第四十六話 訣別電報等に見る将兵の想い(1)

山下 輝男


 訣別電報には、戦没将兵の色々な想いが込められている。大東亜戦争間に発せられた訣別電報に接する時、血涙溢れ、将兵の無念さに思い至り、将士の熱き殉国精神に胸が突かれるのは小生のみではあるまい。日本人ならば、誰しもが感、胸に迫るものがあるものと確信する。「乾坤弔吾魂」合掌
 訣別電報の幾つかを紹介したい。紙幅の関係でその要点のみとすることを諒として頂きたい。


1 沖縄根拠地隊司令官 太田実海軍少将     1945(S20)年6月6日

 『・・本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ザレドモ現状ヲ看過スル
 ニ忍ビズ之ニ代ツテ緊急御通知申上グ・・・・只々日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ□□□□与ヘ□コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形□一木一草焦土ト化セン
 糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ
 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ』


2 硫黄島 小笠原兵団長  栗林忠道中将  1945(S20)3月16日

 『戦局最後ノ関頭ニ直面セリ 敵来攻以来 麾下将兵ノ敢闘ハ真ニ鬼神ヲ哭シムルモノアリ 特ニ想像ヲ越エタル量的優勢ヲ以テスル陸海空ヨリノ攻撃ニ対シ 宛然徒手空拳ヲ以テ 克ク健闘ヲ続ケタルハ 小職自ラ聊カ悦ビトスル所ナリ
 然レドモ 飽クナキ敵ノ猛攻ニ相次デ斃レ 為ニ御期待ニ反シ 此ノ要地ヲ敵手ニ委ヌル外ナキニ至リシハ 小職ノ誠ニ恐懼ニ堪ヘザル所ニシテ幾重ニモ御詫申上グ 今ヤ弾丸尽キ水涸レ 全員反撃シ 最後ノ敢闘ヲ行ハントスルニ方(あた)リ 熟々(つらつら)皇恩ヲ思ヒ 粉骨砕身モ亦悔イズ 特ニ本島ヲ奪還セザル限リ 皇土永遠ニ安カラザルニ思ヒ至リ 縦ヒ魂魄トナルモ 誓ツテ皇軍ノ捲土重来ノ魁タランコトヲ期ス 茲ニ最後ノ関頭ニ立チ 重ネテ衷情ヲ披瀝スルト共ニ 只管皇国ノ必勝ト安泰トヲ祈念シツツ 永ヘニ御別レ申シ上グ
 尚父島母島等ニ就テハ 同地麾下将兵 如何ナル敵ノ攻撃ヲモ 断固破摧シ得ルヲ確信スルモ 何卒宜シク申上グ
 終リニ左記 駄作御笑覧ニ供ス 何卒玉斧ヲ乞フ
 ・国の為 重き努を 果し得で 矢弾尽き果て 散るぞ悲しき
 ・仇討たで 野辺には朽ちじ 吾は又 七度生れて 矛を執らむぞ
 ・醜草(しこぐさ)の 島に蔓る 其の時の 皇国の行手 一途に思う


3 ペリリュー島 中川州男大佐              1944(S19)11月24日
 軍旗を奉焼し訣別電報「サクラ、サクラ」を打電して自決、残る将兵は遊激戦に転じ悉く悠久の大義に殉じた。


4 サイパン島南雲忠一中将(陸海空合同司令部から井桁参謀長発電)1949(S19)7月7日
 『臣等微力にして・・陛下の股肱は善戦各々死所を得たるを欣び、非戦闘員は支庁長をして、サイパン島北部に退避せしめ、最後の一兵まで陣地を死守玉砕せんとす。・・将来の作戦に、制空権なきところ勝利なし。・・軍の精否は 一に指導官の如何による』
 同日の訓示
 『・・今や止まるも死、進むも死、生死須らくその時を得て、帝国男子の真骨頂あり。今米軍に一撃を加え、太平洋の防波堤として、サイパン島に骨を埋めんとす』

(第四十六話 了)