第四十三話 情報戦で負けた日本!

山下 輝男


 日本敗戦の原因を何に求めるか、各論あるが、情報に負けたとも云われる。
 本話では、情報についてみてみたい。敵に係る情報の収集・分析・使用と防諜という観点から大東亜戦争はどうだったのか?

① 諸資料等を総合すれば、中国及びソ連の情報は比較的得ていたと思われる。
② 帝国海軍は、1929年には暗号解読に任ずる組織を立ち上げ、米海軍の換字暗号を解読できるまでになった。外交電報も遜色なく解読できた。
③ 日本の官庁の対外通信には、海軍の暗号書を使用していた。対米戦に備えて海軍が作成した最高度の暗号は、「D暗号」と呼ばれ、当時としては画期的なものだった。使用開始は、1939(S14)年6月からだった。米英は、日本海軍のD暗号解読に執念を燃やし、それがやがて結実し、日本に痛打を与えた。米国は、日本の外交電報をはじめ、殆どの暗号解読に成功した。一方、日本は、機密度の高い重要暗号を破るに至らなかった。投入した資源の差もあり、情報に対する感覚的な日米の差があるとの指摘もある。解読された暗号文書は、日本のものは、「マジック」とのコードネームで呼ばれた。
④ 帝国海軍も遅ればせながら、有能な大卒、専門学校卒業生を選抜採用育成したが、時既に遅しの感があったようだ。
⑤ 暗号解読には、相手国文化の理解を含む語学力が肝要であるが、此処でも日米には大きな差異がある。
⑥ 陸軍の暗号は安泰だったとの通説があるが、それも解読されていたと最近指摘されている。陸軍は無限乱数と言葉を数字に置換し且つ乱数化する特別計算表により強度 を上げていたといわれる。無限乱数が奏功したとされる。陸軍は中国軍の暗号を完全に解読し続けており、それが支那派遣軍百戦百勝の秘密で、一個大隊で一個師に対抗し得るとの自信の源泉であったとの指摘もある。参謀本部の暗号班には有能な者が集められた。


 具体例
① 対米最後通告文が、米側に解読されていた:第三十八話に記した通りである。
② ミッドウェー海戦では、米軍は、軍事電報の暗号解読に成功していたが、攻撃予定地点が不明だった。それも米側の機知により解明され、このことが、連合艦隊の惨敗に繋がった。(第三十二話参照)
③ 海軍甲事件  1943(S18)年4月18日、連合艦隊司令長官山本大将の搭乗機が、米軍機に撃墜され、大将が戦死した事件を海軍甲事件と云う。
大将が将兵の労をねぎらう為、ラバウルからブイン基地経由ラバレル島基地に至る経路及び予定時刻等を、米軍は既に暗号解読により承知しており、待ち伏せ攻撃にあった。日本の制空権下にも関わらずの奇禍である。米側は報復攻撃であったようだ。
心憎いことに、米側は山本大将機を撃墜したことを報じず、米が暗号を解読しているとの事実を伏せることに腐心した。                   
④ ゾルゲ事件(尾崎とゾルゲの逮捕:1941/10/15)は、日本の防諜体制の不備を示している。協力者は誰か?




 日本の情報感覚の鈍さを感じるし、また陸海軍の情報センスの差も気になるところだ。唯、最近陸自に情報職種が創設されたことは喜ばしい限りであり、人事面での処遇をも考慮すべきだろう。

(第四十三話 了)