特定非営利活動法人 平和と安全ネットワーク

 
 
 
 
 
 


ジェネラル・オカモトの小部屋

『グアム島における軍事建設』

―米国の国家軍事戦略をグアムに観るー
 

 皆さん今日は。ジェネラル・オカモトの小部屋・第9回目の配信であります。
前回は空飛ぶ砲兵(Air Artillery)の出現が、米国軍隊のトランスフォーメーションの引き金になり、米国はもちろんのこと、他の先進諸国においてもRMAが進捗していることを説明いたしました。
今回は前回に続き『普天間基地』移設問題の第2弾として、それでは、グアム島では現在、どのような変化が起きているのか。米国はグアムをどのように国家戦略・国家軍事戦略に位置づけようとしているのか。グアムと沖縄は、どのような連携が確立されようとしているのかなどについて、お話を進めて行こうと思います。

 ラムズフェルド国防長官(当時)が、2003年にはソウル以北の米軍を移転させ、2016年には全在韓地上軍を撤退させると言明したことは、すでに前回に説明したところでありますが、ラムズフェルド国防長官がそのときに示した基本構想を更に詳しく説明すれば、米軍再編の基本的な考え方(配備展開)とは、「10−30−30戦略」であるということであります。

すなわち、米軍は米本土から離れた戦域に「10日以内」に展開するとともに、敵を「30日以内」に撃破し、その後「30日以内」にその他の地域に機動展開して戦闘可能な能力を持つ。
そのような能力の獲得を目標とするということでありました。

そしてその「基本構想」を具現化する具体的な前方展開基地は・・・。
@大規模な兵力・装備が展開できる戦略展開拠点(PPH/Power Projection Hubs)
A部隊の根拠地として作戦を実施することが出来る主要作戦基地(MOB / Main Operating Bases))
B主要作戦基地の前方に位置する前方作戦拠点(FOS / Forward Operating Sites)
C恒常的には使用しない安保協力のための拠点((CSL / Cooperative Security Locations ) などに区分されるとし、引き続き次のように述べております。 
@ 最も重要な戦略展開拠点は、アジア・太平洋方面においては、日本、グアム、ディエゴガルシアです。
A グアムは米国領(準州)であり、ディエゴガルシアはイギリスからの租借地であるので政治的安定性があり、戦
力的にも好位置にあります。 ということでした。

それでは、このうちのグアム島について、その戦略的価値を検討してみることといたしましょう。

 グアム島は、船舶の輸送時間を参考に説明しますと、ハワイまでは約1週間、米本土までは約2週間、沖縄までは約3〜4日間の位置にあります。
また、現在中国海軍が潜水艦基地を建造中である海南島、あるいは台湾までは、2〜3日間で移動が可能な、東アジア・西太平洋地域の実に緊要な位置にあることがお分かりいただけると思います。
しかもグアム島は、米国の施政下にあり、隊員たちの消費は米国内で行なわれることから、国内経済の活性化の一助になるとも考えられております。

そのような戦略的価値を有するグアム島を、米国はどのように軍事建設を行って、21世紀を見通す米国家戦略を全うする軍事拠点としようとしているのでしょうか。
筆者がグアム島研修時に受ける機会を得たコマンド・ブリーフィングを元に、話を進めていきたいと思います。

グアム島における戦力増強計画の概要。
@ アンダ−セン空軍基地の管制塔が改築され、6機のB−52を常駐させる。
A グアムのアンダ−セン空軍基地(とディエゴガルシア)にはB−2ステルス爆撃機の空調型格納庫があるので、ローテーション配備の措置を取る。
B グアムのアプラ港は、2001年から攻撃型原子力潜水艦が3隻配備され、母港とし、あと3隻が追加配備され、6隻に増強される。
C 新たな整備施設や住宅が建設される。空母の母港化の準備(西太平洋での常時2個の空母打撃軍の展開)を目指して、海兵隊の配備、事前集積船の配備も。新型のFA−22戦闘機部隊の配備や米海兵隊(遠征部隊)の駐留も予定する。 であります。

さらにその詳細を米国からのコマンド・ブリーフィングから引用すれば、米海軍は第7艦隊の哨戒航空部隊を配備するとともに、HSV−High Speed Vehicle−やLCS−Littoral Combat Ship−を配備して、沖縄その他への迅速な展開を可能にする体制及び態勢を確立する。
このため兵員は4350名から5600名に増員するため、兵員家族も5230名から5280名に増大すると見積もっております。

米陸軍は、現在の兵員30名から兵員600名に増員し、これに伴う家族を50名から900名と見積もり、特にペトリオットPAC−3を配備して対空防衛力を強化するとしております。
また350名の特殊作戦部隊を新編し、その家族630名を受け入れるとしております。
米空軍は、前述のほか、無人機・グローバル・ホークを常駐させて、西太平洋方面の警戒飛行を実施させるとのことでした。これら要員を含み米空軍は、現在の1930名から4560名への兵員の増強とこれに伴う家族を受け入れることとなるようです。

準軍隊ではありますが沿岸警備隊は、現在は委員されている140名の規模を30名増員することとしております。
さて最後になりましたが、米海兵隊については、現在5名しか常駐しておりませんでしたが、沖縄から8000名、ならびに、本土から2000名の兵員をグアムに集中し、これに伴う家族を受け入れる予定となっております。
そしてまた、グアム島には現在約10万人の住民がおりますが、そのうちの約14000人が軍人であったものが、2014年には約3倍の42000名になるということでした。

以上がグアム島の戦略的価値及び同島における米国の軍事建設の概要でありますが、先に少しばかり説明しましたように、海南島における中国・人民解放軍の軍事建設をあわせて考察すると、また、新たな分析が可能となります。

 現在海南島では、大規模な軍事建設が進行しております。
人民解放軍の海軍は、北海艦隊(司令部:青島)、東海艦隊(司令部:寧波)、そして南海艦隊(司令部:湛江)に区分されますが、このうちの南海艦隊には、潜水艦部隊、駆逐艦部隊、両用戦部隊、陸戦隊旅団が編成されており、特に海南島には潜水艦部隊が配置されているようです。
海南島からの潜水艦運用は、他の艦隊に比較して中国の大陸棚の影響を局限することが出来、離陸後まもなく深水域に入ることが出来るので、行動の秘匿が容易であるため、楡林海軍基地では晋級(094型)原子力潜水艦停泊のための桟橋が建設されつつあるとともに、そのための支援施設等も建設中であります。

海南島・楡林海軍基地からは、台湾とフィリピン間のバシー海峡を抜けることが容易であるし、領有権争いが続く南沙諸島にも近いという、戦略的に重要な位置を占めています。
また、インド洋からマラッカ海峡を経て中国本土に向かう中国のシーレーン防衛にも欠かせない戦略拠点であることもあり、中国人民解放軍はその整備を急いでいるわけであると考えられます。

これに加えて近年、米国がグアム島における軍事建設を開始するという観点からすれば、海南島は、伊豆諸島から小笠原諸島、グアム島、サイパン島、パプアニューギニアに至る第二列島線を扼するための重要な拠点ともなるわけであり、われわれは、米国が推進する軍事建設に加え、中国海軍が推進する軍事建設の両方の動向に注目しつつ、観察することが緊要であるように思います。

最後に誤解を避けるために、もう一度、少しばかりRMAについて言及させてください。
筆者はRMAの一面を航空戦力の運用面からの変革を中心に話を進めてきましたが、実はRMAは、コンピューター導入およびネットワークの確立による情報・通信分野における変容、作戦遂行のネットワーク化によるパラレル・ウォー(同時並行的な作戦の実施)を可能とする変容、あるいは、コンピュータ・ネットワークを巡るサイバー戦を主体とする変容、作戦面での無人化推進を中心とする変容等々、広範な分野からの考察を必要としますので、その詳細は次のテーマとして徐々に説明していくことといたします。
それに、RMAと米国が使用するターミノロジーであるトランスフォーメーションは、その概念に少しずれがあり、RMAの方が広い概念であり、その根威容を含む米国におけるRMAが、トランスフォーメーションであると理解していただければ、大きなずれはないと考えます。

次回はいよいよ、『普天間基地』移設問題そのものについてであります。

以上 




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