山下塾第4弾

山下 輝男

第9回 我が国のテロ対策の現状と課題

第9回 講座

始めに
 第8回までに概観した我が国のテロ対策を踏まえて、今回から、課題と対策について検討してみましょう。
1 テロに関する法制度の整備
 テロの未然防止に関する行動計画等において、テロに関する法制度を検討することとされていましたが、未だに緒にもついていないですね。テロ対策基本法的な包括的な法律が必要です。
 テロ対策基本法には次のような内容を含むべきでしょう。

 

2 国家中央組織について
 テロは国家に対する挑戦です。我が国としてどう対処するかの方針を策定し、方針を示すのは国家中央危機管理組織です。日本版NSCの一刻も早い創設が望まれます。

 

3 緊急事態基本法の制定
 当初からテロと断定できることは先ずあり得ないでしょう。事件か事故か、事件だとしてもそれがテロなのかどうかの判定には時間も要するでしょう。事態が認定されればそれなりの対応をとれるのでしょうが、グレーゾーンあり、事態の推移が急で認定が追い付かない、或は想定外の事態が起きた時等にもシームレスに対応しなければなりません。その様な事態に対応するために緊急事態基本法が必要です。
 我が国は事態が起き、現行法制で対応できないケースには特措法等の法律を制定するか改正する等、云わば泥縄式の対応をしてきたといっても過言ではないでしょう。
 その状況を示したので、次のスライドです。

 

4 テロに係る情報活動について
 我が国の組織は諸外国に比較して縦割り、縄張り意識が強いように思いますが、どうでしょうか?テロに関する情報も各省庁が独自に収集し、必要があれば内閣官房等に報告するようになっていますが、機微な情報が適時に報告され、他省庁等との間で共有されているのでしょうか?国家の各組織だけではなく民間企業等も沢山の情報を持っている筈です。そのような情報をどのようにして集約するかを考える必要もあるでしょう。
 断片的な情報資料の積み重ねから重要な情報が導きだされるのです。
 また、外国が機微な情報を日本に提供するでしょうか?ギブアンドテイクの社会で、日本の情報力の弱さがテロ対策の弱点となっていると思えます。

 

5 現地における指揮・統制について
 危機発生時においては初動対処の適否が死命を決するといっても過言ではありません。特にテロのような多くの関係機関が関係する現場対処では、その関係機関の相互関係をいかに律し、どの様に組織的に活動させるかが重要となります。
 日本の組織文化に即したICSを生み出す必要があります。

 

 これで第9回講座を終わります。次回も今回に引き続き課題と対策について説明します。

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