山下塾 第1弾総集編

山下 輝男

阪神淡路大震災

 阪神淡路大震災は、戦後最大の災害ではありますが、今後発生が予想される首都直下地震に比べれば、被害地域が比較的狭く、被害の程度も少なく、何よりも首都中枢機能が健在であるという特色があります。
とは言え、阪神淡路大震災から我々は多くのことを学ぶことが出来ます。

そういう意味において、阪神淡路大震災を簡単に振り返って見たいと思います。
私は当時阪神地区を管轄とする陸上自衛隊中部方面隊の総監部の防衛部長でした。防衛部長は災害対処等の主務の方面総監の幕僚です。
 兵庫県南部地震がどういうものであったのか、発災直後の状況をビデオで御確認下さい。
当時私は、伊丹市の自衛隊官舎に住んでいましたが、強い揺れで飛び起きました。幸いなことに大した被害はありませんでした。

精々飲みかけのウィスキーのボトルが飛び出して割れた位でした。
小生の上司である方面総監の官舎の被害はテレビ台が飛んだり、手水鉢が数メートルも移動し、大事な陶磁器類が粉々になったとのことでした。
総監は単身赴任で、奥様は伊丹に来られた際には総監の横に寝ておられるようですが、地震が起きて、丁度奥様の顔の付近にテレビが飛んできたようです。

 私の場合は、これはとんでもないことが起きたと、割れたボトルの後始末もせずに、着替えて徒歩で直ちに登庁し、6時前には作戦室に着きました。
作戦室も、電気は消え、水道から水が噴出し、大変な状況でした。
運用当直を指揮しつつ、直ちに状況把握に努めました。

方面航空隊長と訓練名目での偵察飛行に関する打合せをし、総監部及び方面全部隊に対する非常勤務態勢を命ずる行動命令を起案して、総監の電話決裁を貰おうと電話したのですが、通じません。
呼び出し音は鳴るのですが、総監は電話口に出ません。
最悪のことを想定して防衛課長を総監宅に向かわせました。

総監はご無事であり、非常勤務態勢移行に関する行動命令の決裁を頂き直ちに発令しました。時に、6時半頃です。
総監宅の電話機の上に色々な物が被さり電話は鳴れども取れずという状態だったようです。
 それでは、発災直後の状況を確認して下さい。
 阪神淡路大震災の概要はVGの通りです。先程の首都直下地震と被害の差異はどうでしょう。
 私共が中部方面隊が実施した災害派遣について簡単に説明します。
発災直後は地元部隊である第3師団を中心に人命救助を主体とし、当日夕方に方面内他部隊からの増援を決定し、深夜の作戦会議においてた方面隊の支援を得て方面隊全力による災害派遣を決し、命令を発しました。
この災害派遣を私はVGの様に捉えています。

災害派遣は自治体との協働が一番重要ですが、当時においては自衛隊と自治体との関係は必ずしも良好という訳ではありませんでした。
平素からの連携が希薄でした。また、災害派遣各部隊は、総監の被災者のために出来ることは何でもやれとの御指示に従いVGのような各種活動を行いました。
 約100日間の災害派遣でした。その間、当初は人命救助、次いで生活救援例えば給食給水入浴等に活動が主となり、倒壊家屋の処理にまでを実施しました。
勿論、当初からこのような考えで活動したというのではなく、被災者の状況ニーズを踏まえ、県や市町村と調整して活動した結果がこのような形になったという次第です。
 このVGは、災害派遣の規模を示しています。
人員、車両、航空機等全てにおいて、戦後最大規模の災害派遣です。一日の最大派遣人員は18,000人です。
自隊管理要員も必要ですし、ローテーションの関係もあり、これが最大派遣人員でした。
第一線の現場で作業する者も居りますし、山の上で通信中継に任じている者、司令部要員そして彼らをサポートする部隊と自衛隊が自己完結機能を有しているからこそ長期に亘って災害派遣に従事することが出来るものと思います。
北海道や九州からも中部方面隊の支援に駆けつけてくれました。正に自衛隊の総力を挙げて災害対処に任じたのです。
 陸上自衛隊の災害派遣期間中における支援実績はスライドのとおりです。
特異な支援としてご遺体の空輸があります。被災地内の火葬場も被災して使用に耐える状況ではなく被災地外に運ばざるを得ず空輸依頼があった次第です。

ごみ処理も実は被災者の方々にとっては切実な問題であり、部隊を運用してごみ処理を担当せざるを得なかったという次第です。
時にゴミ袋が破れて隊員が糞尿まみれになったこともあったと聞いております。被災者の方々に最も喜ばれたのが入浴支援でした。
 このスライドは、私共が得た主要な教訓です。
言うまでもなく、災害派遣は自治体との協働作業ですので、連携が重要なのです。元々あまり密な連携がなかったので、特にこのように感じたのかもしれません。

勿論自衛隊自身としてもこの種大規模災害派遣は初のことであり多くの教訓を得ました。私が特に感じたのは地域コミュニティの重要性についてであります。
後ほど具体的に説明致します。
 阪神淡路大震災は都市防災についても実に多くの教訓をもたらしましました。このスライドは、阪神淡路大震災からみた都市防災上の課題を示しています。