可能な旅団規模の緊急対応部隊を維持することが出来ると考えたわけです。

このような経緯から東アジアには、韓国に米陸軍が2万5000名、沖縄に4800名の米海兵隊が駐留し、東アジアの平和と安定のための礎(いしづえ)として存在することが、米国家戦略として採用されたわけです。
そしてまた、このような趣旨の米軍部隊の再配置が、欧州その他を含む世界全体で実施されているのが現状です。米国内においても軍隊の再配置施策は例外ではなく、ブッシュ大統領は2005年9月16日に「2005 Base Realignment and Closure Commission's report」を議会に提出するとともに、米国内における基地再編計画:BRAC(Base Realignment and Closure)を開始しました。

“Air Artillery”の出現による米空軍ドクトリンの見直し、すなわち、「Suppress Enemy Air Defense」「Counter Air」「Close Air Support」「Air Interdiction」といった任務区分から「Counter Space」「Counter Air」「Counter Land」「Counter Sea」という任務区分への移行、陸軍の編制の見直し、米海軍の編制の見直し等、その後の米国におけるトランスフォーメーションは、順調に進捗しているところであります。

米国におけるトランスフォーメーションの内容は、決してこれまでに指摘した分野のみではありません。
前頁に示したチャートのように、コンピュータ及びそのネットワークが生み出した「情報の共有」という事実が推進した、ネットによる先頭サイクルの統合、作戦速度の革命的迅速化、それにより現実となったParallel Warの実現、果ては軍事予算の効率的運用等を含む軍事分野での改革を含むものであることは、次の課題として説明を進めることとして、とりあえず、次回は『普天間基地』移設問題の話を進めていきます。

さて、最後になりましたが、去る2月1日に米国防省報告2010年「4年毎の国防見直し」(QDR2010)が公表されましたが、折角ですのでQDRに示された日本関連事項を添付して、皆さんの関心にお応えしたいと思います。

(1)北東アジア地域
In Northeast Asia, DoD is working closely with key allies Japan and the Republic of Korea (ROK) to implement our agreed-on plans and shared visions to build a comprehensive alliance of bilateral, regional, and global scope; realign our force postures; restructure allied security roles and capabilities; and strengthen our collective deterrent and defense capabilities. These changes will firmly position these alliances for the 21stcentury security landscape and ensure their enduring strength, readiness, and resilience for the future.
(2)日本との連携
With Japan, we will continue to implement the bilateral Realignment Roadmap agreement that will ensure a long-term presence of U.S. forces in Japan and transform Guam, the westernmost sovereign territory of the United States, into a hub for security activities in the region.

以上 



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