山下塾第6弾

山下 輝男

第十二話 テロ対策について

1 日本が直面するテロの脅威
 下図の2枚は、先般の講演時(6月8日)に使用したものである。これ以降もテロは
 ①バングラデシュのダッカ レストラン襲撃テロ日本人7名が巻き込まれて死亡する事案(7月1日)
 ②フランスニースのテロ(7月14日)トラック暴走84名死亡
 ③7月23日アフガンカブールISによる大規模自爆テロで80人死亡等
 ④ブラジル五輪テロ計画?10名逮捕7月22日
  8月以降も中東、欧州、アジア、オセアニア等で頻発   詳細は、公安調査庁HP世界のテロ等発生状況    http://www.moj.go.jp/psia/terrorism/index.html  中東では頻発
 等、世界各地で頻発している。
 伊勢志摩サミット及び東京マラソンは、テロに対する厳重な警戒の下に実施され特段の事件もなく関係者のみならず国民全てが安堵したところである。
 偶々起きなかっただけであるかもしれない。次回、起きないという保証はない。日本も対岸の火事視することは許されない状況である。日本のみが標的となっているのではなく、欧米諸国と同列視されて対象となっている。
 日本のみが、テロリスト集団やテロに寛容的な姿勢をとることが果たして善であろうか?そのようなことが許されるはずもなく、日本は国際社会と連帯・協調してテロに毅然たる態度をとるべきであり、その限りにおいて彼等テロリストからは明らかに敵なのだ。このことをしっかりと認識することが必須である。




 最近のテロはソフトターゲットが目標だと云われる。警備や警戒が薄く、テロ攻撃の標的となりやすい場所や人が狙われている。レストラン、ホテル、コンサートホテルなど不特定多数の人が集まる民間の場所や建物、民間人がそれに相当する。
 最近のテロ事件の特徴のもう一つは、ホームグローンテロリストの存在である。海外・外国から潜入してきたテロリストによる犯行もあるが、自国において、ネット等を通じて過激思想に染まった若者がテロリストと化すこともままある。彼等は一般的には国際テロ組織からは独立的だ。
 最近はアルカイーダに代わってイスラム国によるテロが猖獗を極めている。
 また、不幸なことだが、テロの頻発が特に欧米諸国において反イスラム感情を誘引している。トランプのような人物が大統領候補になるのだから恐れ入る。
 テロリストは社会の下層に合って虐げられし(或いはそう確信している)者との認識が一般的だったが、富裕・恵まれた者がテロリストになるケースも多くなりつつある。


2 主なテロの未然防止対策
 内閣官房において、「テロ対策の現状」を毎年発表している。その項目内容は下図の通りである。


 主なテロの未然防止対策の現状最新版(平成27年12月4日)
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sosikihanzai/taisaku_genjo.pdf

 情報ユニットとは、海外で国際テロリズム関連の情報を収集する政府の「国際テロ情報収集ユニット」が2015年12月8日、発足した。外務省の総合外交政策局の情報収集組織の一つであり、外務省、警察庁、防衛省、公安調査庁、内閣情報調査室出身の約20人の職員で構成される。現地の語学や地域情勢に詳しい職員らが選抜されており、北アフリカ、中東、西南アジア、東南アジアの4班に分かれ、現地の大使館に赴任して情報収集を行う。また、各国の情報機関との連携も目指している。
 情報保護協定とは、部隊の運用計画や装備品の性能など防衛秘密を締結国間でやりとりするための枠組みである。提供した秘密情報が流出しないよう、相互に厳しい管理を義務付けている。安全保障に関する秘密を幅広く共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も含まれる。日本はこれまで米国、英国、フランス、オーストラリア、北大西洋条約機構(NATO)と締結済みで、イタリアとも大筋合意した。韓国とは日韓関係の悪化などで交渉が中断している。
 オシントとは、オープン・ソース・インテリジェンス( open-source intelligence)の略語で、諜報活動の分野のひとつで、他のHUMINT(ヒューミント)やSIGINT(シギント)と呼ばれる分野が主として「秘密の情報をなんとかして得る」ことを旨とするのに対し、公然に公開される情報を情報源とすることが特徴である。「合法的に入手できる資料」を「合法的に調べ突き合わせる」手法で、情報源は政府の公式発表(プレスリリース)、マスメディアによる報道、インターネット、書籍、電話帳、科学誌その他を含む。具体的には、対象国の方針を割り出すために、対象国の新聞社交欄、ニュースの断片、人事の異動発令などを丹念に集積し、分析するといった手法である。
 これらの活動を通じてテロに関する情報を収集・分析している。
 外国人の入国審査 テロリストの顔画像と照合を全国156か所の空港や港で10月17日から実施すると法務省が発表した。対象者は、16歳未満の子供や外交官、在日韓国・朝鮮人などの特別永住者らを除く全ての外国人になるという。相当な抑止効果が期待できよう。


3 テロ対策の肝は
 テロ対策の現状と課題については、山下塾第4弾に譲る(http://www.jpsn.org/lecture/yama_vol4/)が、テロ対策の肝は何であろうか?
 日本の特性を最大限に活かすことが必要だ。我が国の弱点は、情報収集能力が弱体であるということであり、その強化が必要だ。
 何れにしろ、テロには決して屈しないという国民の気概が重要である。テロを恐れるのはそれで既にテロリストの術中に嵌まっていると云える。テロを警戒することは必要だが、恐れる勿れ、されど侮る勿れである。
 監視・探知・対処機材の開発と要点への配備が重要だ。日本の技術力は十分にそれに応え得る筈だ。プライバシーの観点からも収集した情報の管理は勿論重要である若者は特に過激思想に感化されやすい。青少年に対する啓蒙が必要であり、社会のコミュニティの充実による若者に社会参画意欲の喚起等も重要だろう。
 テロを起こしにくい社会を創造することが必要。最大の抑止力は市民の目だ。


共謀罪の必要性について
 共謀罪改めテロ準備罪を検討中
  国連の国際組織犯罪防止条約に締結に向けた法整備に必要
  過去3回国会提出も廃案
  根強い反対論があり、その誤解を如何に解くかが鍵!


4 山下塾第6弾を終えるに当たって
 第二次安倍内閣の発足により、安全保障・防衛関係の態勢整備は一気に進んだと思える。自衛隊発足後70年の課題の多くが解決され、そうなりつつあるとも云える。
 最後に、小生の関心事項の幾つかを提示して、山下塾第6弾の終わりとしたい。

①憲法改正に前向きな勢力が、憲法改正発議に必要な衆参両院の2/3を越えたとは云え、認識が全て一致している訳ではない。更に、仮に両院で発議されても、国民投票で可決されるとの確信は得られていない。国民投票の危うさは(と云うと怒られるかも知れが、・・)英国の国民投票で歴然だ。従って、両院での熟議と国民理解の努力が望まれる。焦る必要は毛頭ないが、さりとて戦後70年の課題は早急に解決したいものである。
②平和安全法制に関する国民理解も十分ではない。成立したとは云え、扇動的な批判に屈した感さえもある。政府与党等の更なる周知・啓蒙・努力が必要だ。
③グレーゾーン事態対応と南西諸島正面の防衛態勢強化は喫緊の課題である。
④自衛隊を本来の武力組織として位置づけ、それに相応しい防衛法制整備と名誉処遇改善を推進すべきだ。参考:http://www.jpsn.org/lecture/yama_vol5/8977/
⑤軍事に対する政治のコントロールを如何に担保するかは、極めて重要である。その為の確固たる仕組みを構築すべきだろう。
⑥国民・政治家の軍事や安全保障に係る識能を高めることも必要だ。一部専門家のみに任せて良い問題ではないと思料する。

 自衛隊勤務の中から、一般社会の中で参考になることも多々あり、その幾つかを提示した。参考にして頂ければ幸甚である。

(了)