第二十三話 原爆投下正当論は今なお根強い!

山下 輝男


 オバマ大統領が、2016(H28)年、伊勢志摩サミットに引き続く5月27日午後安倍首相と同行し、広島の平和祈念公園を訪れた。一部には米大統領として謝罪をするのではとの期待もあったが、そう意味においては失望を禁じ得ない。米国には今なお根強い原爆投下正当論があり、彼もこれを逸脱する訳にはいかなかったのだろう。
 日本には、米国に対して謝罪や賠償を求めようとの動きは殆どない。一方、米国は謝罪を求められるのではないかとの強い懸念を持っている。

 米国が、敗北が決定的な日本に対して、何故、広島に引き続き長崎にと2発も原爆を投下したのかについて、色々な論がある。米国の原爆投下の理由については、次の代表的な論がある。

①「日本を早期に降伏させ、早く戦争を終わらせ人命を救うためだった。」とする原爆正当化論
②「ソ連に対する警告だった。」とする論
③新兵器の人種的偏見に因る人体実験説
④真珠湾攻撃に対する報復であったとする説
⑤開発に要した巨額の経費を正当化するためにも投下が必要であった等の説がある。



 原爆正当化論は、米国世論の主流であり、米軍の日本本土上陸作戦による100万人もの米兵の命を救うためであったとして原爆投下を正当化するものである。
 原爆投下に対する米国の世論の投下直後の支持率は85%であり、正当化論の神話が引き継がれ、今なお高い支持を得ている。勿論、最近では、次第に正当化に関する支持は低下し、時間の経過とともに原爆投下に否定的な見方をするアメリカ人が増えてきているのは確かである。が、「原爆を使用しなければ、より多くのアメリカ人が戦地で命を落としていた」という考えはアメリカ社会に根強く残っている。
 日本は、本土決戦である「決号作戦」を計画しており、斯様な戦争継続意思を持つ日本に祖国の防衛が絶望的であることをはっきり認識させるためには原爆投下が必要でありそれ以外の方法がなかった。原爆投下が無ければ日本人の犠牲者ももっと大きかっただろう。
 トルーマン大統領も原爆投下の正当性を言明しており、米高校の教科書にも明記されている。最近でも、原爆記念切手の発行が計画され(最も後に図柄が変更された由)、また米上院でもその正当性を議決している等、正当化論には根強いものがある。
「エノラ・ゲイ」(機長の母親の名前)が展示されているワシントンのスミソニアン航空博物館は、原爆投下50周年にあわせて特別展の開催を計画したが、退役軍人等の猛烈な反対等で頓挫した。歴史の審判は明白だ。原爆が戦争を短縮した。原爆が連合国の日本侵攻の必要性を無くした。原爆が起こり得た日本本土での血にまみれた紛争から両国の無数の命を救い、原爆が日本によって征服されたアジアの国々で日本が行った残虐行為を終わらせたのだ。 等々
 米国が自己正当化したいのは解るが、如何に弁明しようとも戦時国際法違反は明白であり、それは認めるべきだろう。

(第二十三話 了)