第三十五話 誇大宣伝か?人体実験(第七三一部隊)

山下 輝男


 2017(H29)年8月報道されたNHK特集「731部隊の真実~エリート医学者と人体実験~」は、旧ソ連で1949年12月に行われた「ハバロフスク裁判」の音声記録を発掘したとして報道したものである。

1 ハバロフスク裁判について
 ハバロフスクは、数ある日本軍捕虜収容所の一つであり、ソ連共産党政治局員らによる徹底的な洗脳教育が行われていた可能性が高く、本ハバロフスク裁判の信憑性には多大なる疑問があると云わねばなるまい。本裁判は、純然たるソ連の国内裁判だった。また、ソ連のマスコミとソ連市民にのみ公開された。ハバロフスク裁判はわずか6日間で審理らしい審理のない裁判だった。ソ連の弁護人がついたものの被告の弁護はしなかった。裁判の名に値しない宣伝(プロパガンダ)であり、政治ショーだったと云える。



2 731部隊(関東軍防疫給水部)は、著名な小説家である森村誠一が、1981(昭和56)年日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」日刊紙版等に掲載されたノンフィクション作品「悪魔の飽食」で一躍世に知られた。尚、悪魔の飽食の第二部は、翌年赤旗日曜版に掲載された。森村氏は、その著作“悪魔の飽食”で、関東軍731部隊が行った人体実験の実態を詳しく描写したとされる。



 森村誠一氏の「悪魔の飽食」における人体実験に対しては、小説とノンフィクションが、ごちゃ混ぜになった作品とも評され、関係者はすべて匿名であり、その証言の裏付けがとれないばかりか、二転三転する証言により、証言者の信頼性に疑問符が付くとされる。防疫給水部は、兵士の感染症予防や衛生的給水体制研究を主任務とすると共に科学動員の一環としての、細菌戦に使用する生物兵器の研究・開発機関であったとされる。その目的達成のため、人体実験や生物兵器の実戦的使用を行ったとされる。常石敬一氏の著「消えた細菌戦部隊」によれば、1940年から1945年までの5年間で、人体実験が行われ犠牲になった者は3000人であったとしている。

(1)生物兵器の実戦的使用
 常石敬一氏、青木富貴子氏、秦郁彦氏等は、単に生物兵器の研究を行っていただけではなく、これを実戦で使用していたと主張している。また、同部隊所属であった金子元軍医の論文においても、日本軍が実使用したとされている。金子順一元軍医の論文について、社民党の服部氏から問われた当時の玄葉光一郎外務大臣は、「事実関係が断定できるか難しく、今後の研究に俟ちたい。」旨述べた。(H24/6/5)
 寧波、満州新京、常徳等ではペスト攻撃が行われたとされるが、自然発生とされるものもあるとされ、今後の研究が待たれる。


(2)人体実験について
 細菌戦研究や人体実験そのものを否定しようとする歴史学者は存在しないものの、人体実験の信憑性に対しては疑義が呈されている。
 ・731部隊に関する資料をアメリカが回収し、米国立公文書館が日本の戦争犯罪に関する米情報機関の機密文書10万ページ分を公開したが、この資料からは731部隊の人体実験に関する記述がまだ見つかっていない。
 尚、1989年陸軍軍医学校跡地で発見された人骨については未確定だ。
 真実の解明は今後の研究に俟たねばならないが、一事をもって万事と断じ、李白の詩にある白髪三千丈ばりの為にする議論としか思えない。勿論、一件でも非人道的行為であり断じて許されることではないのは当然だが・・

(第三十五話 了)