山下塾第8弾 大災害と危機管理
(大災害から自己と組織を守る!)

山下 輝男

第1回講座 危機管理の概念、防災全般説明項目、大震災等の概要


初めに
 山下塾第8弾では、大災害と危機管理と題して、都内某企業の安全衛生大会に招かれて、当該会社のリーダー的役割の方々に話をした内容を紹介する。
 異常気象による豪雨災害が連続発生し、大規模地震の切迫性が叫ばれ、また大規模倉庫火災も頻発しており、それら大規模災害とそれらに直面して対処すべき人々の危機管理が何かと問われている。

 第1回講座:危機管理の概念、防災について全般、大震災や最近の災害概要
 第2回講座:大規模地震等の切迫性と危機対処活動の概要
 第3回講座:防災の基本、自助と災害時心理特性
 第4回講座:共助及び防災における国民の役割
 第5回講座:河川氾濫対応
 第6回講座:大規模倉庫火災等
 第7回講座:危機管理の原則、危機とリーダー等
 第8回講座:人は何故失敗するのか
 第9回講座:危機管理上の論点、涵養すべきもの


VG1 危機管理の概念
 危機管理の概念は人によって、差異があるようだが、次図のように考えれば良いのだろう。広義には事前対策から復旧・復興までの一連の段階を含んでおり、リスクマネージメントと呼ばれる。狭義には、事前の危険見積・予測段階のみを云う。事態発生後の当面の事態収拾段階をクライシスマネージメント或いはダメージコントロール等と呼ぶことも有る。学術研究書ではないので、実務的には広義に捉えた方が良かろう。





VG2 危機対応の考え方
 危機管理・対応の為には、夫々の組織等に対するあらゆる事態を想定することから始まる。どのようなリスクがどれ位の頻度で起き、それはどれ位の被害・影響を及ぼすものであるのかを考察することが重要だ。それらの事態にどのように対処するべきなのかの緊急対応策・オプションの検討・策定そして決定がなされる。それらのオプションは多数あるかも知れないが、優先度・実行可能度・必要度等を考慮して、所要の具体的対策が採られ、それに応じての所要の訓練が実行される。
 事態が惹起した場合には、先ず何が起きているのか、どういう状況になっているのかの正確かつ迅速な状況把握が必要だ。この状況把握は難しい。リーダーはどのように状況把握を行うか、報告を受け、自らの目で、大局的に全体像を把握しなければ有効な対策はとれない。事態は時々刻々と急激に進展している、その中で、現状を把握し、それの影響度や爾後の予測見積を判断して対応策を決定して、それを自ら実行し、或いは所要の者に命じて実行させて事態の鎮静化、ダメージの最小化を図って、事態を速やかに収拾しなければならない。大変なことだ。





VG3 防災ついて
 危機管理の概念を理解したところで、予期される大規模災害等について簡単に見てみよう。その内容はスライドの通りである。





VG4
 日本は近世以降3つの大規模災害に見舞われ、大震災と呼称される。その大震災を比較するとその特性が大いに異なることに気付く。死亡・行方不明者の内訳にその特性が顕著である。焼死を主とする震災、圧死を主とする震災、そして溺死を主とする震災である。
 大都会における防災を考えると阪神淡路大震災が大いに参考になり、南海トラフ地震等を考えると東日本大震災が参考になろう。また、木造密集地域(木密)地域の場合には関東大震災を参考に考えればよい。
 不思議と大震災の際の政治はどちらかというと不安定だ。政治に徳がなかったから大震災という訳では決してないが、震災対応という観点からは問題を内蔵していると思える。
 大震災時には、軍事組織がその特性を大いに発揮して、救命・救助、生活救援、復旧等に活躍している。自衛隊の重要な役割がここにある。
 また、阪神淡路大震災以降、ボランティアの活動が活発化しているが喜ばしいことである。





VG5 阪神淡路大震災について
 山下塾でも再三採り上げてきたので、詳細は割愛するが、20年余を経た今日でも当時、陸上自衛隊中部方面総監部の防衛部長として、100日間の災害派遣の主務幕僚として行動した日々をありありと思いだす、それほどに鮮烈な体験であった。その体験を小生のHPで紹介しているので、興味と関心のある方はアクセスして頂きたい。
  http://yamashita2.webcrow.jp/hannshin-main.html
 JPSNの山下塾にも関連事項を掲載している。山下塾第一弾から第七弾
  http://www.jpsn.org/lecture/





VG6 実相
 兵庫県南部地震がどういうものであったのか、発災直後の状況をビデオで御確認下さい。(上手く表示作動するかどうか不安ですが…)
https://youtu.be/jX31ed2n3Bk

 当時私は、伊丹市の自衛隊官舎に住んでいたが、強い揺れで飛び起きた。幸いなことに大した被害はなかった。精々飲みかけのウィスキーのボトルが飛び出して割れた位です。
 小生の上司である方面総監の官舎の被害はテレビ台が飛んだり、手水鉢が数メートルも移動し、大事な陶磁器類が粉々になったとのことでした。
 総監は単身赴任で、奥様は伊丹に来られた際には総監の横に寝ておられるようですが、地震が起きて、丁度奥様の顔の付近にテレビが飛んできたとのことでした。





VG7 都市防災上の課題
 我々は、阪神淡路大震災から、都市防災について多大な教訓を学びました。その幾つかを下記のスライドに記述している。阪神淡路大震災以降、防災対策は相当に進展していると云われるが、実態は果たしてどうなのだろう。





VG8 東日本大震災の教訓
 広域で地震による津波災害と原子力災害という複合災害に見舞われた東日本大震災の教訓を防災白書では次のように述べている。
 個々についてはここでは述べないけれども、3項についてのみ特別に述べる。効率性という観点からは、状況が判明し、現地が何をどの程度必要としているかが明らかになってからそれらを支援として実施するという方式・システムだったものが、状況不明下でも必要と判断されるものについては現地の要望を聞くまでもなく、送り出すという方式に変更した。現地の行政能力が必ずしも機能しているとは限らず、時期を待っていてはあたら救える命を失ってしまう可能性があるからである。





VG9 最近の地震対応等について
 最近地震がとみに多いように感じるのは小生のみではあるまい。2016年(平成28)には震度7が連続して起きた熊本地震の記憶が新しい。参考までに本稿執筆時点(H30/7/17)における過去一年間の最大震度5弱以上の地震の回数は9回である。
 6月18日に発生した大阪府北部地震についてみてみたい。不謹慎ではあるが、死者・負傷者及び住宅損壊が意外に少ないと感じた。阪神淡路以降の防災対策が進展している証左だろうか?
 危機管理的に気になったのは、寿永小学校のブロック塀の危険が指摘されていたにも拘らず、素人判断で安全と判断して何等の処置を施さなかったと云うことだ。不作為の罪・責任と云うべきだろう。





 次回の第2回講座では、大規模地震等の切迫性特に首都直下地震における応急対策活動を概観して防災を人任せにして良いのかどうかを考えてみたい。乞うご期待。