山下塾第5弾

山下 輝男

第二十四話「平和安全法制の概要(7)その他の改正事項」

 23話までは、主要な個々の法制整備について説明したが、本話では、これら以外の改正事項等について説明する。



1 自衛隊法の改正

(1)在外邦人の保護措置
  自衛隊法84条の3は、「在外邦人等の輸送」の項であるが、「在外邦人の保護措置」を本条として新設する。
  ア 内容
   外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の保護措置を自衛隊の部隊等が実
  施できるようにする。(第84条の3)
   保護措置とは、警護、救出その他当該邦人の生命又は身体の保護のための措置、輸送を含む。
  イ 手続
   〇防衛大臣による命令
   ○外務大臣からの依頼・協議、内閣総理大臣の承認
  ウ 実施要件
   以下の全てを満たす場合
   ① 保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、
    戦闘行為が行われることがないと認められること。
   ② 自衛隊が当該保護措置を行うことについて、当該外国等の同意があること。
   ③ 予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と当該外国の権限ある当局
    との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。
  エ 武器使用権限
   ○いわゆる任務遂行型の武器使用が可能。
   ○危害許容要件は正当防衛・緊急避難。
  オ 邦人以外の外国人も一定の条件の下、保護することが可能。

(2)米軍等の部隊の武器等の防護のための武器の使用
  隊法95条の規定を米軍等にも拡大
  ア 自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等であれば、当該武器等を防
   護するための武器の使用を自衛官が行うことができるようにする。(第95条の2)
  イ 対象
   ○米軍その他の外国の軍隊その他これに類する組織の部隊
   ○自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(※)に現に従事しているものの武器等(※)共同訓練を含み、現に
    戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。
  ウ 手続
   ○米軍等からの要請があった場合
   ○防衛大臣が必要と認めるときに限り
   ○自衛官が警護を行う
  (※)条文上の手続とは別途、運用の考え方を国家安全保障会議で審議する方針。
  エ 武器使用権限
   ○人又は武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断
    される限度で武器を使用することができる。
   ○危害許容要件は正当防衛・緊急避難。

(3)平時における米軍に対する物品役務の提供の拡大
  ア 米軍に対する物品又は役務の提供に関しては、以下の活動を実施する自衛隊の部隊等と共に現場に所在して同種の
   活動を行う米軍を対象に追加
   ① 自衛隊法第81条の2第1項第2号(警護出動)に掲げる施設及び区域に係る同項の警護(※施設及び区域内で
    の警護を行う米軍が対象)
   ② 海賊対処行動
   ③ 弾道ミサイル等を破壊する措置をとるため必要な行動
   ④ 機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理
   ⑤ 外国における緊急事態に際しての邦人の警護・救出等
   (改正後の自衛隊法第84条の3(在外邦人等の保護措置))
   ⑥ 船舶又は航空機による外国の軍隊の動向に関する情報その他の我が国の防衛に資する情報の収集のための活動
  イ その他の改正事項
   ① 従来は日米の二国間訓練に参加する米軍のみを対象としていたが、日米を含む三カ国以上の多国間訓練に参加する
    米軍についても対象とすること
   ② 自衛隊施設に一時的に滞在する米軍に加えて、自衛隊が米軍施設に一時的に滞在する場合に共に現場に所在する米
    軍を対象とすること
   ③ 提供の対象となる物品に、弾薬を含めること

(4)国外犯処罰規定の整備(122条の2)
  以下に係る罰則について国外犯処罰規定を整備する。
   ① 上官の職務上の命令に対する多数共同しての反抗及び部隊の不法指揮
   ② 防衛出動命令を受けた者による上官命令反抗・不服従等



2 船舶検査活動法の改正

 ・周辺事態安全確保法の見直しに伴う改正
 ・国際平和支援法に対応し、国際社会の平和と安全に必要な場合の船舶検査活動の実施
  背景:本法制定当時、周辺事態の場合以外における船舶検査活動の実施については別途の検討課題との位置付け
  必要性:安全保障環境の変化、積極平和主義、切れ目のない対応の実施を可能とする法制の実現
   ① 我が国の平和と安全:「周辺事態」の見直しに伴う改正(重要影響事態安全確保法の目的に対応)
   ② 国際社会の平和と安全:国際平和共同対処事態における活動の実施(国際平和支援法の目的に対応)
   ③・船舶検査委に際しての船長の承諾(N/C)、所謂非混交要件(N/C)
    ・自己保存型の範囲内での武器使用権限に、「自己の管理下」の追加
    ・同意に基づく外国領域における活動の実施を可能とする。



3 国家安全保障会議設置法(NSC設置法)の改正

(1)審議事項として、新たに以下のものを定める。
 ・ 存立危機事態への対処
 ・ 重要影響事態への対処
 ・ 国際平和共同対処事態への
(2)以下に関するものは、必ず審議しなければならない事項とする。
 ・ 国際平和協力業務であっていわゆる安全確保業務の実施に係る実施計画の決定及び変更
 ・ 国際平和協力業務であっていわゆる駆け付け警護の実施に係る実施計画の決定及び変更
 ・ 国際連合平和維持活動に参加する各国の部隊により実施される業務の統括業務に従事するための自衛官(司令官等)
  の国際連合への派遣
 ・ 在外邦人の警護・救出等の保護措置の実施
(※)いずれも領域国等の受入れ同意の安定的維持等に係るもの



4 附則により技術的な改正を行う法律の一覧

  ① 道路交通法
  ② 国際機関等に派遣される防衛省の職員の処遇等に関する法律
  ③ 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
  ④ 武力紛争の際の文化財の保護に関する法律
  ⑤ 原子力規制委員会設置法
  ⑥ 行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
  ⑦ サイバーセキュリティ基本法
  ⑧ 防衛省設置法
  ⑨ 内閣府設置法
  ⑩ 復興庁設置法



5 評価等

(1)現実的でなかった規定が現実的になり、現場の自衛隊が対応に悩むことがなくなったと考える。
(2)国会の論戦ではあまり採りあげられないが、・・・・

(了)