山下塾第6弾

山下 輝男

第十話 指揮・統御

 次の話題は、自衛官としての勤務の中で学んだことのうち、指揮・統御について説明する。自衛官は、特別職公務員であり、一旦緩急あれば、命を懸けて国家の防衛のために一身を捧げるべき使命がある。警察官や消防官も危機管理職域であるが、「~事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」との服務の宣誓をしている唯一の職域である。
 特に幹部自衛官は、それぞれの階級に応じて、小隊、中隊、大隊、連隊、旅団、師団等を指揮して任務達成をしなければならない。部下をして極めて厳しい状況に投じなければならない。必要最小限の犠牲で任務を達成するためには、学び修練すべき事項が余りにも多い。その一つが、指揮や統御に関する事項である。

1 統率とは
 統率は、指揮と統御の二面性があり、この両者が相俟って任務達成が可能となる。
 指揮とは、任務遂行のために職権によって部下に命令を実行させるように指図することである。具体的には部下に任務を付与し、資源の優先順位を示し、部隊行動を指導するものであり、決定された作戦計画に基づいた指示であり、また、最も基本的なリーダーシップの機能でもあるとされる。
 指揮の要訣は下図のとおりである。


 命令遂行の基礎・基盤は良好な統御である。部下をして、進んで命令に服させるものが統御だ。後述する。


  2 戦いの原則
 古今東西の戦争の歴史を通じて得られた軍事作戦を成功させるためのいくつかの原則や格言、規範を戦いの原則と称する。
 戦いの原則とは、将校にとって作戦指揮や意思決定の局面で行動の方針を検討する際の指針ともなる。
 各国の軍隊はそれぞれの戦いの原則を持っているが、それらは大同小異である。
 この原則は経営者やリーダー或いは通常の社会生活の中でも十分に活用できるものである。この原則が己の血となり肉となるまで、将校たるものは修練すべきである。
 その一例を下図に示す。


 言うまでもないことであるが、これらの原則を暗記しただけでは無意味である。この原則を実際の状況に如何に適合させるかが重要であり、それができるようになるには大変な修練が必要である。
 初心者には、常にこの原則を意識することから始めて貰えれば良いのではないだろうか?そのうち、何かが見えてくるかもしれない。


3 指揮官の位置について
 指揮官・リーダーが何処に位置するかは重要な決心事項である。指揮官の位置に関する原則は下図のとおりである。


 指揮所には、全ての情報が集約され、指揮官の決心を具体化する幕僚が位置している等、全ての機能が揃っているので、通所は指揮所に位置すべきである。
 小隊長等の位置と大部隊の指揮官の位置は異なる。小隊長は率先陣頭が大原則だ。
 位置取りパターンの2番目である。
 指揮官は焦点に位置すべしと云うが、焦点が何処か、何なのかをしっかりと認識すべきだ。


4 統御:将校に関する名言集
 統御には、威圧統御と心服統御がある。強圧的に部下を従わせる威圧統御は面従腹背を産み、永続的ではなく、極限状況下ではその効果は限定的だ。一方、心服統御は言うは易く、実際には部下を心服させて任務を遂行させるのは難しい。
 このような観点から、将校に関する名言の一部を紹介しよう。





5 平時における幕僚活動の9原則
 自衛官は云うに及ばず、殆どの者は指揮官やトップリーダーに補職される機会は少ないだろう。中間管理職はそのセクションのリーダーという側面と上級管理者のスタッフとしての側面をも有する。  平時における幕僚活動の9原則なるものがある。ご参考までにお示ししよう。



6 状況判断等
 人生は常に状況判断である。当時の状況に応じて最適の方針を決定する過程が状況判断である。  その詳細は省略するが、重要な事項を幾つか示したい。


 特に重要なのは、状況判断の基本的要件と云われるものである。小生は常にこの要件を意識し、自らに問いかけていた。

(了)