山下塾第5弾

山下 輝男

第二十五話「平和安全法制の概要(8)自衛隊の海外派遣等の基本」

 本話は、自衛隊の海外における活動の増大に対する懸念を払拭するために、与党協議で公明党が主張し、自民党も基本的に受け入れた海外派遣3原則が如何に具現され、国会論戦で安倍首相が示した自衛隊派遣の3つの判断基準について見てみたい。
 既に新聞報道等でご存じとは思うが、既掲載第12話「「悪名高き12条の改正と政治優先原則」及び第17話「「一元化・統合化は必然か?」で期待を込めて書いた防衛省設置法改正案が、6月10日の参議院本会議で可決・成立した。



1 海外派遣3原則(明示的に原則とされている訳ではないが・・)

 ①自衛隊の海外における活動の国際法上の正当性の確保
 ②国民の理解と民主的な統制
 ③自衛隊員の安全確保



2 自衛隊の海外における活動の国際法上の正当性の確保

(1)国際平和共同対処事態における協力支援
  〇要件
 次のいずれかの国際連合の総会又は安全保障理事会の決議が存在する場合
 ① 国際社会の平和及び安全を脅かす事態に対処するための活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、又は認める決議
 ② ①に掲げるもののほか、当該事態が平和に対する脅威又は平和の破壊であるとの認識を示すとともに、当該事態に関
  連して国際連合加盟国の取組を求める決議
 〇法文上の取り扱い
 国際平和支援法の対象となる活動を規定する定義規定に明記
(2)国際連携平和安全活動
 〇次のいずれかが存在する場合
  ① 国際連合の総会、安全保障理事会又は経済社会理事会が行う決議
  ② 次の国際機関が行う要請
  ・国際連合
  ・国際連合の総会によって設立された機関又は国際連合の専門機関で、国際連合難民高等弁務官事務所その他政令で定
   めるもの
  ・当該活動に係る実績若しくは専門的能力を有する国際連合憲章第五十二条に規定する地域的機関又は多国間の条約に
   より設立された機関で、欧州連合その他政令で定めるもの
  ③ 当該活動が行われる地域の属する国の要請(国際連合憲章第七条1に規定する国際連合の主要機関のいずれかの支持
   を受けたものに限る。)
 〇 法文上の取り扱い
  国際平和協力法の活動を規定する定義規定に明記



3 国民の理解と民主的な統制

  自衛隊の行動に係る国会承認をもって民主的な統制と解するということで、
(1)重要影響事態における後方支援活動等(重要影響事態安全確保法)
 〇原則事前の国会承認
  例外緊急の必要がある場合の事後承認
 (注)自衛隊の部隊等が実施する後方支援活動、捜索救助活動及び船舶検査活動の実施について承認を得る
 〇・「具体的な方向性」に明記
  ・現行の周辺事態安全確保法の規定を維持
  ・基本計画(決定・変更・対応措置の結果)の国会報告あり
(2)国際平和共同対処事態における協力支援活動等(国際平和支援法)
 〇例外なき事前承認
 (国会の議決について各院7日以内の努力義務規定あり。派遣が2年を超える場合の再承認規定あり(その場合のみ国会
  が閉会中又は衆議院が解散されている場合の事後承認可))
 〇・基本計画(決定・変更・対応措置の結果)の国会報告あり
(3)国際連携平和安全活動(国際平和協力法)
 〇停戦監視活動及びいわゆる安全確保活動のみ事前承認の対象
 (その場合、国会が閉会中又は衆議院が解散されている場合の事後承認可。)
 〇・現行の国際平和協力法に基づき国連平和維持活動に参加する場合の規定を踏襲
  ・実施計画(決定・変更・実施の結果・期間の変更)の国会報告あり
  ・派遣が2年を超える場合の再承認規定あり
  ・国会は7日以内に議決する努力義務規定あり
(4)存立危機事態への対処のための防衛出動(自衛隊法)
 〇原則事前の国会承認
  例外特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合の事後承認
 (注)対処基本方針について別途国会承認を得る
 〇・7月1日の閣議決定に明記。
  ・現行の防衛出動と同じ。
  ・対処基本方針(廃止・対処措置の結果)の国会報告あり
(5)船舶検査活動(船舶検査活動法)
 〇・我が国の平和と安全に関わる場合
   重要影響事態安全確保法に定めるところによる。
  ・国際社会の平和と安全に関わる場合
   国際平和支援法に定めるところによる。
 〇・「具体的な方向性」には、(要件の違いを考慮し)「国会の関与の在り方について、検討する」と記述
  ・基本計画の国会報告等は重要影響事態安全確保法、国際平和支援法に連動



4 自衛隊員の安全の確保

(1)国際平和共同対処事態における協力支援活動等(国際平和支援法)
 ○安全配慮規定
  防衛大臣は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、自衛隊の部隊等の安全の確
  保に配慮しなければならない。
 ○実施区域の設定
  防衛大臣は、実施要項において、実施される必要のある役務の提供の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円
  滑かつ安全に実施することができるように当該活動を実施する区域(「実施区域」)を指定するものとする。
 ○活動の中断
  防衛大臣は、実施区域の全部又は一部において、自衛隊の部隊等が活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると
  認める場合又は外国の領域で実施する活動についての当該外国の同意が存在しなくなったと認める場合には、速やかに、
  その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。
 ○一時休止
  支援活動を実施している場所若しくはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合若しくは付近の状況等に照ら
  して戦闘行為が行われることが予測される場合又は当該部隊等の安全を確保するため必要と認める場合には、当該活動
  の実施を一時休止し又は避難するなどして危険を回避する。
(2)国際連携平和安全活動(国際平和協力法)
 ○安全配慮規定(上記と同旨(本部長は協力隊の隊員の安全の確保に配慮))
 ○業務の中断及び危険を回避するための一時休止その他の協力隊の隊員の安全を確保するための措置を定めた実施要領の策定
(3)在外邦人等の保護措置(自衛隊法)
 ○予想される危険に対応して保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と外国の権限ある当局との間の連携
  及び協力が確保されると見込まれること



5 安倍首相が示した3つの基本的判断基準

  5月28日衆議院特別委員会で、公明党の北側氏の質問に答える形で、
  ①外交努力を尽くしたうえで、
  ②わが国の主体的な判断のもと、
  ③自衛隊の能力や装備などにふさわしい役割を果たすこと
 の3点を、政策判断をしていくうえで、基本的な判断基準とする考えを示した。



6 評価等

(1)厳しすぎる歯止めは、機動的柔軟な運用を妨げないか?国民の理解を得るためにはある程度の厳しさのある歯止めの
  必要性は認めるものの、硬直化を招かぬか危惧する。
(2)首相の明示した政策判断にあたっての判断基準
  当然の判断基準であるが、国民の理解を得るには必要だろう。


(了)