山下塾第7弾 防災と三助

山下 輝男

第三回講座 応急対策活動と国民の役割


初めに
第三回講座では、応急対策活動と国民の役割について考えてみましょう。


応急対策活動のイメージ
 作戦は、予期と不期の何れかで遂行することになり、云うまでもなく予期した範囲の作戦でなければ、勝てないでしょう。予期をもって、敵の不期を撃てということです。災害対応においても同じですね。災害を想定し、それに対応するために所要の準備を予め整え、発災した場合には当初計画を一部修正したのち応急対策活動を行うことになります。
 必要な部隊を呼集し、物資等を調達し、それらを必要な地域に集中すると共に、被災者の救出・救援活動を速やかに開始します。そのイメージは以下のスライドのようです。




首都直下地震における応急対策活動の概要
 下のスライドは、首都直下地震における応急対策活動の概要を示したものです。応急対策活動には、①救助、救急、消火 ②医療 ③物資 ④燃料 ⑤そして部隊やこれらを被災地に搬送するための緊急輸送ルートや防災拠点、留意事項である⑥帰宅困難者 の活動分野があります。これらの個々の内容は想定する地震や災害の状況により異なります。
 従来は、被災地からの要請に応じて所要の応急支援を行うというのが一般的でしたが、最近ではプッシュ型での支援ということで、要請・要求を待つことなく、所要の援助活動を行っております。




応急対策活動の評価について
 以下のスライドの項目内容について、若干の説明をします。



① 首都直下地震にしろ、南海トラフ巨大地震にしろ、それらの齎す被害は察するに我々の想像を上回るものと覚悟しなければなりません。公表されている被害は最大見積ではなく、最小見積或いはそれ以下と考えた方が良いのではないかとも考えます。それらに被害に比して救援機関の実動勢力は必要かつ十分なのでしょうか?勢力的に、或いは時間的に又は場所的にとても十分とは言えないのではないかと危惧します。
② 医療についても同様の懸念があります。被災地内の医療機関は被災者でもあり、医療施設も被害をも被っていると思わねばなりません。首都圏の医療関係が壊滅したら、何処から被災地に医療救援を行えるのだろうか?DMAT100組即ち300名の医療関係者ということですが、未曽有の医療所要に対応できるでしょうか?
 日本医師会がJMATを創設しましたが、(JPSN 一言言いたい欄参照)、厳しい状況は変わらないでしょう。
③ 物資や燃料についても上述と同じ認識です。
④ 確かに緊急輸送路は指定されていますし、必要ならば放置車両を排除することも可能ですが、それでも平素と同じ交通路の状況でしょうか?被害は受けていないと云えますか?
 これらの状況を考察すると暗澹たる気になります。これらの応急対策活動を行う国家、指定公共機関、地方公共団体による所謂「公助」の能力には限界があると認識すべきなのでしょう。
 公助の限界を補い、かつ公助をより重要な活動焦点に向けるためにも、個人や地域や企業等の積極的な協力が欠かせません。
 余談ですが、現地における具体的な応急対策活動を実態として差配する地方公共団体の危機対応能力もどうなのでしょう。まさか、日本で、首長が逃げることは有り得ないでしょうが、十全な識見を有しているという保証があるでしょうか?
 何れにしても、公助には限界があり、それを自助や共助で補わねばなりません。



地域防災マネージャー制度について



 地域防災マネージャー制度が創設されました。地方公共団体の危機管理能力が飛躍的に高まることを期待したいと思います。
 詳細については、JPSN一言言いたい欄の拙論を参照して欲しい。
 http://www.jpsn.org/opinion/word/9969/



防災における国民の役割



 防災においては、自助、共助、公助のバランスある実行が重要です。何れかに偏するのでは十全たる対処は出来ないでしょう。この三助が相俟ってというかその総合力で防災を全うすべきでしょう。

国民運動の展開
 中央防災会議は、平成18年4月21日「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」を決定しました。そこでは、「自然災害からの安全・安心を得るためには、行政による公助はもとより、個人の自覚に根ざした自助、身近な地域コミュニティ等による共助が必要であり、社会の様々な主体が連携して減災のために行動すること、それらの主体がしかるべき安全のための投資を行うことが必要である。そしてこの行動と投資を持続させるための社会の仕組みを作っていかねばならない。」とし、国民運動の展開を謳っている。



 その基本方針は以下のとおりである。
 項目のみ示すので委細は「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/17/pdf/shiryou2.pdf)を参照して頂きたい。

1 防災(減災)活動へのより広い層の参加(マスの拡大)
(1)地域に根ざした団体における身近な防災への取組
(2)予防的な取組を加味した防災訓練の工夫
(3)地域における耐震補強の取組の面的な広がりの推進
(4)防災教育の充実
(5)トップから一人一人まで参加者への動機づけ
2 正しい知識を魅力的な形でわかりやすく提供(良いコンテンツを開発)
(1)多様な媒体の活用による防災教育メニューの充実
(2)災害をイメージする能力を高めるための質の高い防災教育コンテンツの充実
(3)災害のリスクや対策等に関する情報の作成、公開、周知の徹底
3 企業や家庭等における安全への投資の促進(投資のインセンティブ)
(1)企業や家庭等における安全への投資の促進
(2)ビジネス街、商店街における防災意識の醸成
(3)事業継続計画(BCP)への取組の促進
4 より幅広い連携の促進(様々な組織が参加するネットワーク)
(1)企業と地域社会の連携
(2)様々な主体が連携した地域における防災教育の推進
(3)災害に関する情報のワンストップサービス
(4)防災ボランティアの地域社会との積極的な連携
5 国民一人一人、各界各層における具体的行動の継続的な実践(息の長い活動)
(1)国民運動の継続的な推進枠組みの形成
(2)地域における防災活動の継続的な推進の枠組み作りの促進
(3)防災活動の優良な実践例の表彰
(4)人材育成のためのプログラムの開発
(5)インセンティブの拡大の検討