山下塾第5弾

山下 輝男

第二十一話「平和安全法制の概要(4)周辺事態安全確保法改め重要影響事態安全確保法」

 今般の平和安全法制の整備においては、色々な事態が定義され、それらに応じて自衛隊の活動内容が相違する。武力攻撃
事態等に存立危機事態、周辺事態が重要影響事態と改定され、国際平和共同対処事態が設けられた。また、従来の国連PKO等
の他国際連携平和安全活動が加えられた。
 21話では、周辺事態について見てみたい。


1 周辺事態安全確保法の概要と問題点等

(1)概要
  周辺事態法は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に対応して活動する米軍への支援を定めるものである。
  ただし、これまでの周辺事態法では、支援対象は米国だけであり、その範囲も基本的に我が国周辺に限られている。
  グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発・拡散、国際テロの
 脅威といった安全保障環境の変化を踏まえれば、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が発生する地域をあらか
 じめ特定することは、困難である。

(2)周辺事態における後方支援上の問題点は?
  ① 朝鮮半島有事、台湾有事、更には南シナ海有事、或いは東南アジア有事などの所謂我が国周辺における事態の勃発は、
   否応なく、その地理的関係から放置すれば我が国の安全確保に重大な影響を及ぼすことは必定である。1996年の台湾
   危機や1994年の北朝鮮危機などを想起すれば、我が国の安全確保に重大な影響を及ぼすことを理解できよう。
  ② 周辺事態における米軍に対する後方支援等について米軍に対する後方支援・捜索救難は、何れも武力行使との一体
   化」論から後方地域後方支援・後方地域捜索救助」とされ、非戦闘地域で実施することとされている。
    また、支援メニューを定めた別表には、物品・役務の提供を我が国領域において行うこととされているが、その為に
   わざわざ日本領域に帰還・立ち寄りしなければならない。机上の空論である。また、物品の提供には、武器(弾薬を
   含む。)の提供を含まないものとする。また、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含ま
   ないものとするとされ、これでは十分な支援が出来ない。
  ③周辺事態法は米軍に対する支援のみであるが、果たしてそれで十分だろうか?



2 重要影響事態安全確保法への発展的改正

(1)周辺事態は、元来、事態の性質に着目した概念であって、地理的な概念ではないが、それをより明確にするため、
  改正法では対象とする事態を「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態(重要影響事態)」とし、「我が国周辺の
  地域における」や「周辺事態」といった文言を用いないこととした。また、我が国の平和と安全のために活動している
  国は米国に限られないことから、米軍以外の他国軍への支援も可能とした。

   重要影響事態:そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等、我が国の平和及び安全に
  重要な影響を与える事態
  「周辺事態」の定義から「我が国周辺の地域における」を削除
  改正前は、実施不可であったが、改正により外国領域での実施が、当該国等の同意がある場合に限り実施可能となった。

(2)支援対象
  重要影響事態に対処する以下の軍隊等
  ①日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍
  ②その他の国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国の軍隊
  ③その他これに類する組織

(3)対応措置
  ①後方支援活動(防衛省・自衛隊が実施する物品・役務の種類)
   補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、空港及び港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用、訓練業務
  (※)武器の提供は含まない。弾薬の提供及び戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備は実施可能に。
  ②捜索救助活動
  ③船舶検査活動(船舶検査活動法に規定するもの)
  ④その他の重要影響事態に対応するための必要な措置

(4)一体化の回避について
  ○「現に戦闘行為が行われている現場」では実施しない
  (※)遭難者が既に発見され、救助を開始しているときは、部隊等の安全が確保する限り当該遭難者に係る捜索救助活動を
     継続できる。
  ○自衛隊の部隊等の長等は、活動の実施場所又はその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合、又はそれが予測
   される場合には一時休止等を行う
  ○防衛大臣は実施区域を指定し、その区域の全部又は一部において、活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると
   認める場合等は、速やかにその指定を変更し、又は、そこで実施されている活動の中断を命じなければならない。



3 論点等

(1)重要影響事態の認定基準は?
   これについて、28日の委員会の答弁で、首相は、「①紛争)当事者の意思や能力、事態の発生場所や米軍などの
  活動内容、②我が国に戦禍が及ぶ可能性、③国民に及ぶ被害の重要性」などの認定基準を明らかにした。
   首相は重要影響事態の認定について、「事態の個別具体的な状況に即して総合的に考慮し、客観的合理的に判断す
  る」と述べた。地理的制約がないことを明確にするために現行の「周辺事態」から「周辺」を外して重要影響事態に
  改めることに対し、野党側が「活動範囲が無制限に広がる」などと批判していることを念頭に厳格な認定基準を示し
  たものだ。
(2)地理的範囲は? 無制限に拡大しないかとの懸念
   周辺事態の周辺は如何にも地理的制約があるように受け取られる。地理的制約はないが、事態認定は(1)項によ
  ることとなる。
(3)周辺事態の6類型(1999年統一見解)の適用は?
   重要影響事態でも適用される。
  参考:周辺事態の6類型とは①日本周辺地域で武力紛争が発生した②武力紛争の発生が差し迫っている③武力紛争は
  停止したが、秩序の回復・維持が達成されていない④ある国で内乱や内戦が発生し、国際的に拡大している⑤ある
  国で政治体制の混乱で大量の避難民が発生し、日本への流入の可能性が高まっている⑥ある国の行動が国連安保理
  によって平和に対する脅威や破壊、侵略行為と決定され、安保理決議で経済制裁の対象となる
(4)自衛隊が後方支援を行う実施区域は
   現に戦闘が行われていない地域とされているが、首相は、更に踏み込んで、「現在、戦闘行為が行われていない
  だけではなく、部隊等が現実に活動を行う期間に戦闘行為がないと見込まれる場所を指定する」と述べた。(28日
  の答弁)
(5)自衛隊員のリスク増大?
(6)米軍以外に対する後方支援の要否や是非
(7)弾薬の提供及び戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を可能にしたことの是非戦闘行
  為に直接加担では?



4 評価と課題

(1)地理的概念ではないことを明確にし、支援対象も米軍のみに限定しないようになり、弾薬の提供も出来るようになり、
  幅広い支援が可能となったのは評価できる。
   弾薬の提供そのものは、「武力の行使」ではない。また、弾薬の提供を含む我が国の支援活動は、前線から距離が
  離れたところで実施する、いわゆる後方支援であり、戦闘行為を行っている現場では実施しないことから、「武力の
  行使と一体化」することはあり得ないと説明している。

(2)現に戦闘を行っている現場ではない場所で行うので、武力行使との一体化が起きないというが、厳密に判定できるのか?
  戦闘の場は流動的であり、現実的には難しいとも思える。議論のあるところである。    本来であれば、被支援軍隊が必要とする時期と場所で後方支援を行ってこそ、効果的な後方支援である。極めて制約され
  た条件下の後方支援にならざるを得ないのではないか?隔靴掻痒の感がするが・・言っても詮無いことではある。これが   日本の現状なのだ。

(了)