山下塾第5弾

山下 輝男

第十三話「女性自衛官の活躍の場の更なる拡大」

 安倍内閣は女性が輝く社会の実現を目指している。かっては、洋の東西を問わず、武力組織は男性の独壇場であったが、近年では諸外国においても女性兵士が徐々に増加し、果たす役割も広がってきた。
 自衛隊も例外ではなく、今後益々その傾向が顕著になるだろう。自衛隊における女性自衛官の活躍状況を瞥見したい。尚、自衛隊には事務官が勤務し、事務に任じているが、総事務員数は2万人余り、内女性事務官は5000人弱である。本話は女性自衛官に焦点を当てているので、女性事務官については割愛する。



1 女性自衛官の現況

(1)全般
 女性自衛官(以前は婦人自衛官と称していたが、婦人よりも女性と称するべきであるとの観点から変更された。)は、保安隊時代は看護師のみであったが、逐次に門戸が開放されてきた。
 1967年:大卒の幹部自衛官
 1968年:曹士自衛官として陸上自衛隊に、会計科、通信科、文書科に配置
 1974年:海空自衛隊にも女性自衛官が配置された。

 女性自衛官の最上位階級は、将補である。医官たる海将補(既退職)、一般自衛官では空将補2名(何れも基地司令歴任)(既退職)を輩出している。
 2014(平成26)年3月末現在、女性自衛官は、約1.3万人(全自衛官の約5.6%)である。10年前(2004(同16)年3月末時点で全自衛官の約4.6%)と比較すると、1.0ポイント増となっており、女性自衛官の比率は近年増加傾向にある。

(2)女性自衛官の略称
 WAC:Woman’s Army Corps:陸自
 WAVE:Woman Accepted for Volunteer Emergency Service:海自
 WAF:Woman in the Air Force:空自

(3)教育システム等
 ・一般曹候(平成19年度から一般曹候補学生制度と曹候補士制度を統合、「一般曹候補生」制度に改められた。)
  陸:女性自衛官教育隊(朝霞)、
  海:横須賀教育隊
  空:第一教育群(防府)第二教育群(熊谷)
 ・自衛官候補生:採用予定数(陸500名・海80名・空130名)
 陸・海・空自衛隊において平成22年度から採用される任期制隊員(2等陸・海・空士)のうち、教育期間中の身分を自衛官の定数外とするもの。2009年6月3日に公布された防衛省設置法等の一部を改正する法律に基づき平成22年7月1日より施行され、平成23年3・4月入隊の隊員から開始された。
 ・処遇は男女全く同等であり、女性にとっては魅力的な職場でもあり、また自衛隊の近年における活躍振りからか、女性自衛官志望者は増加し、厳しい競争率となっており、それだけ優秀な女性が入隊してくる。相対的に女性自衛官が優秀であると云えるだろうし、防大や幹部候補生学校もそうだろう。
 ・女性自衛官は、駐屯地・基地内の専用宿舎に起居し、そこは男子禁制の地である。



2 配置職域の逐次の拡大

 母性の保護、男女間のプライバシー確保等の観点から制限されている一部の配置については、2度にわたる見直しにより職務の拡大が図られた。
 一部の配置を制限(戦車、潜水艦、戦闘機など)しているものの、護衛艦への乗組や哨戒機、輸送機などの操縦に従事しているほか、各幕僚監部や司令部などの自衛隊の中枢にも登用し、活躍の場が拡大してきている。部隊指揮官、艦長等への登用も図られた。

 母性の保護、近接戦闘の可能性、男女間のプライバシー確保及び経済的効率性の観点から当面女性自衛官を制限する配置は次の通りである。
  〇陸自:普通科中隊、戦車中隊、偵察隊、施設中隊、対戦車ヘリ飛行班、化防(小)隊、坑道中隊等
  〇海自:潜水艦、ミサイル艇、掃海艦(艇)、特別警備隊
  〇空自:戦闘機、偵察機

 災害派遣においては、捜索・救出を含む各種業務を行い、国際平和協力活動等においては、主に、衛生、通信、輸送業務を行った実績がある。

 女性自衛官(2陸佐)をNATO本部に2年間派遣する。平和・安全保障分野での女性の参画や権利などを担当する。(2014/11/4防衛省発表)



3 女性自衛官等の勤務環境の整備等

(1)庁内託児施設等の設置
 災害派遣、夜間勤務や不定期な人事異動など勤務態勢が不規則であるため、自衛隊の特性にあった保育の場の確保や常時即応態勢を維持するために、庁内託児施設の設置や災害派遣などの緊急登庁時における子供の一時預かりのための体制を整備している。庁内託児施設では、0歳から未就学児を対象とし、基本保育のほかに、延長保育、一時保育、夜間保育、緊急一時保育などを行っている。
 ①2007(平成19)年に陸自三宿駐屯地、
 ②2009(同21)年に陸自熊本駐屯地、
 ③2010(同22)年に海自横須賀地区、
 ④2011(同23)年に陸自真 駒内駐屯地に開設
 ⑤2015(同27)年には、陸自朝霞宿舎地区に開設予定

 災害派遣などの緊急登庁時における子供の一時預かりでは、他に預け先がなく帯同して登庁せざるを得ない隊員の子供を、おおむね5日間、駐屯地・基地(平成25年度末現在150か所)において一時的に預かることとしており、そのために必要な安全マットやベビーベッドなどを整備している。

(2)看護のための休暇、早出遅出勤務
 仕事と育児の両立支援のため、休暇などの制度も整備されている。たとえば、子の看護のための休暇があり、これは小学校就学前までの子を看護(予防接種、健康診断を含む)する隊員が、1年につき5日、子が2人以上の場合は10日取得できるものである。
 早出遅出勤務は、小学校就学前までの子を養育する隊員、小学校に就学している子を放課後児童クラブなどに送迎する隊員、親族を介護する隊員に関して、1日の勤務時間を変更することなく、始業・終業の時刻を変更することを認める制度である。

(3)育児休業制度
 女性職員の取得率は、ほぼ100%に近い。(男性職員は依然として低い。)



4 今後の方向について

 引き続き、女性自衛官の採用・登用の更なる拡大を図るため、2011(同23)年3月、「防衛省における男女共同参画に係る基本計画(平成23年度~平成27年度)」を策定した。
 女性自衛官が途中で退職することなく、仕事と家庭生活を両立しつつ、さらに活躍の場が広がるような様々な施策を検討・実施することとしている。たとえば、意欲と能力を有する女性自衛官の、自衛隊の司令部などの中枢における業務への積極的な参画、国際平和協力活動への女性自衛官のさらなる活用および育児休業代替要員制度の積極的な運用を行う。
 新防衛大綱および新中期防においても、一層効果的な人材活用を図るための女性自衛官の更なる活用を掲げており、今後も、様々な施策に重層的に取り組んでいくこととしている。



5 今後の課題等

(1)あるべき女性自衛官の割合は?
 2013年1月、米軍は、地上戦の前線で女性兵士が戦闘任務に就くことを禁じている軍の規則を撤廃する方針を発表したと報じられた。米軍内では女性が15%を占めている。女性の任務制限撤廃の決定は「権利の平等」を強調するオバマ大統領の意向を反映したもので、同性愛を公言する米兵の勤務を容認した方針に続く、オバマ政権下での米軍の改革となる。オバマ大統領は「この決定は米軍を強くするもので、建国時からの理想である公正さや公平さの実現に向けた一歩だ」などと決定を歓迎する声明を発表した。
 一方、自衛隊はそこまで踏み込めるだろうか?踏み込む必要があるのだろうか?
 女性でなければ出来ない、女性が望ましい職域は確かにある。女性自衛官の割合が数%に止まるのは確かに低いのかもしれないが、だからと言って、米軍並に増加させることが、日本の文化や日本人の感性にマッチするのか疑問だ。

(2)国際機関や海外任務への更なる活用
 防衛省の基本計画(前掲)が述べている通り、女性自衛官の希望や能力に応じ、国連等の国際機関への派遣や防衛駐在官等海外における勤務についても拡大する必要があろう。

(3)レイプやセクハラについて
  自衛隊においては、寡聞にしてそのような話はない(と信じている)が、米軍等では深刻な問題となっているようだ。男女間の性に関わるトラブルは、人間社会の業みたいなものでもあるので、それらに対する対策をしっかりと確立しておく必要がある。
 女性自衛官が、意欲的に溌剌として、職務に邁進できる社会の実現に更なる努力が必要だろう。

(了)