第二話 政府声明に見る大東亜戦争の戦争目的

山下 輝男


 1941(S16)年12月8日、米英による我が帝国への横暴を排除し、自存自衛を確保するため、開戦の已むなきに至った経緯を述べ、出征兵士の激励と銃後の守りを固めること訓示した開戦の詔勅が発せられた。
 この詔勅には、東南アジアに何故進出するのかは明示されていない。日本の開戦意図はこの詔勅に示された自存自衛のみであって、欧米諸国による植民地支配からアジア諸国を開放するとの大義名分は後付けだ、単なる結果論であり、美辞麗句に過ぎないとの批判も絶えない。
 然し、その当日の午後零時過ぎに発せられた「帝国政府声明」には大東亜戦争の目的が明示されている。同声明文は、開戦の詔勅(天皇陛下のお言葉)を受けての、政府声明という体裁をとっている。
 関連部分は、「而して、今次帝国が南方諸地域に対し、新たに行動を起こすのやむを得ざるに至る。何等その住民に対し敵意を有するものにあらず、只米英の暴政を排除して東亜を明朗本然の姿に復し、相携へて共栄の楽を分たんと祈念するに外ならず、帝国は之等住民が、我が真意を諒解し、帝国と共に、東亜の新天地に新たなる発足を期すべきを信じて疑わざるものなり。
 今や皇国の隆替、東亜の興廃は此の一挙に懸かれり。全国民は今次征戦の淵源と使命とに深く思を致し、苟も驕ることなく、又怠る事なく、克く竭し、克く耐へ、以て我等祖先の遺風を顕彰し、難儀に逢ふや必ず国家興隆の基を啓きし我等祖先の赫々たる史積を仰ぎ、雄渾深遠なる皇謨の翼賛に萬遺憾なきを誓ひ、進んで征戦の目的を完遂し、以て聖慮を永遠に安んじ奉らむことを期せざるべからず。」と述べ、締めくくっている。
 このように、帝国政府声明の中では、明確に、自存自衛との目的の他に「アジア解放」であることを述べている。曰く、「東南アジアを白人によって植民地化される前の、明白なる本来あるべき姿へ戻し、共に協力して繁栄することを願う」と高らかに謳っている。
 同日夜には首相がラジオ放送を通じて全国民に対して開戦目的はアジアの解放と自存自衛の確保であると宣言した。
 声明文は、昭和16(1946)年12月8日の夕刊各紙に全文が掲載された。原文は、国立公文書館アジア歴史資料センターにデジタル資料として公開されている。




 戦争目的が、東南アジアの植民地解放であったとすれば、結果的に戦争目的を達したのは日本であり、戦勝国ではないかとも云えるが、残念ながら、第一の主目的たる自存自衛を全う出来ず、占領されたことを思うと敗けたと言わざるを得ないのだろう。
 今迄、本帝国政府声明が話題にならなかったのが不思議でもあり残念でもある。


(第二話 了)