山下塾第2弾

山下 輝男

第3回講座 東日本大震災における危機管理(2)第一原発事後後の対応、被害拡大防止対策

 今回は問題点の第二「第一原発事故後の対応」について見てみましょう。
福島原発で勤務し、事故処理に当たっている人達のご苦労には頭が下がる思いが致しますが、それでも猶、問題点を指摘しなければならないし、危機管理上の論点を明確にしなければなりません。

 問題点は二点指摘されています。1号機は古いタイプですが、復水器が正常に機能しておれば大きな問題はなかったのでしょうが、実際には機能していなかったにも拘らず正常に機能していたと誤認識されました。
正常に機能していないことを示す兆候があったにも拘らず、誰しも気付かなかったのです。
疑念を抱いた当直が対策本部に報告・相談を行っていますが、結果的に現状の変更は為されなかったのです。

 3号機においても代替注水に関する不手際があり結果的に重大事故を招いた。

 
 事故発生直後の対処、所謂初動対処は極めて重要であります。被害の極限及び事態の拡大防止の為に適切な初動対処が求められます。

 初動対処として何を為すべきかを適切に判断することは重要ですね。

 1号機及び3号機の対処において指摘されているのは危機対応時の教育訓練が十分に為されていないという事です。原発の安全神話或いは原発の多重防護に依拠し過ぎていたのでしょうか?

 重要な事項を幹部社員の承認なしで実施するというのも如何かなと思います。承認を受ける暇がなかったのかどうかは解りません。いざという場合に誰が何を判断すべきか、病むを得ざる場合にどうするか等々を事前につめておく必要もあるのでしょう。

 以下専門的になりますが、原発の初動対処について詳しく見て見ましょう。
 
 先程来述べているように、初動対処の失敗は致命的です。火事も初期であれば消火も出来るし、小火程度ですむかも知れませんが、初期消火に失敗すると全焼することになるのと同じです。

 原発事故の初動対処は、スライドに示してあるとおりですが、結果的にこれらが実施出来ずに、メルトダウンやめるとスルーという状況に陥ってしまいました。極めて残念です。
 
 5月16日の新聞記事です。ご参考までに。
 
 初動対処に何故失敗したかを具体的に見て見ましょう。非常用電源を備えていたにも拘らず、それらの配置が不適切であり、また防護も十分でなく結果的に機能が喪失しまいました。
そのバックアップとして電源車の確保も為されておらず、確保すること出来なかったといわれています。

 ベントや海水注入の状況もスライドの通りです。
ベントの遅れについて現場は躊躇したのではないかとの声もありましたし、そのような気もしないでもありませんが、事故調の報告書では、そのような確証はなかったと否定しています。

 事故調の判断は準備の絶対的不足ということです。即ち事前対策が全く為されていなかったと断定しているといっても良いでしょう。

  暗闇で、余震が続く中、放射線に留意しつつの作業は大変でしょう。であればこそ十分な事前対策が必要な訳です。 
 
 3号機ではどうでしょうか?指摘されている事項はスライドの通りですが、3ごぷきでも十分に対処可能であったと報告されています。

 ベントについて、現場の所長の判断とシビアアクシデントマニュアルでは規定されているにも拘らず、敢えて大臣命令を出すというのも異常ですね。
現場が躊躇していたのならばあり得るのかもしれませんが・・。現場の状況を大臣が掌握出来ていなかったことが問題なのかもしれません。

 海水注入についても、官邸の判断を慮り、東電本店は躊躇っていたようですが、現場の所長は継続していました。
本店の意向を汲んで注入を中断するかのような素振りをして実際は継続していたといいます。

 現場が司令部の命令を無視したら作戦は成功しないでしょう。然し、現場の状況に合致しない命令ならばどう対応すべきでしょうか?貴方が所長の立場ならばどうしますか?

 12月3日の東電の報告書にはスライドのような記述がありますが、本当にこんな基本的な事が出来ていなかったのでしょうか? 危機管理を全く考慮していないのですね。

 

  海水注入中断問題を報じる新聞報道です
 
 12月3日の東電報告書に対する疑問として読売新聞に掲載されていた事項です。
 現場も本店・政府もパニック状態で何をどうしていいのか解らなかったのでしょうか?
 
 初動対処については国会でも議論されました。その質疑応答を報じる新聞記事です。

首相の原発視察について問題となっていますが、現場に進出する事は重要でしょうが、果たしてこの時点で進出する事が必要だったのでしょうか?
話をすることよりも大局的に国家として何を為すべきかを判断すべきでしょう。
目的は何だったのでしょうか?
その間の情報は漏れなく入手できるようになっていたのか、疑問と言わねばなりません。