山下塾第5弾

山下 輝男

第六話「宇宙の安全保障分野での活用の更なる推進」

 我が国の宇宙の安全保障分野における活用は、周回遅れとも云える状況であった。長らく、宇宙の平和利用に関する決議が安全保障分野での利用を縛ってきたのである。テポドン発射を奇貨とした情報収集衛星の導入はあったものの、安全保障分野での活用が解禁されたのは、平成20(2008)年まで待たねばならなかった。その後、国家安全保障戦略、新大綱等の策定等を受けて、安全保障分野における宇宙の活用は大きく進展しようとしている。陸・海・空に次ぐ第四又は第五の戦場とも云われる宇宙空間における今後の動向が我が国の安全保障を左右するかもしれない。本年1月には宇宙基本計画が策定され、安全保障に力点がおかれ始めた。


1 宇宙利用のグローバルな現状

 宇宙空間は、国家による領有が禁止されていることに加え、全ての国が自由に利用できることから、主要国は、宇宙利用を積極的に進めている。たとえば、気象や陸・海域の観測に気象衛星や観測衛星、インターネットや放送に通信・放送衛星、また、航空機や船舶の航法利用に測位衛星などが利用され、社会、経済、科学分野など官民双方の重要インフラとして深く浸透している。
 また、主要国では、宇宙空間に軍が積極的に関与し、各種人工衛星を活用している。宇宙空間は、国境の概念がないことから、人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域の観測や通信、測位などが可能となる。このため主要国は、C4ISR2機能の強化などを目的として、軍事施設・目標偵察用の画像偵察衛星、軍事通信・電波収集用の電波情報収集衛星、軍事通信用の通信衛星や、艦艇・航空機の航法や武器システムの精度向上などに利用する測位衛星をはじめ、各種衛星の能力向上や打上げに努めている。
 一方、平成19(2007)年1月、中国は老朽化した自国の衛星を、地上から発射したミサイルで破壊する衛星破壊実験を行った。その際に発生したスペースデブリが、人工衛星の軌道上に飛散し、各国の人工衛星などの宇宙資産に対する脅威として注目されるものとなった。
 また、宇宙の平和利用を規定した「宇宙条約」などの既存の枠組みにおいては、宇宙物体の破壊の禁止やデブリ発生原因となる行為の回避などに関する規定がないため、近年、それらを内容として含み欧州連合が提案した「宇宙活動に関する国際行動規範」や国連宇宙空間平和利用委員会科学技術小委員会における「宇宙活動の長期的持続可能性」についてのガイドラインの策定に向けた国際的な取組が進められている。また、衛星攻撃兵器やスペースデブリなどの宇宙資産に対する脅威に加え、太陽活動の活発化が人工衛星や地上の電子機器に及ぼす影響、地球に飛来する隕石などの脅威に対する監視活動が、宇宙状況監視として、各国で取り組まれている。
 このように、今や宇宙空間の安定的利用に対するリスクが、各国にとって安全保障上の重要な課題の一つとなっている。



2 我が国の「宇宙」への対応概観

(1)宇宙の平和利用決議(1969(昭和44)年)
 宇宙開発事業団が設立された際に、衆議院本会議において「全会一致」で行われた決議である。『我が国における地球上の大気圏の主要部分を越える宇宙に打ち上げられる物体及びその打ち上げロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び人類社会の福祉を図り、あわせて産業技術の発展に寄与すると共に進んで国際協力に資するためにこれを行うものとする。』
 この決議の「平和の目的に限り」という部分の解釈は、国会の審議や答弁で、「非軍事」であり、偵察衛星のような「防衛に限り非攻撃的」なものであっても、この国会決議に反すると解釈されていた。

(2)情報収集衛星の導入と一般化理論(1998)
 ア 導入経緯等
 北朝鮮のテポドンの発射(1998年8月31日)を奇貨として情報集衛星(IGS:Information Gathering Satellite )導入の閣議決定(平成10(1998)年年12月22日)された。日本らしくない、極めて迅速かつ果断なる決断であった。それだけ日本が脅威を感じたと云うことだろう。
 この際に問題となったのが、件の宇宙の平和利用国会決議である。非軍事目的に限るとされてきたが、多目的な情報収集(大規模災害等への対応をも目的の一つ)であれば保有が許されるとの所謂「一般化理論」で対応した。
 その後、宇宙基本法が制定されて情報収集衛星の法的位置づけが明確になった。
 イ 運用等
 運用目的は、外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集(外交等の安全保障及び危機管理)とされている。
 情報収集衛星は、「光学衛星」(光学センサーを搭載し、画像を撮影)と「レーダー衛星」(合成開口レーダーによって画像を撮影)の2機を一組とし、二組(計4機)の体制によって運用される。これによって、地球の任意の地点を毎日最低1回は撮影出来るようになっている。
 光学衛星は主に昼間の写真撮影を、レーダー衛星は光学衛星よりも分解能は落ちるが夜間および曇天でも撮影可能である。衛星の管制・運用は、内閣直属の内閣情報調査室の隷下である「内閣衛星情報センター」が行っている。(所長は、将で退職した幹部自衛官が、内閣事務官として務めている。
 ウ 現状等
 地球上の任意地点を毎日最低1回は観測可能となるよう、二組計4機の体制を構築することが目標とされているものの、平成15(2003)年11月のH-IIAロケット6号機の打ち上げ失敗による衛星の喪失と、レーダー1号機と2号機の早期故障のために、二組計4機体制の構築は予定より遅れた。2013年(平成25年)4月26日にレーダー4号機の本格運用が始まり、約10年遅れで念願の二組計4機体制が完成した。
 各衛星の設計寿命は5年で、実証衛星に限り2 – 3年になっているが、レーダー衛星の相次ぐ早期故障を受け、2014年度にレーダー衛星の予備機を投入する予定である。実現すればレーダー衛星は実質的に3機体制となる。

(3)測位システム:準天頂衛星システム
 GPSは、アメリカ合衆国が軍事用に打ち上げた約30個のGPS衛星のうち、上空にある数個の衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、受信者が自身の現在位置を知るシステムである。元来は軍事用のシステムであったが、現在では非軍事的な用途(民生的用途)でもさかんに用いられている。我が国は、米国のGPSの機能を補完する独自の準天頂衛星システムの開発を推進中である。因みに、中国は、北斗計画と云う地球測位システムを、欧州(ESA)はガリレオ計画を、そしてロシアは、グロナス計画を推進中である。勿論インドにおいても同様である。現代戦における地球測位システムの重要性に鑑み、各国とも独自のシステム構築を目指している。
 ア 準天頂衛星システムのシステム概要
 衛星測位において利用者の受信機の正確な位置を測定するためには4機以上の衛星からの信号を受信することが必要である。しかし、山間部や都市のビル街などそれほど空が開けていない場所では、現状のGPS衛星のみでは衛星の見通しが遮られ利用者位置から見た可視衛星数が3機以下となり測位が不可能となる場合がある。
 この対策として、3機の衛星を準天頂軌道に配備すると、1機の衛星が日本上空のほぼ天頂に存在することとなり、米国のGPSを補完する衛星測位情報を提供することが出来る。日本のユーザはGPS信号を捕捉するまで30秒~1分ほど掛かっていたのが15秒程度に短縮できる見込みである。
 イ 衛星の打ち上げ
 2010年9月11日に技術実証のための準天頂衛星初号機みちびき (QZS-1)が打ち上げられ、2017年から2019年までに衛星3基が追加で打ち上げられて、4基体制でシステムが運用されることとなっている。将来的には、さらに3基増やして7基体制にすることとなっている。

(4)画期的な宇宙基本法の成立(2008年)
 我が国は、宇宙後発国として、米ソのレベルに追い付き・追い越せを至上命題に、何よりも技術的なキャッチアップを優先せざるを得ず、研究開発に重点が置かれた。然しながら、宇宙の研究開発中心から、宇宙を如何に利用・活用するかへの国際的な潮流の変化、冷戦の終焉、宇宙の産業としての有用性の認識の拡大と我が国の競争力の決定的な遅れ、我が国のミサイル防衛の必要性、そして何よりも日本の総合的な宇宙戦略(政策)の欠如が問題視された。
 宇宙の平和利用決議に内包する問題点や、自衛隊の衛星利用に関する制約や米国製衛星を調達せざるを得ないような日米合意等も有り、日本の宇宙政策を見直し、宇宙政策のあるべき姿を明確にした「宇宙基本法」の制定の気運が起こった。
 2004年末頃から自民党が検討に着手し、次いで自・公の調整協議を経て2007年6月に宇宙基本法案を国会に上程した。事後、与野党協議が行われ、2008年(平成20年)5月成立、8月施行された。
 宇宙基本法の安全保障にかかるポイントは以下の点である。
 ①宇宙の平和利用
 宇宙開発利用に関する条約その他の国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり行われるものとする。
 ②国民生活の向上等の項:我が国の安全保障に資する宇宙開発利用基本的施策
 ③国際社会の平和・安全の確保、我が国の安全保障に資する宇宙開発利用の推進

 昭和44(1969)年5月の宇宙平和利用決議では、「平和の目的」に限りと安全保障に関する利・活用を禁止していたが、この宇宙基本法により宇宙の安全保障分野での活用が認められたのである。
 具体的なシステムとして
 ・高感度情報衛星システム
 ・測位衛星システム
 ・安全保障を目的とした衛星システム 等が挙げられた。

(5)宇宙基本計画の成立と新計画の検討
 ア 現行宇宙基本計画の概要
 宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、政府の宇宙開発戦略本部が宇宙基本法に基づいて作成した計画である。平成21年(2009)6月発表。
 平成21年度(2009)から25年度(2013)までの5年間の基本方針と施策を取りまとめた計画である。内閣府が宇宙政策の司令塔機能を担うとともに、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的な実施機関と位置付けられた。
 施策の重点化の一つに「安全保障・防災」が掲げられ、工程表も示された。


 イ 新宇宙基本計画の決定(2015年1月9日)
 政府の宇宙開発戦略本部(本部長・安倍首相)は9日、安全保障を重視した新しい宇宙基本計画を決定した。現行計画を安倍首相の指示で見直したものである。
 計画の期間は2015年度から10年間で、衛星を使った情報収集能力の強化などを盛り込んだ。宇宙に関連する産業を、10年間で官民合わせて5兆円の規模にすることも目指すとした。
 計画は、〈1〉宇宙安全保障の確保〈2〉新たな産業の創出など宇宙利用推進〈3〉産業や科学技術基盤の維持・強化――の3点を目標として明示。その上で「わが国の安全保障環境が一層厳しさを増している」ことを背景に、安全保障に関する宇宙技術に手厚く予算を付ける方針を示した。
 中でも、高精度な位置情報システム(日本版GPS)を担う「準天頂衛星」は、現在の1基から17年度には4基に増やし、最終的に24時間の利用が可能になる7基を整備する。また、事実上の偵察衛星の情報収集衛星は高性能化を進める。宇宙航空研究開発機構が持つ技術を活用し、防衛省と連携することも明記した。

(6)NSS、新大綱と宇宙
 宇宙基本法の成立を受けて、平成21(2009)年1月に防衛省が策定した「宇宙開発利用に関する基本方針」の改訂版が、平成26(2014)年8月、決定された。平成25年末の国家安全保障戦略や防衛計画の大綱の閣議決定等を受け、今後の宇宙開発利用の在り方の検討結果を踏まえ、政府の長期的な指針の下、宇宙開発利用に関する各種施策を計画的かつ現実的に推進していく観点から、新たな方向性をとりまとめた。細部は後述

 ア 国家安全保障戦略における関連記述
Ⅳ 我が国がとるべき国家安全保障上の戦略的アプローチ
1 我が国の能力・役割の強化・拡大
(9)宇宙空間の安定的利用の確保及び安全保障分野での活用の推進
 宇宙空間の安定的利用を図ることは、(中略)国家安全保障においても重要である。(中略)安全保障上の観点から、宇宙空間の活用を推進する。
特に、情報収集衛星の機能の拡充・強化を図るほか、自衛隊の部隊の運用、情報の収集・分析、海洋の監視、情報通信、測位といった分野において、我が国等が保有する各種の衛星の有効活用を図るとともに、宇宙空間の状況監視体制の確立を図る。
 また、衛星製造技術等の宇宙開発利用を支える技術を含め、宇宙開発利用の推進に当たっては、中長期的な観点から、国家安全保障に資するように配意するものとする。

 イ 防衛計画の大綱  
Ⅳ 防衛力の在り方
1 防衛力の役割
(1)各種事態における実効的な抑止及び対処
エ 宇宙空間及びサイバー空間における対応
 宇宙空間に関しては、(中略)平素から、自衛隊の効率的な活動を妨げる行為を未然に防止するための常続監視態勢を構築するとともに、事態発生時には、速やかに事象を特定し、被害の局限等必要な措置をとりつつ、被害復旧等を迅速に行う。

2 自衛隊の体制整備に当たっての重視事項
(2)重視すべき機能・能力
 様々なセンサーを有する各種の人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙状況監視の取組等を通じて衛星の抗たん性を高め、各種事態が発生した際にも継続的に能力を発揮できるよう、効果的かつ安定的な宇宙空間の利用を確保する。こうした取組に際しては、国内の関係機関や米国との有機的な連携を図る。

 ウ 中期防
  Ⅲ 自衛隊の能力等に関する主要事業
 1 各種事態における実効的な抑止及び対処
(4)宇宙空間及びサイバー空間における対応
(ア)宇宙利用の推進
 様々なセンサーを有する各種の人工衛星を活用した情報収集能力を引き続き充実させるほか、高機能なXバンド衛星通信網の着実な整備により、指揮統制・情報通信能力を強化する。また、各種事態発生時にも継続的にこれらの能力を利用できるよう、宇宙状況監視に係る取組や人工衛星の防護に係る研究を積極的に推進し、人工衛星の抗たん性の向上に努める。その際、国内の関係機関や米国に宇宙に係る最先端の技術・知見が蓄積されていることを踏まえ、人材の育成も含め、これらの機関等との協力を進める。


3 防衛省の宇宙利用の現状及び留意事項

(1)過去の経緯


(2)宇宙空間における防衛上の主な機能と現状
 〇情報収集機能
 ・情報収集衛星や商用画像衛星を活用
 ・衛星数のほか、撮像優先度、高い解像度が重要な要素
 ・打上げの即応性向上、衛星の小型化が新たなトレンド
 〇情報通信機能
 ・民間衛星通信サービスを活用
 ・平成27~28年度に防衛省の独自衛星となる高速大容量化を図った通信衛星2機を打上げ予定
 ・自衛隊の通信所要は増加傾向(装備品の性能向上、無人機導入、BMD、島嶼防衛、海外派遣)
 〇測位機能など
 ・GPS等で測位機能を確保(米国のほか、ロシア、中国、欧州が独自の測位衛星を整備)
 ・「ひまわり」からの気象情報を取得
 〇早期警戒機能
 ・地球の裏側の戦略核ミサイルの発射探知を目的に米ソが冷戦期に整備
 ・我が国は、米軍から早期警戒情報を受領
 ・早期警戒情報は、発射の第1報として有用であるが、その精度に限界

(3)防衛省として留意している事項
 ア 宇宙開発利用の環境の変化
 ・宇宙基本法の成立、JAXA法の改正等により安全保障を目的とした宇宙開発利用の環境が変化
 ・宇宙開発利用は、情報収集・偵察、また通信・測位などの運用支援における重要な手段
 ・次期Xバンド衛星通信システムの整備といった防衛ニーズに即した人工衛星の利用を推進
 イ 宇宙空間の安定確保
 ・宇宙兵器関連技術の進展やスペースデブリの増加
 ・我が国では、唯一JAXAが限定的に宇宙監視を実施
 ・各国とも軍と宇宙関係機関等が協力して宇宙監視を実施
 ウ 財政基盤
 ・高機能な軍用衛星の打上げには400億円以上を要することに加え、5~15年周期での更新が必要。開発経費を含めれば更に高騰(次期Xバンド衛星通信システムの契約額は約1,221億円(防衛省史上最大の契約額))
 ・センサーの衛星への相乗りやデュアルユース等による費用の応分負担など、関係機関との連携等を通じた機能の確保が重要
 エ 体制・人材
 ・米国やJAXAとの連携強化等を通じた人材育成を実施(米軍研修プログラムへの派遣、JAXAから職員の受入れ)
 ・自衛隊全体の任務の増加や定員事情との兼ね合い


4 防衛省・自衛隊の宇宙開発利用に関する基本方針(平成26年8月28日決定)

 2、3項を踏まえて策定された改訂版の基本方針は以下の通りである。




5 対衛星兵器の脅威

 また、地上から人工衛星に向けて発射するミサイル、衛星攻撃衛星(キラー衛星)、レーザー光線などの指向性エネルギー兵器、電波妨害(ジャミング)や電磁パルスを利用した兵器といった対衛星兵器の開発が進展しており、これらが使用されれば、我が国の安全保障上重要な宇宙の利用が阻害されるおそれがあるだけでなく、対衛星兵器の種類等によっては宇宙ゴミがさらに増加するおそれがある。一般に人工衛星は、攻撃を受けることを想定した防護能力を備えていないため、人工衛星を安易に攻撃の対象とする誘因となるおそれもある。


6 宇宙分野における防衛省と文部科学省・JAXAの協力

 JAXA法の改正により防衛省と文科省・JAXAの連携が可能となり、以下のような協力実績がある。
 ①平成24年7月
 ・JAXA法改正(JAXAにおける安全保障目的の研究開発が可能に)
 ②平成25年4月
 ・赤外線センサ-の衛星への搭載関連技術分野等における情報交換を目的とした研究協力協定を防衛省技術研究本部-JAXA間で締結
 ③平成26年3月
 ・宇宙状況監視システムの導入可能性調査のための経費を内閣府、文部科学省、防衛省が26年度予算に共同計上
 ④平成26年4月
 ・防衛省-JAXA間の人事交流を開始(防衛省にJAXAからの職員を受入れ)
 ※防衛省からJAXAへの職員の派遣については現在調整中
 ⑤平成26年8月
 ・防衛省の2波長赤外線センサを文部科学省・JAXAで計画中の先進光学衛星に相乗りすることにより、宇宙空間で実証研究するための経費を27年度概算要求
 ・JAXA陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)の画像利用のための経費を27年度概算要求
 ・宇宙監視システムの能力具体化に関する調査研究のための経費を内閣府・文部科学省・防衛省が27年度概算要求に共同計上


7 今後の課題等

(1)宇宙の安全保障分野への更なる活用の具現化が急務
 周回遅れであった我が国の「宇宙分野の安全保障への活用」が、具体化されようとしている。我が国の技術力をもってすれば、所要の態勢を採りえよう。十分な資源配分や人材育成等も重要であるが、本腰を入れて、宇宙を活用するとの強い意志である。
 宇宙分野での諸分野での活用推進が、我が国の安全保障に寄与する。その決心は政治が為すべきものである。現政権に大いに期待したい。

(2)宇宙の安全保障分野への活用にかかる予算の増額
 宇宙関連予算の大部分は、商用回線の借り上げや商用画像の取得、関連装備品の維持・改善に関する経費であり、平成20年度以降、BMD経費を含み、平均的には5~6000億円である。必要な整備を行うのは余りにも少なすぎる。因みに、平成27年度の概算要求額は、約3,000億円である。

(3)弾道ミサイル防衛における宇宙空間における対処について
 イージス艦のBMD機能の付加による能力向上、BMD能力向上型迎撃ミサイルの日米共同開発、宇宙空間を飛翔する弾道ミサイルを探知・追跡するFPS-3改/6/7レーダーの維持・整備が必要であり、逐次に進められている。

(4)赤外線センサーの開発
 技術研究本部が開発した高性能2波赤外線センサーについて確認試験を行うと共に、衛星搭載に関する研究を実施、JAXA計画中の先進光学衛星に相乗りして宇宙空間で実証研究等を行う。


(5)宇宙空間における脅威対処
 スペースデブリや不審な衛星等から人工衛星を防護するため、諸外国は宇宙を監視し、正確に状況を認識するための宇宙監視能力を充実させている。日本では、JAXAが自らの人工衛星等の追跡と宇宙物体の軌道解析の研究を目的として限定的な宇宙状況監視を実施している。宇宙状況監視システムの導入可能性の調査研究、基礎的運用研究及び衛星防護の在り方に関する調査研究を行うことが必要となっており、逐次に進められている。

(6)防衛省の体制、費用対効果対策及び宇宙産業との関係
 ア 体制
 ・部外派遣による人材育成・人事交流
 ・政策、運用、取得、技術部門の体制充実
 ・宇宙監視機能の保持に併せて防衛省・自衛谷宇宙監視を任務とする専従組織の設置に向けた検討
 ・JAXAからの協力
 イ 費用対効果上の対策等
 ・技術のスピンオン(国内の民生分野における技術成果や知見の活用)
 ・関係省庁や民間企業との相乗りや共用による経費抑制の追求
 ・PFIなどの取得スキームの活用
 ・宇宙保険への加入による不測時の費用負担の最小限化
 ウ 宇宙産業関連(関係府省との連携)
 ・現状や産業構造、相対的な比較優位がある分野等の実態把握
 ・技術シーズと防衛省・自衛隊のニーズのマッチング、産業政策 

(7)我が国独自の画像衛星の保持
 防衛省が利用している画像衛星は、光学衛星が米国の3社、SARが独・伊・加の3国のものである。JAXAの陸地観測技術衛星2号(ALSQ-2)の画像を利用する。
 ALOS-2, Advanced Land Observing Satellite、エイロス2)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、地図作成、地域観測、災害状況把握、資源調査などへの貢献を目的として開発した「だいち」の後継の地球観測衛星である。
高度628kmの太陽同期準回帰軌道を14日で回帰し(だいちは46日)、フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダーPALSAR-2により地表を観測するレーダー衛星である。2014年5月24日にH-IIAロケット24号機によって打ち上げられた。

(8)通信衛星の充実
 現在は、商用衛星通信回線を借り上げ、全国各地の自衛隊施設間の基幹通信や艦艇、航空機等との通信手段として部隊の指揮統制等に活用している。然しながら、部隊運用上重要な指揮統制・情報通信に使用している民間運用の現行Xバンド通信衛星3機のうち2機の設計寿命到来に伴い、後継衛星2機を初の防衛省所有の衛星として整備中である。(平成27~28年度に打上げ予定)
 整備中の次期衛星は、画像・映像等に適応できる高速大容量化をはじめ、電波環境への対応能力を強化するなど、高い能力を保持する予定


(9)情報収集衛星等運用等
 宇宙基本計画に基づき、より高い撮影頻度とすることによる「情報の量の増加」、商業衛星を凌駕する解像度とすること等による「情報の質の向上」、増大するデータの受送信を迅速に行うこと等による「即時性の向上」等により、情報収集衛星の機能の強化を図ることが必要である。現状の、光学衛星とレーダ衛星それぞれで特定地点を1日1回以上撮像する上で必要な4機体制では、撮像頻度の制約といった課題があること等から、情報収集衛星群(コンステレーション)の能力強化について検討する必要がある。また、内閣衛星情報センターの体制の充実も図る必要があろう。

(10)データ中継衛星の開発等
 一層厳しさを増す安全保障環境や、昨年1月に発生した在アルジェリア邦人に対するテロ事件のような事案に対応するため、即時性の向上が求められている。また、情報収集衛星の機能の拡充・強化に伴うデータ量の増加により、伝送データ量の増加も求められている。このような状況に対応するため、データ中継衛星の導入が必要である。平成31年度の打ち上げを計画中。

(11)欠落している衛星機能の開発等
 電波情報(ELINT)に関する情報は、現在米軍から限定的に情報提供を受けており、我が国独自でのELINT衛星を有しない。然しながら、ELINT衛星は既存のG術で製造・運用できるので、開発期間は4年程度と云われ、経費も安価であるという。対象地域の電波情報を継続的に収集、データベース化することにより、電波を発信する艦艇や部隊等の動きを把握できる。
 ミサイル防衛のために必要な早期警戒衛星の保持も必要であろう。現在は太平洋上の静止軌道にある米国の早期警戒衛星からキューイング情報として米海軍や海自のイージス艦、空自のPAC-3部隊等に伝達される。
 これ等の重要な情報を全面的に米国に依存することは、安全保障上如何なのものか?米国との地域や役割分担を検討してより効果的な電波情報や早期警戒情報を収集することが必要であろう。


(了)