山下塾第5弾

山下 輝男

第二十八話「世論調査に見る意識の変化と課題」

 先日(3月7日)、自衛隊・防衛問題に関する世論調査結果が発表された。本世論調査はいわば、自衛隊・防衛問題に関する定点観測であり、その動向を見れば国民意識が奈辺にあるかが見え、我々が何をなすべきかが浮かび上がってくる。同じような設問による調査が3年毎に16回行われており、この調査結果を真摯に受け止めるべきだろう。
 本話では、世論調査結果を概観する。何かを感じて貰えれば幸いである。


1 最新世論調査結果に係る報道
(1)毎日新聞(2015年03月07日)
 http://mainichi.jp/select/news/20150308k0000m010045000c.html
内閣府世論調査:「自衛隊増強を」29.9%、過去最高
 内閣府は7日、「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の結果を発表した。国連平和維持活動(PKO)や国際緊急援助活動などについて「現状を維持すべきだ」との回答が2012年の前回調査より4.1ポイント増え、65.4%に達した。「これまで以上に積極的に取り組むべきだ」は同2.2ポイント減の25.9%だった。自衛隊の体制は「今の程度でよい」が59.2%で前回(60%)と同水準だったが、「増強した方がよい」は29.9%で前回より5.1ポイント増え、1991年に同じ質問を始めてから最高になった。
 調査は1月8〜18日、全国の成人男女3000人を対象に個別面接方式で行い、1680人から回答を得た。回収率は56%だった。政府は69年から3年ごとに調査を実施している。
 自衛隊が力を入れるべき分野を複数回答で聞いたところ、「災害派遣」が72.3%で最多だった。このほか、「国の安全の確保」(69.9%)▽「国内の治安維持」(48.8%▽「国際平和協力活動への取り組み」(35.7%)−−などが上位を占めた。自衛隊に「良い印象を持っている」は前回より0.5ポイント増の92.2%で、過去最高を更新した。
 一方、日本が戦争に巻き込まれる危険が「ある」「どちらかといえばある」は計75.5%で3.2ポイント増えた。理由(複数回答)は「国際的な緊張や対立があるから」(82.6%)が最も多かった。
 今回の調査では、集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定や、政府・与党が進める安全保障法制の整備に関する質問はなかった。【高橋克哉】

(その他のメディアの報道タイトルのみ)
(2)産経:自衛隊に「好印象」92%で過去最高 
(3)読売新聞:「自衛隊に良い印象」92%、過去最高を更新
(4)時事:国際協力「現状維持」65%=自衛隊活動拡大に慎重-内閣府調査
(5)朝日新聞: 自衛隊の海外活動、「現状維持で」65% 内閣府調査
(6)中日新聞:自衛隊の国際協力「現状維持を」65% 内閣府世論調査
(7)NHK:自衛隊「増強した方が良い」が30%
注:朝日新聞を除く各紙等の記事は発表当日の7日であるが、朝日は何故か3月9日付である。
採りあげ方でだいぶん印象が違うものである。


2 内閣府が行う世論調査の概要(http://survey.gov-online.go.jp/faq.html#zenpan
 内閣府HPによれば、以下の通りである。
(1)世論調査」とは何ですか
 内閣府では、基本的な国民意識の動向や政府の重要施策に関する国民の意識を把握するために、ほぼ毎月「世論調査」を実施しています。
 世論調査は、統計的な方法で(一種の「抽選」で)選んだ全国の20歳以上の男女3,000人(テーマによっては5,000人や10,000人の場合もあります)を対象に実施しています。
 世論調査は、正確な結果を得るため、調査員による訪問面接によって行っています(一部の調査は郵送で行う場合があります)。
 世論調査の結果は、内閣府のホームページや報告書によって公表されます。
(2)「特別世論調査」とは何ですか
「特別世論調査」は、通常の世論調査の最後に質問を5問程度付け加える形で、世論調査と同時に実施しています。
 特別世論調査の結果は、世論調査と同様に、内閣府のホームページや報告書によって公表されます。
(3)世論調査はどうやって実施しているのですか
 世論調査は、全国の縮図となるように統計的な方法で(統計学の理論に基づいた一種の「抽選」で)、全国から3,000人(テーマによっては5,000人や10,000人の場合もあります)を選んで、選ばれた方々を対象に調査を行っています。
 調査に当たっては、調査員が選ばれた方々のご自宅に訪問して、ご本人に面接して質問し、ご回答をいただきます(一部の調査は郵送で行う場合があります)。
 お答えいただいたご回答は、すべて数字に直し、グラフなどに加工され、内閣府のホームページや報告書で公表されます。

 残念ながら、回答の栄に浴したことはない。


3 自衛隊・防衛問題に関する世論調査の経緯
(1)自衛隊に関する初めての調査
  自衛隊、或いは防衛問題等に関する世論調査は、自衛隊発足間もない昭和31年1月に初めて実施された。この時の
 調査項目は ①自衛隊についての印象及び増強に対する意見 ②防衛力の強化に対する賛否と論拠 ③憲法改正の賛否等である。
(2)知識・関心・評価等を問う調査
  昭和36年10月、昭和38年6月
  広報、隊員募集等の設問を付加しての調査
  昭和40年11月、昭和42年8月
(3)現在のような設問内容
  昭和44年以降3年ごとに実施されてきた。
  昭和44年9月、昭和47年11月、昭和50年10月、昭和53年12月
  昭和56年12月、昭和59年11月、昭和63年1月、平成3年2月
  平成6年1月、平成9年2月、平成12年1月、平成15年1月、平成18年2月
  平成21年1月、平成24年1月、平成27年1月
(4)臨時的な調査
  平成7年7月 今後の自衛隊の役割 


4 設問紹介
 平成1月実施された世論調査の設問は次の通りである。
 1.自衛隊・防衛問題に対する関心
 (1)自衛隊や防衛問題に対する関心
   ア 自衛隊や防衛問題に関心がある理由
   イ 自衛隊や防衛問題に関心がない理由

 2.自衛隊に対する印象 (1) 自衛隊に対する印象

 3.防衛体制についての考え方 (1) 自衛隊の防衛力

 4.自衛隊の役割と活動に対する意識
 (1)自衛隊が存在する目的
 (2)自衛隊が今後力を入れていく面
 (3)自衛隊の災害派遣活動に対する評価
 (4)自衛隊の海外での活動に対する評価
 (5)国際平和協力活動への取組

 5.防衛についての意識
 (1)身近な人が自衛隊員になることの賛否
   ア 身近な人が自衛隊員になることに賛成の理由
   イ 身近な人が自衛隊員になることに反対の理由
 (2)外国から侵略された場合の態度
 (3)国を守るという気持ちの教育の必要性

 6.日本の防衛の在り方に関する意識
 (1)日米安全保障条約についての考え方
 (2)日本の安全を守るための方法
 (3)日本が戦争に巻き込まれる危険性
   ア 日本が戦争に巻き込まれる危険があると思う理由
   イ 日本が戦争に巻き込まれる危険がないと思う理由
 (4)日本の平和と安全の面から関心を持っていること
 (5)米国以外との防衛協力・交流を行うことについての意識
   ア 役立っていると考える国・地域


5 興味ある設問に対する調査結果の変遷
 同じ設問に対する回答がどのように変遷しているかを知ることが重要である。
(1)自衛隊・防衛問題に対する関心(平成24年調査までは防衛白書)

平成27年1月調査結果

 関心がある:71.5% 
 関心がない:28.2%


(2)自衛隊に対する印象

平成27年1月調査結果

 良い印象を持っている:92.2%
 悪い印象を持っている:4.8%


(3)自衛隊の防衛力

平成27年1月調査結果
 増強した方が良い:29.9%
 今の程度で良い :59.2%
 縮小した方が良い: 4.6%


(4)国を守るという気持ちの教育の必要性

平成27年1月調査結果
 必要がある: 72.3%
 必要はない:21.6%


(5)身近な人が自衛隊員になることの賛否

平成17年度調査以降
年度 18/2 21/1 24/1 27/1
賛成(どちらかというとを含む) 51.8 64.7 72.5 70.4
反対(どちらかというとを含む) 36.9 23.9 19.2 23.0

平成14年度以前



(6)外国から侵略された場合の態度
本設問は昭和50年度から設けられている。




6 所懐と課題
(1)創隊以来の地道な努力が認知
 自衛隊や防衛問題に関する関心が高くなり、自衛隊に対する印象も極めて良好であるのは、冷戦終焉後の日本周辺の情勢の緊迫化もあるが、自衛隊が地道且つ愚直に果たしてきた各種任務・行動が国民に高く評価されてきた証左である。私生児的に誕生した組織がかくも高い評価を得るに至ったのは驚きである。創隊以来、自衛隊にかかわってこられた全ての関係者に敬意を表したい。
 そして、言うまでもないが、信頼を勝ちうるのは至難であるが、失うのは一瞬である事に思いを致して、現役諸官が精進して頂きたいものである。

(2)自衛隊に対する印象の高さが自衛隊との一体感までに昇華していないのでは
 自衛隊に対する印象が年々高くなっているものの、身近な者の自衛隊への入隊への同意には未だしである。平成14年度調査以降ではやや解りにくいが、以前の調査を見れば、入隊への賛成は多くなっているものの、本人の意思に任せるが依然として高く、積極的に薦めると云う気運にはない。残念である。

(3)外国からの侵略への態度について
 何らかの方法で抵抗をするという意識が広まっているのは喜ばしいことである。
 どのような抵抗を意識しているのか不明であるが、国民が積極的に抵抗し得るようなシステムづくりが必要である。防衛のための戦いは自衛隊のみが行うものではない。
 武力によらない抵抗及び一切抵抗しないという人々も少ないとはいえ、厳然として存在している。個人の処世訓としては許容し得たとしても、国民としては如何なものか?無抵抗主義、武力悪玉論が相変わらず跳梁跋扈している。

(4)国民教育の必要性
 前述(2)(3)項の現状を改善するためには、しっかりとした公民教育・愛国心教育及び人間教育が必要だ。某国のような愛国無罪のような過激主義に陥ってはならないが、あるべき愛国心教育が求められる。

(了)