第十八話 マッカラムメモは何を語るのか

山下 輝男


 1994(H6)年に機密解除された米国公文書の中に「マッカラムメモ」なるものがある。
(1995年1月24日発見)米国海軍諜報部極東課長のマッカラム少佐が、直属上司の海軍情報部長(アンダーソン大佐)に宛てた(1940年10月7日付)もので、「太平洋における情勢予測と米国のとるべき行動」とのタイトルである。
 発見者のスティネットによれば、メモの送付先はルーズベルト大統領が信頼していた
2名(アンダーソン海軍大佐とノック海軍大佐)に送付されたという。ノック大佐は明確に「貴官の行動方針に同意する。」と裏書きして、アンダーソン大佐に回覧したという。

 当メモにおいて、少佐は、欧州戦線及びアジア地区の情勢を分析し、その結果に基づ き、米国が採るべき対日行動の指針として、次の 8 段階(1から8)を提言している。

1 英国と、太平洋における英国基地、とりわけシンガポールの使用について協議せよ。
2 オランダと、蘭領インドの基地施設使用、物資獲得について協議せよ。
3 蒋介石の支那政府にすべての可能な支援を与えよ。
4 ひとつの長距離重艦隊を東洋、フィリピン、或いはシンガポールへ派遣せよ。
5 2つの潜水艦隊を東洋へ派遣せよ。
6 主力艦隊を太平洋ハワイ諸島に維持せよ。
7 オランダに、日本の不当な経済要求、とりわけ原油要求には拒否するよう主張すべし。
8 米国は英国との連携のもと、対日貿易を完全にやめる。
これらの手段により、日本を明白な戦争行為へ導くことが出来れば、それが重大であればあるほどよい。


 メモランダム作成時期は、日独伊三国同盟の締結(1940(S15)年9月27日)時期に当たり、日米の武力衝突も不可避とも思われ、少佐は、「戦争は不可避であり、国民世論の喚起のため、日本に先に仕掛けさせる。」と覚書に明記しているという。

 欧州戦線の悪化拡大の為に日本と独・伊の連携を阻止することが出来、日本海軍が弱点を呈している時の攻撃が効果的であり、且つ経済封鎖により早急に国家崩壊を強いる ことが出来るとの狙いである。
 今日、歴史を知る者から見れば、結果論ではあるが、ルーズベルト大統領は、このメモに記載されたプランを全て実行している。空恐ろしい。
 然し、少佐のメモが米国の国家戦略に直結したのかどうかについては不明である。


参考までに:
マッカラム少佐は、明治21年長崎に生まれた。18歳の時に米国海軍兵学校に入学し、卒業後、駐日米国大使館付海軍武官を命ぜられ来日した。関東大震災時に米海軍からの救援活動の調整を行ったという。

(第十八話 了)