第四十九話 嗚呼、玉砕!為す術なきぞ悲しき!されど、熱烈たる殉国の魂

山下 輝男


 大東亜戦争を端的に象徴する語彙の一つは間違いなく「玉砕」である。玉砕は、「玉のように美しく砕け散ること、大義、名誉などに殉じて死ぬこと」とされ、その対義語は、瓦全(がぜん)、甎全(せんぜん)である。出典は、唐代に編纂された「北斉書」の列伝三十三(元景安)であるとされる。一方、西郷隆盛の七言絶句「偶成」だとする説もある。その西郷の詩は次の如し

・幾暦辛酸志始堅 ・丈夫玉砕恥甎全  ・我家遺法人知否 ・不為児孫買美田
 大東亜戦争間の玉砕は、1944(S19)年9月の拉孟・騰越守備隊の玉砕を除けば、中部太平洋の島嶼におけるものである。上級司令部としても絶海の孤島で孤軍奮闘する我が部隊を救援・救出すべくあらゆる選択肢を検討するも、如何せん圧倒的な制空・海権下においては為す術なかったのが実情であり、初めから玉砕を命じ捨て石にした訳ではない。佐藤和正著「玉砕の島」(光文社NF文庫)には、11の玉砕が記述してある。


 兵員数は日本軍守備隊兵力(概数)
① タナンボゴ島 (ガダルカナル島沖)  昭和17年8月7日  約600名
 南の孤島に散った横浜航空隊
② アッツ島  (アリューシャン列島) 昭和18年5月12日  約2600名
 嵐と霧と雪の中の死闘  注:「玉砕」と大本営が初めて発表
③ マキン島   (ギルバート諸島) 昭和18年11月21日  約690名
 死してなお勝利を収めた
④ タラワ島   (ギルバート諸島) 昭和18年11月21日 約4600名
 米軍が味わった珊瑚礁の恐怖
⑤ クエゼリン島  (マーシャル諸島) 昭和19年1月30日 約8100名
 ロケット弾に野望砕かる!
⑥ エンチャビ島  (ブラウン環礁) 昭和19年2月19日 約1300名
 ブラウン環礁に死の空爆
⑦ ロスネグロス島 (アドミラルティ諸島)  昭和19年2月29日 約3800名
 アドミラルティに迎え撃つ精強部隊
⑧ サイパン島  (マリアナ諸島)昭和19年6月15日 約44000)(第四十六話関連)
 戦車第九連隊、海を渡る
⑨ テニアン島 (マリアナ諸島)  昭和19年7月24日 約8100名
 真夜中の逆襲部隊
⑩ ペリリュー島 (パラオ諸島)  昭和19年9月15日 約10500名 (第三十七話関連)
 海中伝令、死の海六十キロを渡る
⑪ 硫黄島(小笠原諸島)   昭和20年2月19日 約20900名 (第四十六話関連)
 黒砂に刻まれた戦士たちの命
○ 同書によれば他に、「ブーゲンビル島でのタロキナの玉砕」「ソロモンのバングヌ島」「マリアナのグアム島」「パラオのアンガウル島」「東部ニューギニアの玉砕」等がある由。
○ 拉孟・騰越守備隊の玉砕   中国雲南省とビルマ国境  (第四十七話関連)
  拉孟守備隊 昭和19年9月5日  約1300名
  騰越守備隊 昭和19年9月12日  約2800名


 進軍限界を超えて絶海の孤島まで進出せねばならなかったのか?広範囲の分散配置の弊?救出の困難性は把握していた?玉砕した英霊は何を我等に語り掛けるのか?未だ帰還できぬ御柱を如何する? 

(第四十九話 了)