山下塾第5弾

山下 輝男

第三十九話 「空白域はなくなるが、・・・・」

 山下塾では、過去2回第15話と第31話において南西諸島防衛に関する話題を取り上げたが、今回はその後具体化されつつある事項等について、主としてネット上の情報等を参考にして説明しつつ、私見を述べたい。


1 現中期間の施策(2014~18年度)
  先ず、2018年度までの中期防衛力整備計画に示されている南西諸島防衛に関する内容を確認する。以下に
 示すように、それぞれ副大臣等による地元説明が行われ、予算措置が取られ、既に工事が始まっているところも
 あり、着々と進捗していることは喜ばしい限りである。



 ◎陸上自衛隊
  (1)水陸機動団の新編、即応機動連隊の新編、機動戦闘車の導入、オスプレーの導入
  (2)警備部隊等の配備
   ○ 与那国島 150人規模の沿岸監視部隊(2015年度)
    現在駐屯地の建設工事中
   ○ 宮古島  700~800人  (~2018まで)
    有力候補地:市平良の大福牧場と同市上野の千代田カントリークラブの2カ所、
    陸自の警備部隊と地対艦ミサイルと地対空ミサイルの両部隊
    来年度予算新駐屯地の用地取得費等 108億計上 
   ○ 奄美大島  550人規模 2か所に分置 来年度予算造成工事費86億円計上
    配置案
    奄美市: 警備部隊と中距離地対空誘導弾部隊 約350人
         名瀬市大熊のゴルフ場に駐屯地 400億円
    瀬戸内町:警備部隊と地対艦誘導弾部隊 約200人
         節子地区に実弾訓練場、弾薬庫

 ◎航空自衛隊:  F-15部隊の2個飛行隊化⇒第9飛行団の新編
  那覇基地には、築城基地のF-15が20機移駐され、築城基地には三沢基地のF-2が20機移駐される(尚、三沢基地
  には、次期主力戦闘機F-35が随時配備される)。これで那覇基地にF-15が40機、築城基地にはF-2が40機となり、
  那覇と築城で80機体勢になる。


2 次期中期(2019~23年度)の施策
  陸上自衛隊 
   石垣島500~600人 警備部隊、地対空誘導弾部隊、地対艦ミサイル部隊
   候補案:サッカーパークあかんま、新旧の石垣空港周辺、大崎牧場周辺等が取りざたされている。


3 下地島空港への自衛隊配備の検討
  尖閣諸島に近く(下地島から約190㎞)、3000Mの滑走路があり、現在は、航空機の訓練専用施設として利用されている。
  ・南西諸島防衛における那覇基地と同等の価値、代替・補完、
   スクランブルにも有効、
  ・屋良覚書(沖縄返還の前年の1971年に政府と当時の琉球主席屋良朝苗氏の間、軍民共用化せず、緊急時を除く)
   の取り扱いが課題か?

4 点在する島嶼間の防衛に不可欠な地対艦誘導弾と地対空ミサイル
  島嶼間の相互支援を可能として強靭な防御戦闘(防御の要則に“相互支援”があり、お互いに隣接する陣地の前面等を
 射撃支援できるように編成することにより陣地の靭強性を確保する。)を行うためには、隣接拠点の前面を十分に射撃
 できるミサイルと、当該拠点を防護する普通科部隊と対空部隊が必要である。
  それらに運用される装備には、次のようなものがある。

 (1)12式地対艦誘導弾
   88式地対艦誘導弾の後継であり、開発所要経費は約138億円。艦船における対艦ミサイル迎撃能力の向上に
  対応し、主にミサイルの生存性向上が改良の主眼となっている。2012年度から調達が開始


ミサイル直径:約0.35m  ミサイル全長:約5m  ミサイル重量:約700kg
射程:百数十km
推進方式
 固体燃料ロケットモーター(ブースター)+ターボ   
 ジェットエンジン(巡航用)

 (2)03式中距離地対空ミサイル(略称は「SAM-4」、通称「中SAM」。)
   地対空誘導弾 改良ホークの後継種として配備。高い機動展開性により有事即応可能。操作要員の省力化、
  20人体制で運用可、システム一式の完全車載・自走化で機動力向上


   ミサイル本体は発射筒を兼ねた角型コンテナに収められた状態で、発射装置及び運搬装填装置に各6発ずつ
  搭載されており、垂直発射方式で展開用地確保が容易

   レーダーはアクティブフェーズドアレイレーダーであり、100目標を追尾し、12目標を補足可能である。
  レーダーは1基で標的捜索のほか、目標の追尾および射撃管制も行う。また、高度なECCM(対電子妨害対処)
  能力と多目標同時対処能力を持ち、空対地ミサイルや巡航ミサイルによる遠距離攻撃に対処する能力も有すると
  されている。レーダーは回転することにより、全周捜索を行う。将来的にはE-767早期警戒管制機や、2011年
  から配備が始まる対空戦闘指揮統制システムなどとのデータリンクによる戦闘能力の向上も予定されている。

   ミサイル誘導方式は中間指令誘導とアクティブレーダーホーミングの組み合わせとなっている。

   射程については正確な数値は不明であるが、期待できよう。

5 評価と課題
(1)南西諸島における防衛上の空白域の解消
   中国の海洋進出、尖閣諸島域における中国公船等の活動、南シナ海における行動等から、南西諸島域が空白
  になっていることが懸念されていたが、今次中期防等で空白域が解消されつつあるのは喜ばしいことである。

(2)最重要拠点の那覇基地、相互支援拠点の機能の確固たる保持対策の必要性
   南西諸島への侵攻をまず抑止、次の段階は洋上阻止で、次いで上陸阻止、状況により奪回という作戦が
  考えられる。これらの作戦上、重要な拠点は空海の基地の抗堪性の確保であり、島嶼間の相互支援に任ずる
  拠点の抗堪性の確保である。防空能力や対ゲリラ能力を確実にする必要がある。

(3)南西諸島域への自衛隊の機動展開能力の大幅な増強を
   南西諸島域に配置される部隊のみで防衛を全う出来るのではなく、日本全国から部隊や兵站物資を南西諸島域
  に迅速に戦略機動展開・輸送する必要がある。この成否こそが南西諸島防衛の成否そのものである。自衛隊の
  輸送能力のみでは、不十分であることは自明であり、我が国の利用可能な輸送力を如何に活用するかが、真剣に
  検討され、具体化されねばならない。

(4)訓練の積極的推進
   広域、点在する島嶼の作戦は、共同・統合の防衛作戦、戦略機動の重要性もあり、島嶼奪回作戦は極めて
  困難等々であり、高度な訓練を要する。
   南西諸島防衛作戦では、本土防衛作戦以上に国民の避難・保護が要求され、またこの問題は極めてセンシティブ
  であり、周到な計画を要する。

(5)辺野古への移設を速やかに実施して、日米連携を更に高めるべし
   防衛作戦は国民の確固たる支持なくして成り立たない。辺野古移設に関して沖縄県民の意見が分断されているが、
  このことが南西諸島防衛に悪影響を及ぼさねば良いがと懸念している。そういう意味においても、辺野古移設問題を
  早急に解決することが重要である。沖縄知事の予想外の法廷闘争作戦で、移設は長引く可能性もあるが、速やかな
  解決が望まれる。

6 終わりに
  我が国防衛態勢の空白域は埋まりつつあり、そのこと自体は喜ぶべきであるが、問題はただ埋めたということに
 ならぬように実効的な態勢とすることである。自衛隊の態勢強化は勿論、日米共同を更に深化させることが必要だ。
 また、戦略展開を如何に迅速に行える体制を取り得るかが重要な点であり、この点における国家的な努力・英断を
 期待するものである。

(了)