第四十四話 銀輪部隊と言えば、微笑ましいのだが・・

山下 輝男


 若い頃、銀輪部隊と呼ばれた帝国陸軍部隊が、颯爽とマレー半島を南下する話を聞き、その姿を想像して、微笑ましく感じたものであるが、反面、国力を思い、何となく寂しくも感じたものだ。硬く、重苦しい話が続いたので、やや軽い話として、その自転車部隊についてみてみよう。

1 「銀輪部隊」とは
 シンガポール攻略を目標としたマレー作戦では、進攻速度が重視されたが、上陸部隊は十分な自動車は有しておらず、為に、歩兵部隊を如何に迅速に移動させるかが課題であった。
 この対応策として、陸軍は現地の自転車を徴発し、急造の自転車部隊を編成した。
 この自転車部隊は、国内新聞等で「銀輪部隊」との愛称で呼ばれた。
 当時、品質の良い日本の自転車が東南アジア各地に輸出されており、数の調達も、部品の調達も容易であったのである。
 銀輪部隊は、マレー半島やフィリピンのジャングルやゴム林・椰子林などの道を進み、自動車や戦車が通れない狭い道でも通れ、川があれば担いで渡れた。銀輪部隊は、破壊された橋梁の修復をして輸送隊の自動車通行を容易にする等、緒戦の南方攻略に大いに寄与した。尚、南部仏印進駐にも銀輪部隊が活用された。


2 自転車部隊の利点・欠点
 自転車は19C後期に出現以来、簡易且つ比較的高速な移動手段として竜騎兵(乗馬歩兵)の代用、伝令など世界中で使用された。
 その利点は、平地での移動速度が比較的早い、調達コストが安い、飼料・水・燃料を必要とせず維持・運用コストが安い、調教も不要、山岳地帯など複雑な地形での機動性も高い、静粛性が抜群で隠密性に優れる。但し、重装備の歩兵の移動では堅牢性が問題、防護性なく脆弱等の弱点があると云われる。



3 歴史管見
① 普仏戦では伝令用として実践使用
② 19世紀末頃 米陸軍はじめ欧州各国は制式兵器として採用・・実用性は不十分
③ 安全型の自転車開発後
 仏:実験部隊、英:義勇軍に編成 米:大規模な導入には至らず
④ ボーア戦争(1899~1902)で実戦使用例
⑤ WWⅠ 多様な自転車部隊が各国で使用 但し非戦闘用使用が主
⑥ WW2 主に枢軸国陣営で使用
 伊:快速師団
 独:伝令用として歩兵部隊、歩兵師団の偵察部隊、自動車化は進展するも燃料不足で自転車部隊が使用されることも。
 連合国:特殊用途など限定使用、空挺部隊用の折り畳み自転車

⑦ 戦後 流石に先進国では見られず、途上国や民兵組織で重宝されることも。
 ある情報では、北朝鮮には特殊部隊としての自転車部隊(カルメギ号)が存在するという。
 余談だが、阪神淡路大震災時に被災地内の偵察に自転車を活用した例を思い出す。 

(第四十四話 了)