山下塾第6弾

山下 輝男

第五話 日本の国家戦略と安全保障戦略(その2)

3 我が国周辺の安全保障環境
 国内外情勢を考える視点を考察し、情勢の概観をした。愈々我が国が直面する安全保障環境を少々仔細に見てみたい。講演で使用した下図を見て頂きたい。図は防衛白書からの転載である。


(1) 中国の活動概要
 ア 第一及び第二列島線
   第一列島線及び第二列島線は、中華人民共和国の軍事戦略上の概念のことであり、戦力展開の目標ラインであり、
  対米防衛線であると云われる。
   第一列島線は、九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるラインを指す。中国海軍および
  中国空軍の作戦区域・対米国防ラインとされる。マスコミ発表ではこの第一列島線に日本列島の一部が含まれており、
  日本の一般国民には寝耳に水であったため、一時期問題となった。
   中国海軍にとっては、台湾有事の際の作戦海域であり、同時に対米有事において、南シナ海・東シナ海・日本海
  に米空母・原子力潜水艦が侵入するのを阻止せねばならない国防上の必要のため、有事において、このライン内に
  おいては、制海権を握ることを目標として、戦力整備を行っており、また作戦活動もそれに準じている。
   第二列島線は、伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るラインである。
  近年に至るまで、中華人民共和国の海洋調査は、第一列島線付近までに留まっていたが、このところは第二列島線
  付近でも調査を行っている。海洋調査は他国の排他的経済水域内では行えないため、第二列島線付近にある沖ノ鳥島
  問題が持ち上がっている。
   この第二列島線は、台湾有事の際に、中国海軍がアメリカ海軍の増援を阻止・妨害する海域と推定されている。
  中国海軍は従来、沿岸海軍であったが、日本や台湾を含む諸外国・諸政権の実効支配下にある第一列島線を突破して
  第二列島線まで進出することは、すなわち外洋海軍への変革を目指していると考えられ、その動向が国内外で注目
  されている。




 イ 我が国周辺空域における中国の活動


   防衛省は5日、日本領空に接近した中国軍機に対する航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)回数が、
  今年4~6月で199回だったと発表した。昨年の同時期か ら85回増加し、四半期ベースで過去最多となった。
  東シナ海では中国軍艦が日本領海や接続水域への侵入を繰り返しているが、上空でも中国軍による軍事的圧力が
  高まっている実態が浮き彫りとなった。「尖閣諸島(沖縄県石垣市)近傍での活動も見られる」と指摘され、
  「中国軍の活動範囲が拡大、活発化している。エスカレーションの傾向にある。全体の緊急発進は281回で、
  そのうちロシア機が78回だった。

 ウ 我が国周辺海域における中国の活動



 エ 南シナ海における中国の埋立・人工島化状況



 オ 仲裁裁判所判決(7月12日) 中国の強引な海洋進出を厳しく指弾
   中国主張の九段線は全面否定、七つの人工島についても厳しい判決となった。
   中国は判決は紙くずと激しく反発した。世界は中国に海洋法遵守判決尊重を要求するも応ずる気配なしである。
  逆に実効支配を強める可能性すら指摘されている。当面の焦点はフィリピンのEEZ内にあり、中国が実効支配
  するスカボロー礁の軍事拠点化の動きである。上図の赤い三角形が完成してしまうと南シナ海の実効支配が完成
  してしまう。


(2) 北朝鮮



(3) ロシア
  ロシアは、10(平成22)年、東部軍管区および東部統合戦略コマンドを新たに創設し30、軍管区司令官のもと、
 地上軍のほか、太平洋艦隊、航空・防空部隊を置き、各軍の統合的な運用を行っている。極東地域のロシア軍の
 戦力は、ピーク時に比べ大幅に削減された状態にあるが、依然として核戦力を含む相当規模の戦力が存在しており、
 わが国周辺におけるロシア軍の活動には活発化の傾向がみられる。
  ロシア軍は、戦略核部隊の即応態勢を維持し、常時即応部隊の戦域間機動による紛争対処を運用の基本としている
 ことから、他の地域の部隊の動向も念頭に置いたうえで、極東地域のロシア軍の位置付けや動向について注目して
 いく必要がある。
 (防衛白書61p)