山下塾第5弾

山下 輝男

第八話「益々増大する国際平和協力活動」

 我が国は、国連を中心とした国際社会が行っている平和と安定を求める努力に対し、日本の国際的地位と責任に相応しい協力を行うため、物心両面の協力を行ってきた。
 特に、冷戦終結後のカンボジアへの陸上自衛隊の派遣を皮切りに幾多のPKO活動が行われ、国際緊急援助隊法に基づく海外への災害派遣も行われるようになり、今ではそれが常態化しているといっても過言ではない。
 更に安倍首相が標榜する積極平和主義もあり、益々日本の果たすべき役割そして自衛隊の活動も質量ともに増大するだろう。
 本稿では、それらを振り返りつつ、これからどのように変わろうとしているのか、今後どうあるべきか等について考えてみたい。


1 国際平和協力業務の概要

 1992(平成4)年6月、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(以下PKO協力法)を制定し、同年のカンボジア暫定機構(UNTAC)への陸上自衛隊の派遣を皮切りに、モザンビーク、ルワンダ等々12件のPKO派遣、5件の「人道的な国際救援活動への協力」及び8件の「国際的な選挙監視活動への協力」を行ってきた。
 また国際緊急援助隊法(JDR法)に基づき、被災国や国際機関の要請に基づき国際緊急援助活動を行ってきた。更には、イラク特措法やテロ特措法、新テロ特措法に基づく人道復興支援等の活動をも行ってきた。
 また、ソマリア沖やアデン湾での海賊行為から付近を航行する船舶を護衛する為に、当初は海上警備行動により、海賊対処法が成立後はそれに基づき水上部隊及び航空部隊が派遣されている。
 経済的な面における国際平和等協力においては、その主体である政府開発援助(ODA)等による協力を行っており、民間のレベルにおいても、NGO等が様々な形での国際平和協力を行っている。

2 国際平和協力活動の枠組み

 我が国が行っている(きた)自衛隊による国際平和協力活動は下図の通りである。









業務内容 主要活動 根拠法規 実績 備考
国際平和協力業務 国連平和維持活動(注1) PKO協力法 9件(うち継続中1件)
人道的な国際救援活動(注2) 5件
国際的な選挙監視活動 選挙監視等単独10件 自衛隊からは派遣されていない
上記のための物資協力
国際緊急援助活動 医療、輸送、給水等 国緊隊法(JDR法) 14件
イラク特措法に基づく活動 イラク特措法 1件 2009年終結
補給支援特措法に基づく活動 テロ特措法次いで補給支援特措法 1件 2010年終結

注1:国連決議に基づき、武力紛争当事者間の武力紛争再発防止に関する合意の遵守の確保、武力紛争の終了後に行われる民主的な手段による統治組織の設立の援助、その他紛争に対処して国際の平和と安全を維持するために国連の統括のもとに行われる活動
注2:国連決議または国連などの国際機関の要請に基づき、紛争による被災民の救援や被害の復旧のため、人道的精神に基づいて国連その他の国際機関または各国が行う活動

3 国際平和協力業務の本来任務化と自衛隊の国際緊急援助活動への参加

(1)本来任務化
 国際社会の平和と安定がわが国の平和と安全に密接に結びついているという認識を踏まえ、2007(H19)年、従来は付随的な業務とされていた国際平和協力活動を、わが国の防衛や公共の秩序の維持といった任務と並ぶ自衛隊の本来任務に位置づけた。

(2)国際緊急援助活動への参加
 1987(S62)年に「国際緊急援助隊の派遣に関する法律(国際緊急援助隊法)」を施行し、被災国政府または国際機関の要請に応じて国際緊急援助活動を行ってきた。
 1992(H4)年、国際緊急援助隊法が一部改正され、自衛隊が国際緊急援助活動や、そのための人員や機材などの輸送を行うことが可能とされた。

4 派遣即応態勢の維持等

(1)即応態勢の維持
 平素から国際活動の派遣ニーズに迅速かつ継続的に対応できるよう、2007年より陸上自衛隊の各方面隊等から持ち回りで派遣の候補となる要員をあらかじめ指定する態勢を維持している。国際活動において本隊として派遣される部隊の要員は、交代で指定される「国際活動指定方面隊」の待機要員の中からその選抜されるとともに、「指定方面隊」の待機要員には、指定期間の間、国際活動に備えた訓練が行われ、一定の即応性が維持される。
 また、08(同20)年3月には、陸自の中央即応集団の隷下に中央即応連隊を新編し、派遣が決定された場合に速やかに先遣隊が派遣予定地に展開し、活動準備を行うことができる体制を整えた。
 同年以来、毎年1回、国際平和協力活動派遣に関する一連の活動の訓練などを行うことにより、迅速な海外展開能力や海外における的確な任務遂行能力などの維持・向上を図っている。
 また、09(同21)年には、わが国は、国連PKOへのより積極的な参加を目指し、PKOの展開に際して、国連から各国への要員派遣の打診の迅速化・円滑化を目的とする国連待機制度への登録を行った。
 また、海上自衛隊は自衛艦隊が、航空自衛隊は航空支援集団が、国際緊急援助活動を行う部隊や部隊への補給品などの輸送ができる態勢を維持している。

(2)国際平和協力活動のための装備品の改善、充実
 自衛隊は、国際平和協力活動のための装備品の改善・充実も進めている。
 ・陸自:防弾ガラスやランフラットタイヤなどを装備した各種車両、
     インフラの未整備な場所でも活動ができるよう大容量発電機を装備
     輸送ヘリコプター(CH-47JA)のエンジン能力向上
     狙撃銃、小銃などの射撃位置を探知する装備の取得
 ・海自:ヘリコプター運用の基盤ともなる輸送艦およびヘリコプター搭載護衛艦整備固定翼哨戒機を海外で効果運用用海上航空作戦指揮統制システムの可搬化
 ・空自:多様な環境下での指揮通信機能を保持のため、航空機用衛星電話などの整備輸送機用自己防御装置、航空機衝突防止装置などの整備を推進

(3)教育訓練及び福利厚生等
 ・陸自駒門駐屯地(静岡県)の国際活動教育隊において、国際平和協力活動へ派遣される陸自要員の育成、国際平和協力活動にかかわる訓練の支援などを行っている。
 ・統合幕僚学校に新設された国際平和協力センターで、国際平和協力活動などに関する基礎的な講習(国際平和協力基礎講習)、国際平和協力活動などに関する施策および運用にかかわる企画・立案を担当する要員や国連派遣部隊の司令部で勤務する要員を養成するための専門的な教育(国際平和協力中級課程・国際平和協力上級課程)を行っている。
 ・国際平和協力活動などで海外に派遣される隊員が安心して職務に専念できるよう、隊員と留守家族の精神的不安を緩和するよう以下のような施策を行っている。
 ①隊員と留守家族の絆を維持するため、メールやテレビ電話など、派遣隊員と家族が直接連絡できる手段の確保や、隊員および留守家族間のビデオレターの交換などを行っている。
 ②隊員の家族に対しては、家族説明会を開催して様々な情報を提供するとともに、家族支援センターや家族相談室さらに、メンタルヘルスケアの施策
 ③派遣前の隊員にストレスの軽減に必要な知識を与えるための講習を行うとともに、現地では、カウンセリング教育を受けた隊員を配置
 ④派遣部隊に医官を配置するとともに、定期的に本国からの専門的知識を有する医官を中心としたメンタルヘルス診療支援チームなどを派遣し、現地でのストレス対処方法や、帰国後の家族および所属部隊の隊員とのコミュニケーションにおける注意点などについて教育
 ⑤派遣を終えて帰国後には、臨時の健康診断、メンタルヘルスチェック

5 国連平和維持活動について

(1)PKO協力法の制定経緯と改正状況
 1990年の湾岸戦争で日本はアメリカ合衆国などの多国籍軍を支持して、多額の資金援助を行ったが、クゥエートの感謝決議に日本の名前はなく、資金を出すだけの態度に、戦時中から戦後にかけて米英等に批判が巻き起こった。これをきっかけに、国際協調主義の流れに沿って自由民主党政権が法案を提出した。紆余曲折はあったものの、自公民3党の合意が成立し、1991年12月3日に衆議院本会議で可決、翌1992年6月8日に参議院本会議で修正案が可決された。同年6月15日に衆議院本会議で参議院修正案が可決し、成立した。
 PKO 法は、2度にわたり改正された
 ① 平成10 年6 月
 国連平和維持活動と人道的な国際救援活動に、新たに地域的機関の要請等に基づき実施される国際的な選挙監視活動を追加、人道的な国際救援活動のための物資協力については、停戦合意が存在しない場合であってもこれを行うことができることとした。また、武器の使用について、原則として個人の判断によるとしていたものを、原則として上官の命令によることとした。
 ② 平成13 年12 月
 PKF(平和維持隊)本隊業務の凍結を解除した他、武器使用における防衛対象について、「自己又は自己とともに現場に所在する他の隊員」のみならず、「自己の管理下に入った者を防衛」へと拡大した。更に、自衛隊法第95条(武器等防護のための武器の使用)も適用可能とした。

(2)PKO参加5原則と問題点
 国連平和維持隊への参加に当たっての基本方針が[編集]PKO協力法には、PKOに参加するための基本方針が示されているが、これが参加5原則と呼ばれている。
 ①紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
 ②当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
 ③当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
 ④上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。
 ⑤武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

 このうち、武器の使用に関する項目において「要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られる」とある事については、自衛隊の参加実績が積み重なるに連れて、実態と乖離していると指摘されるようになり、予てから基準を変更するよう議論されるようになっている。例として、襲撃を受けた民間人を保護するため、自衛官を派遣した場合でも武器を使用することができないなど、現場の実態に即していない状況がある。これを解決するために、現在、他国の部隊が攻撃された場合、これを救助することを可能にする「駆け付け警護」の許可など、使用基準の緩和が議論されてきた。

(3)現在参加中及び近年終了したPKO
 ア 最近終了したPKO
 ・1996年(H8)以来17年間の長期にわたり、ゴラン高原国際平和協力業務(PKO)として参加してきたが、平成25年1月その活動を終了した。司令部要員を含め、一次隊から34次隊まで、延べ参加人員は約1500人であり、我が国がPKOを実際的に学ぶことが出来る絶好の機会ともなった。
 撤収は、シリア内戦の激化に伴い自衛隊員の安全確保が困難になったとして政府は2012年12月、現行法の期限である2013年3月31日をもってゴラン高原に展開中の自衛隊部隊を撤収する方針であることを明確にし、12月21日に森本敏防衛大臣が撤収を命令、1月15日に全隊が撤収完了した。
 UNDOF派遣10周年記念式典で当時のUNDOF司令官が陸上幕僚長へメッセージを送り、①有能な隊員の派遣によって、中東地域の安全と安定に多大な貢献をしたこと。②派遣隊員の高い規律、能力、礼儀正しさ、文化及び心遣いの高い評価を表明した。
 ・ハイチ国連安定化ミッション(MINUSTAH)
 ハイチにおける大規模地震の緊急の復旧・復興・安定化のためとして、司令部要員及び6次までの施設部隊を3年間にわたり派遣した。延べ約2200人である。
 ・国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)
 東ティモールに軍事連絡要員2名を4次にわたり派遣し、東ティモール各地における、治安情勢についての情報収集等を行った。 派遣期間 平成22年9月~平成24年9月 延べ人数 8人である。

 イ 現在実施中のPKO 
 南スーダンの独立を受けて、国連安保理は、平和と安全の定着および南スーダンの発展のための環境構築の支援などを目的として、国連安保理決議第1996号を採択し、11(同23)年7月、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立された。我が国は、国連事務総長の要請を受け、数度にわたる現地調査を踏まえ、2011年11月にはUNMISSに司令部要員2人(兵站幕僚及び情報幕僚)を派遣することを、同年12月には同じく自衛隊の施設部隊、現地支援調整所および司令部要員1人
 (施設幕僚)などを派遣することを、それぞれ閣議決定した。2012年(H24)年1月以降、展開・活動している。その概要は、以下の通りである。

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)
司令部要員
3名
(1次~5次)
派遣地 南スーダン
派遣期間 平成23年11月~
延べ人数 15人
主な業務内容  軍事部門の兵站全般の需要に関するUNMISS部内の調整
 データベースの管理
 施設業務に関する企画及び調整
主要装備品 (非武装)
施設部隊
(1次~5次)
派遣地 南スーダン
派遣期間 平成24年1月~
延べ人数 1594人
主な業務内容  道路等のインフラ整備等
主要装備品 軽装甲機動車、ドラック、ドーザ、けん銃、小銃、機関銃等
現地支援調整所
(1次~4次)
派遣地 南スーダン、ウガンダ及び必要に応じてケニア
派遣期間 平成24年1月~平成25年12月
延べ人数 92人
主な業務内容  施設部隊が行う活動に係るUNMISS等との協議及び調整
 後方補給業務等に関する調整
主要装備品 けん銃
執行額 約200.5億円(25年3月末までの予算ベース)
(司令部要員分については、内閣府予算にて措置)


(4)問題点等
 ア 最近の統合ミッションタイプのPKOへの対応の検討
 PKOは、国連憲章上明確な規定がなく、時の国連安保理決議に基づいて実施されているが、任務・マンデートが逐次に変遷してきた。伝統的な停戦監視や兵力引き離しを目的とする第一世代PKO(ゴラン高原PKO等)、その大規模かつ複合的なミッションを行う第二世代PKO(カンボジアPKO等)、そして平和執行型の第3世代PKOの失敗を経て、開発や人道支援等とも統一的な活動を行う活動を行う統合ミッションタイプの第4世代PKO(ハイチPKOや南スーダンPKO等)へと変遷してきた。
 日本の今後のPKOを考えた場合、PKO即自衛隊との発想ではなく、第4世代PKOに対応し得るような国家態勢が必要である。特に自衛隊、警察及び文民部門の統合的視点が求められる。
 警察については、平成5年に国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の文民警察官として活動中、高田警視が武装集団に殺害された事件がある。カンボジアには75名、東ティモールには2度にわたり7名の派遣が行われているが、2008年(H20)以降文民警察官の派遣は行われていない。種々検討されているが、抜本的な改善には至っていない。尚、UNTACが実施したカンボジア総選挙の選挙監視要員として参加した中田氏も殺害されている。
 文民警察官や文民のPKO参加についてどうあるべきなのか、どういう態勢を構築すべきなのか、教育訓練はどうするのか等の検討が行われるべきだろう。

 イ 国家戦略的視点
 国連や国際社会から求められたから参加するのではなく、我が国としてもっと主体的に参加の要否や規模等を考慮すべきである。単に人道的な視点ではなく、国家戦略上、それへの参加が如何なる価値があるかを冷静に考察する必要がある。
 政府開発援助(ODA)との密接且つ一体的な視点が必要である。

 ウ 憲法の法的整理について
 現行のPKO法及び参加5原則は、憲法第9条と「武力行使」「武力行使との一体化」の文脈で議論されたものであり、様々な制約を及ぼしている。
それは、①停戦合意を必須条件とすることによる制約 ②武器使用という観点から、共同で活動する他国の部隊、警察、文民要員等が救援・警護を求めても実施できない不合理であり、 ③列国のPKO参加部隊が認められている「任務遂行のための武器の使用」が認められず、④我が国が活動できる分野は、能力上は多々あるにもかかわらず、コミットできない場合があるという制約である。
 これらの制約や問題点については、2014年(H26)5月15日発出された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書」でも指摘され、閣議決定が為されたところであり、早急な改善が望まれる。詳細は7項に記載している。

 エ 恒久法の制定を
 我が国は、必要が生じるたびに、特別措置法を制定して自衛隊を派遣してきた。政府・与党内で自衛隊海外派遣に関する恒久法を制定する案が浮上していると報道されている。安倍首相も参院の集中審議で、自衛隊の国際平和協力活動の関連法整備について「一般法(恒久法)か特別措置法かといった形態を含めて検討する」と述べ、恒久法制定に前向きな考えを示した。
 自衛隊の海外派遣の特措法は、2001年の米同時テロ後、インド洋での給油活動の根拠となったテロ対策特措法と、イラクでの給水など人道支援活動や空輸活動を可能にした03年のイラク復興支援特措法がある。いずれも時限法で目的が限定されており、今は失効している。
 国連平和維持活動(PKO)協力法など個別法の改正にとどめず、包括的な恒久法を制定すれば、事態に応じて特措法を整備する必要がなくなり、迅速で機動的な自衛隊派遣が可能となる。安倍政権の「積極的平和主義」を具体化するため、恒久法の制定は有力な選択肢となるものと見積もられる。
 最新の報道等によれば、自衛隊の国際協力を巡り、政府・自民党は、今年の通常国会で、自衛隊の海外派遣に関する恒久法を制定したい考えであるという。「将来ニーズが発生してから特別措置法などで対応する考え方をとることは考えていない。通常国会で法案を提出すべく、与党と相談しながら作業を進めている」菅官房長官は1月19日の記者会見で、こう強調した。具体的な法整備の内容は、2月にも再開される自民、公明両党による「安全保障法制整備に関する与党協議会」(座長・高村正彦自民党副総裁)で議論される。

6 国際緊急援助活動への参加

(1)実績等
 3項で述べた通り、1992(H4)年、国際緊急援助隊法が一部改正され、自衛隊が国際緊急援助活動や、そのための人員や機材などの輸送を行うことが可能とされた。
 自衛隊は、1998年(H9)年のホンジュラスハリケーン災害救援を皮切りに、トルコ北西部地震の物資輸送、インド地震災害救援、イラン南東部地震災害救援及び物資輸送、インドネシアスマトラ島沖大規模地震等災害救援、ロシア潜水艇事故緊急援助、パキスタン等大地震災害救援、インドネシアジャワ島中部地震災害救援、ハイチ大地震災害救援、パキスタン大洪水災害救援、及びニュージーランド地震災害救援活動等に参加している。
 特にアジア諸国の地震、津波、洪水被害への救援が半数を占めており、今後とも災害の頻発が予測され、また日本の国家戦略上の重視すべき地域でもあり、より良き国際緊急援助活動が求められよう。

(2)最近の国際緊急援助活動
 ア 台風30号によるフィリピンへの国際緊急援助隊の派遣
 平成25年11月8日、台風30号により深刻な被害を受けたフィリピンからのに要請に対し、11月12日、国際緊急援助隊法に基づき医療支援を目的とした国際緊急援助隊を派遣、次いで、11月17日フィリピン国際緊急援助統合任務部隊(指揮官自衛艦隊司令官)人員約1,170名を編成して派遣した。
 フィリピン政府との協議を踏まえ、平成25年12月13日「国際緊急援助活動の終結に関する自衛隊行動命令」を発出して終了した。

 イ マレーシア航空機
 2014年(H26)3月8日、クアラルンプール発、北京行のマレーシア航空370便が消息不明となった。同機には、乗員12人と乗客227人が搭乗していた。
 3月10日、マレーシア政府から、マレーシア航空370便消息不明事案について支援要請があり、国際緊急援助活動を行うため、「国際緊急援助活動の実施に関する自衛隊行動命令」を発出し、C-130およびP-3Cを派遣した。捜索対象を拡大して捜索するも発見に至らず、4月28日終結命令を発令して終了した。

(3)問題点等
 今後の課題としては、次の点が挙げられよう。
 ア より迅速な派遣決定
 2010 年1月のハイチ地震では、首都を直下型地震が襲ったことから現地の行政機能が麻痺してしまい、地震直後にハイチ政府が各国に緊急援助を要請することは困難であったとされる。こうした状況下において、米国、中国、欧州各国などが救助チームを派遣する中、日本政府は、救助チームを派遣せず、地震発生から5日後に医療チームが現地入りしたが、要請主義を厳格にとらえすぎたため、他国と比べて派遣決定が遅れたのではないかとの指摘がなされた。
 イ 被災地までの輸送手段の問題
 救助チーム等の迅速な被災地入りを目指すに当たり、最も問題となるのが輸送手段の確保である。自衛隊が派遣される場合に、大型重機を輸送することが問題である。現在開発中のXC-2は、現行C-1及びC-130Jに比し、積載重量及び航続距離において倍以上あり、配備されればPKOや国際緊急援助活動において威力を発揮しよう。最も、米国のC-17には及ぶべくもないが・・
 また、政府専用機は、その機数が2機であること、また、国賓等の輸送や在外邦人等の輸送といった他の任務があることから、国際緊急援助活動などのための待機態勢は取っておらず、毎回、利用できる状況にはない。
 ウ 武器携行の議論
 国際緊急援助隊の隊員は現地で武器を携行しないこととなっており、これは治安が悪い状況での派遣を前提としていないからである。
 しかし、ハイチ地震の際、現地の治安状況に対する懸念などを理由として政府が救助チームを派遣しなかったことに対しては、他国は治安状況が不透明な場合でも援助隊を派遣しているとして、同様の対応ができるように体制を見直すべきとの指摘もなされた。
 また、2010 年夏に発生したパキスタン中部の洪水では、自衛隊のヘリ部隊が輸送活動を行ったが、当時、現地の治安状況は不透明であり、テロが起きる可能性もあるとして、部隊を「丸腰」で派遣することに懸念を示す見解もあった。
 こうした事例を受け、国会における議論の中では、対外関係等も踏まえて治安状況が不透明な地域でも国際緊急援助隊を派遣せざるを得ない場合があるとして、国際平和協力法に基づくPKO協力活動や人道救援活動と同様に、状況に応じて隊員が武器を携行し、使用することを認めるべきとの主張も行われている。

7 国際貢献における国際標準並みの活動を可能とする体制への移行

(1)閣議決定(2014/7/1)における国際的な平和協力活動における武器使用の問題認識
『国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定のために一層取り組んでいく必要があり、そのために、国際連合平和維持活動(PKO)などの国際的な平和協力活動に十分かつ積極的に参加できることが重要である。
 我が国として、「国家又は国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場しないことを確保した上で、国際連合平和維持活動などの「武力の行使」を伴わない国際的な平和協力活動におけるいわゆる「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」のほか、・・・法整備を進めることとする。』とされた。
 駆け付け警護に伴う武器使用や任務遂行のための武器使用については、憲法第9条の禁ずる武力の行使に該当する恐れがあるとして、国際的な平和維持活動に従事する自衛官の武器使用権限は、所謂自己保存型と武器等防護に限定してきたが、これは国連PKOの国際標準で認められた武器使用は憲法が禁ずる武力行使には当たらないものと解釈が変更されることを意味する。PKO参加5原則も見直されよう。

(2)国際標準下におけるPKO活動への適合努力
 今後は、“憲法で禁止されているので、助けて貰うことは出来ても、助けてあげることは出来ません”という不条理な対応は出来なくなる。
 如何なる状況で、如何に武器使用を行うのかの交戦規定(ROE)を策定する必要がある。
 2000年(H12)12月4日に「部隊行動基準の作成等に関する訓令」が制定され、これに基づいて、部隊行動基準が作成されるようになった。とは云え、現場においては自衛官が対応に悩み、政治的判断をせざるを得ない場面もあり、問題とされてきた。今後は、新たなROEに基づきしっかり訓練して任務遂行や駆け付け警護等に遺憾なきを期して貰いたいものである。実際に派遣される部隊・自衛官が不安を感じることなく任務を完遂できるようなROEの策定を期待する。
 また、これからは今まで以上に厳しい状況に直面することになろう。その際に、国内的なバックアップの態勢が整っている必要がある。隊員が傷害罪・殺人罪に問われることがあってはならないのは当然である。

8 積極平和主義に基づく後方支援活動の更なる増大

(1)国連決議に基づく武力行使を行う外国軍隊に対する後方支援活動の拡大
 我が国は、国際の平和及び安全が脅かされ、国際社会が国際連合安全保障理事会決議に基づいて一致団結して対応するようなときに、我が国が当該決議に基づき正当な「武力の行使」を行う他国軍隊に対して後方支援活動を行うことが必要な場合がある。
 一方、憲法第9条との関係で、我が国による支援活動については、他国の「武力の行使と一体化」することにより、我が国自身が憲法の下で認められない「武力の行使」を行ったとの法的評価を受けることがないよう、これまでの法律においては、活動の地域を「後方地域」や、いわゆる「非戦闘地域」に限定するなどの法律上の枠組みを設定し、「武力の行使との一体化」の問題が生じないようにしてきた。
 この限りにおいて、自衛隊は、各種の支援活動を着実に積み重ね、信頼を獲得もし、我が国に対する期待も高まっている。
 安全保障環境が激変する中で、国際協調主義に基づく「積極平和主義」の立場から国際社会の平和と安定のために、自衛隊が幅広い支援活動で十分に役割を果たすことが必要である。

(2)外国軍隊に対する支援活動を行い得る範囲の再認識
 従来の「後方地域」或いは「非戦闘地域」といった自衛隊が活動し得る範囲で一律に区切るのではなく、「他国が現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で実施する補給、輸送などの我が国の支援活動については、当該他国の武力行使と一体化するものではないという認識」のもとで次の観点から我が国の安全の確保や国際社会の平和と安定のために活動する他国軍隊に対して、必要な支援を実施できるようにする。このような方向での法整備を進めるとされた。
 ①我が国の支援対象となる他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」では、支援活動は実施しない。
 ②仮に、状況変化により、我が国が支援活動を実施している場所が「現に戦闘行為を行っている現場」となる場合には、直ちにそこで実施している支援活動を休止又は中断する。

(3)自衛隊の後方支援活動の拡大
 (2)の後方支援活動を自衛隊が行うことが出来るようになれば、日米共同作戦を行っている米軍に対する後方支援活動は勿論、これまで自衛隊がその度に特措法により派遣されてきた活動等において、自衛隊の活動の幅が広がり、より大きな貢献ができるようになるものと考えられる。
 武力行使との一体化論に関する新認識が共有されれば、戦闘地域か否かの不毛な議論も雲散霧消しよう。
 何れにしろ、自衛隊の活動場面は拡大し、より厳しい状況下での貢献や寄与を求められよう。それらに耐え得る自衛隊の態勢のみならず、国内的な態勢整備が必要である。
 自衛隊が、海外で他国軍などを支援するための関連法制の整備に関して、「一般法(恒久法)か特別措置法かという法律の形態も含めて、検討」する時期に来ていよう。
 自衛隊の海外での任務には、アフガニスタンでの対テロ戦争やイラク戦争の際、個別の特別措置法を時限立法の形で整備して対応してきた。
 今般の後方支援活動に係る認識の統一が確立すれば、恒久法の策定も可能となるだろう。

(了)