第八十一話 残留日本兵の苦闘と貢献

山下 輝男


 大東亜戦争の終戦後もアジアや太平洋の各地に残留した日本兵が一万人も居るという。殆どの日本兵は現地武装解除、除隊処分とされて、日本政府が準備した引き揚げ船などで帰国・復員した。  本話では、現地に残留した日本兵の話題を取り上げる。


1 現地残留の理由・動機等
 次のように区分されると云う。
(1)終戦を知らされず、あるいは信じず、現地で潜伏し作戦行動を継続した者。
(2)第二次世界大戦後、欧米諸国の植民地に戻ったアジアの各地で勃興した独立運動に身を投じた者。
(3)市街地への空襲や原子爆弾による日本本土の惨状を伝え聞き、家族の生存や帰国後の生活を絶望視したり、復員船は撃沈されるというデマを信じた者。
(4)現地人と婚姻関係を持った者。
(5)日本で戦犯として裁かれることを恐れた者。
(6)捕虜収容所からの脱走、或いは終戦後の部隊内でのトラブルから復員前に逃亡し、そのまま現地に定住した者。
(7)現地語の話者である、あるいは土地勘や地縁があり、復員するよりも現地社会で生きていくことを望み、残留した者。
(8)技師やビジネスマンとしての才覚を買われ、現地政府の招聘を受ける、或いは半強制的に現地に留め置かれる形で残留した者。(第七十四話関連)
(9)その他、多くの理由により日本本土への帰国を断念し、現地にて生活基盤を築くことになった者。


2 中国:残留日本軍が非軍人の在留日本人と共に多数が国民党軍や共産党軍に参加し約5600人が国共内戦を戦った。


3 蘭印(インドネシア):旧日本軍将兵が独立軍の将兵の教育、作戦指導、戦闘参加総勢900名、互助組織「福祉友の会」日蘭友好に積極的活動


4 仏印(ベトナム):幾つかの軍事学校で日本軍将校・下士官による教育、ベトナム独立戦争に戦闘参加、総勢700~900名、勲章授与、両国友好努力


5 マラヤ(マレーシア・シンガポール):マラヤ共産党やマラヤ民族解放軍に参加総勢約200-400名、実態不詳


6 タイ・ビルマ:泰緬国境地帯には、残留日本兵が約1000名発生した。「ビルマの竪琴」(水島一等兵)、ドキュメンタリ映画「花と兵隊」


7 マリアナ諸島:サイパン島北方のアナタハン島に駐在していた軍人や民間人数十人が、終戦後も残留して自給自足生活、1950年6月と1951年6月に米軍により救出


8 ソ連・モンゴル:ノモンハン事件の捕虜となった者が、共産主義に転向して残留決心、現地人女性との婚姻により、共産圏の民として生きる決心。シベリア抑留日本兵の中から共産主義転向残留決心、最終的に約800名が残留日本兵となった。


9 潜伏残留日本兵(横井庄一軍曹、小野田寛郎陸軍少尉等)

 厚生労働省の推定残留日本兵数:2005年4月時点で21人(中国16人、旧ソ連2人、樺太・ビルマ・ベトナムが各1人)としていた。
* 彼等は現地に融けこみ、自らの信念に従い独立支援のために戦い、或いは新たな人生を展開し、それらを通じ、日本と該国との友好親善に大いに寄与して来た。感謝である。日本の敗戦を信じず戦闘を継続したその精神力には感嘆するほかない。

(第八十一話 了)